ピザ与えたせいでクマが駆除?森の中で動画撮影の人気YouTuberに批判続出…札幌市が語った「真相」

(YouTuber 葉田ルコの動画より)

7月8日、北海道札幌市南区北ノ沢地区で5月上旬から出没していたとみられる4頭のクマのうち1頭が駆除された。「北海道ニュースUHB」によれば同日午前、箱わなに捕獲されたクマを市職員が確認し、その後クマは駆除されたという。駆除されたクマは母グマの可能性が高いとされており、残りの子グマ3頭の行方はわかっていないと報じられた。

そんななか、北海道を拠点とするYouTuber・葉田ルコが5月上旬に投稿したYouTube動画が“危険行為”だとして物議を醸している。

問題視されているのは、5月6日に投稿された「【絶体絶命】森の中でウーバー食べてたらまさかの緊急事態発生…」と題する動画と、翌7日に投稿された「【衝撃映像】撮影中にヒグマの親子が乱入し暴れていった一部始終をお見せします」と題する動画だ。

「森の中でピザやポテトを食べている動画の撮影中に、親子と見られるヒグマが出没したのです。大人のクマが前足を使ってテーブルを揺らし、落ちたピザを食べる様子が収められていました。葉田ルコさんともう1人の男性は車の中に逃げたので、怪我などはなく無事だったようです。撮影場所はヒグマの出没が相次いでいた札幌市南区中ノ沢地区の山中で、近くには住宅もある場所でした」(全国紙記者)

動画の内容から8日に駆除されたクマと、葉田ルコが遭遇したクマの出没場所が同じだったため、ネット上で注目を集める事態に。「同一の個体ではないか」「YouTuberのせいで駆除された」といった声が相次いでいるのだ。

《なんで本来なら処分されずに自然界で生きるはずだった熊を処分せざるを得ない事態にさせたんだよ》
《母グマが殺されてしまったのか…再生数稼ぎ(金稼ぎ)の為、熊家族を滅茶苦茶にしたんだ…》
《こいつらのせいでしななくていい熊がしんだってことでしょ しかも近くで暮らす人の安全も現在進行形で脅かしてる》

■「YouTuberがピザを食べたという理由だけでクマを駆除したわけではない」

そこで本誌は24日、札幌市環境局に駆除されたクマとYouTuberが遭遇した関連性について担当者に話を聞いた(以下、カッコ内は担当者)。

――7月8日に駆除したクマは、YouTuberの動画でピザを食べていたクマと同一の個体ですか?

「確実に同一だと言い切ることはできませんが、5月上旬からその地区で目撃されていたのがその親子だったので、同じ個体だと考えるのが一般的だと考えます」

――山の中でピザを食す行為はルール、マナーとして適切だと考えますか? YouTuberの行為について、ご見解を教えてください。

「本人たちからはクマに餌付けをしようと思って動画撮影をしたわけではないと聞いております。最近は1人キャンプなどが流行っていることもあるので、YouTuberの行為を咎めるつもりはありません。ただ、もし、その場所にクマが出没していることを知った上で、その場所を狙って動画撮影したというのであれば、許されるべき行為ではないでしょう」

――駆除されたクマが箱わなにかかったことと、YouTuberの行為との関連性についてどうのように考えていますか?

「そもそもYouTuberがピザを食べたという理由だけで、クマを駆除したわけではありません。このクマは市街地に出てきていたクマなんですね。札幌市では『さっぽろヒグマ基本計画』に基づいて、クマは山の中で暮らし、人間とすみ分けをしていくという考えです。そのため、なるべくクマが市街地に出てこないような『ゾーニング』という方策を取っています。

ですが、どうしても市街地に出てきて市民に危険が及ぶような場合は、捕獲を基本とした対応を取る状況になっています。今回の場合は、住宅の庭に出没し、人間と目があっても逃げていかなかったり、果樹などの農作物に被害を及ぼしたり、小学校の真横に出没したりといったことを繰り返していたのです。

市としても草刈りなどでクマが出没しづらい状況を作ったり、離農された果樹園の木を土地の所有者の許可を得て伐採したり、様々な対策を講じてきました。このクマは人間側に寄ってくるような問題行動を起こしていたので、箱わなを仕掛けて捕獲した次第です」

――YouTuberにはどのように指導しましたか?

「クマが出るような場所での動画撮影の行為は危険だ、というお話をさせていただきました。YouTuberの方も今回の行為は反省されていました。また、北海道では条例で餌付け行為を禁止していますが、札幌市にはそういった条例はありません。北海道の条例に当てはまるようであれば何らかの処分は考えられますが、おそらく注意程度にとどまり、罰金を払うといったことはないかと思われます」

■担当者が指摘するネット上の“もう1つの誤解”

ネット上では「YouTuberが餌付けした」「YouTuberのせいでクマが駆除された」といった非難の声が上がっているが、それは違っていたようだ。札幌市の担当者によれば、「ネット上ではもう1つ誤解がある」という。母グマが駆除されたことで、“残された子グマが可哀想”という意見に対するものだ。

「ネット上では、『この春に初めて穴から出てきた子グマが、お母さんを殺されて路頭に迷っている』と思われている方が多数いらっしゃるようです。しかし、子供のクマたちは生まれて一冬は経っているので、かなり大きなしっかりとした若グマなんです。

映像で見ると母グマより小さく見えますが、近くで見るとツキノワグマより大きくて怖いと思います。決して小さな可愛らしい子グマではなく、一般的にはこの秋には親別れしてもおかしくありません。私たちとしましても、この3頭が人間の住む場所に出てこないで暮らしていってくれるのであれば、それでいいと考えています。山にまで追いかけていって駆除しようということは考えておりません」

YouTuberの行為は反省すべきだが、誤った情報を鵜呑みにしないように心がけよう。

© 株式会社光文社