【今週のサンモニ】CO2排出に貢献するサンモニ|藤原かずえ 『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。今週のテーマは「気候変動」。

番組の風物詩「気候変動」

今週の『サンデーモーニング』は、番組の風物詩とも言える気候変動の話題からスタートです。

関口宏氏:この番組では時々やりますけど、本当にそれ(気候変動)に取り組む姿勢はまだ見えてないよね。

松原耕二氏:目の前のことを守るためにどうしても後回しにしてしまっているのが現状だ。

気候変動は人間を含めた地球のシステムに発生する物理的な現象です。この気候変動に取り組むことは、いくつかの変動シナリオのうち、世界の人々にとって最も幸福が得られる持続可能なシナリオを賢く選択して対策を実行することであり、ひたすら過激な気候変動対策を人々に課すことではありません。

国民に負担を強いる再生可能エネルギー

過激な気候変動対策は貧困を生む可能性があり、人々の生命にも脅威を与えかねません。

例えば、『サンデーモーニング』が思考停止に導入を求めてきた太陽光発電や風力発電などの変動性再生可能エネルギーは、FIT制度を通して多くの国民に多大な経済的負担を強いています。

さらに、再エネは、天候急変時の再エネのバックアップ電源となる石油火力発電を電力自由化の経済原理によって次々と廃止に追い込みました。このことにより電力供給が恒常的に逼迫するようになり、電気料金は暴騰しています。

このとき、原子力発電が正常に稼働していれば、電力逼迫を回避できますが、『サンデーモーニング』をはじめとするメディアによって悪魔化されてしまった多くの原発はゼロリスクを求める不合理な規制によっていまだに停止させられています。

そもそも現在の日本が化石燃料による発電に頼らざるを得ないのはクリーンエネルギーである原発を稼働できていないためです。

その意味で『サンデーモーニング』は日本の温室効果ガス排出に大きく貢献しているのです。

「化石賞」は認知操作の道具

みたらし加奈氏:2007年頃から気候変動がメンタルヘルスに影響があるという研究がなされている。化石賞を取るくらいなので日本ではそういった研究が進んでいない。

『サンデーモーニング』はまた「化石賞」で日本を貶めています。

「化石賞」とは、COP開催期間中に環境NGOが気候変動対策に消極的な国々を毎日恣意的に選定して叱るというパフォーマンスを見せる”fossil of the day 本日の化石”という名のオチャラケなイヴェントに過ぎません。

そこには厳密な選定基準もなく、それが証拠に、G7をはじめとする多くの国々が何度も何度も化石賞に選定されている中、世界最大の圧倒的な二酸化炭素排出国である中国は、2011年と2012年にそれぞれ1度しか選定されていません。

こんなどうでもいい賞を、『サンデーモーニング』をはじめとする日本のマスメディアは、あたかも権威ある専門家が厳密に選定した賞であるかのような認知操作を行って報じているのです。

[過去の化石賞受賞国]

「化石賞」を受け取る環境団体メンバー(左)

みたらし氏が無知であるゆえに言っているのか、日本を貶める大衆操作のために言っているのかは不明ですが、「化石賞を取るくらいの国は、気候変動がメンタルヘルスに影響があるという研究が進んでいない」とする言説はあまりにも乱暴であると言えます。

無理やり日本をバッシング

インパクトファクターが最も高い医学雑誌の”THE LANCET”のレヴュー論文[Climate-sensitive health counselling: a scoping review and conceptual framework]に紹介されている研究論文のうち、Scopusのインパクトファクターが高い論文は、米国・英国・オーストラリアといった日本を遥かに凌駕する化石賞の常連国の著者によって書かれています。
https://www.thelancet.com/journals/lanplh/article/PIIS2542-5196(23)00107-9/fulltext00107-9/fulltext)

つまり、みたらし氏の「日本は化石賞を取るくらいなので」という言葉は、実態を反映することなしに無理やり日本を見下したバッシングであると言えます。

そして、このような特定の方向に偏った発言をするコメンテーターばかりが恣意的に選定されているのが『サンデーモーニング』という番組なのです。その結果、このような背景を知る由もない一般の視聴者は、日本は気候変動対策に消極的な国であるかのような印象を擦り込まれてしまうのです。

理念皆無のご都合主義

寺島実郎氏:ロシアの疲弊、プーチンの焦りは臨界点に迫ってきた。岸田氏は中東辺りを回っているが、一体どういう世界秩序を日本は模索しているのか。つまり世界を分断するような力学に加担することを日本は避けなければいけない。

日本はどんどん軍事同盟であるNATOへ諸肌脱いで参画していく方向に前のめりになっている。NATOへの接近は世界を二極分断する対立の中に、この戦争を世界戦争にしてしまう。無責任な応援団になってはいけない。

次の世界秩序を分断させない方向に向けて日本が国家としての構想力を試されている。そういう議論に進み出さなければダメだ。

寺島実郎氏

寺島氏はウクライナ軍がクリミア橋を爆破したことを受けて、ロシアに対峙する先進国の同盟であるNATOに日本が加わらないよう強く牽制しています。これは、日本だけはプーチンを黙認するよう実質的に求めていることに他なりません。

しかしながら、寺島氏は先々週の『サンデーモーニング』では次のようにコメントしていました。

先々週と今週で主張が真逆に

寺島実郎氏:我々は冷静に安倍政治を総括すべき時に来ている。政治家の評価というのはそういうものだから。僕はリーダーと国民が賢くないと国は一気に埋没して迷走するという思いで安倍政権の8年間を振り返ると、例えば、外交については、ロシアの混乱を見ると、クリミア併合という2014年がものすごく重要だった。

あのとき、日本だけが先進国の中でプーチンを黙認してしまった。それがプーチンをして増長させた。

寺島氏は、クリミア併合時に「日本だけがプーチンに沈黙して増長させた」として、安倍氏をウクライナ戦争の元凶であるかのように非難しました。

これは今週の主張とは真逆です。ロシアに沈黙しても上から目線で非難し、対峙しても上から目線で非難する。

つまり、寺島氏は、世界秩序に対する一貫した理念を持っているわけではなく、大言壮語のご都合主義で安倍氏と岸田氏を言いたい放題に批判しているだけなのです。

何を発言しても他の出演者から反論されることなく強く賛同だけされるこの番組に長期間出演していれば、いつのまにか自分を無謬で全知全能の存在と勘違いし、このような矛盾した発言も何とも思わなくなるのかもしれません。

藤原かずえ | Hanadaプラス

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