【おんなの目】イラつく日々

 汗が全身から吹き出る。風呂上り下着をつける。タオルでせっせと拭いてもわき上がってくる汗。べとついた足が下着にうまく入らない。片足立ちなのでふらふらする。足の小指が引っかかる。イライラして狂暴な気持ちになる。意固地になって力まかせに下着を引っ張る。小指が股裂き状態になって痛い。それでも引っ張る。ビリっと音がして、小指が自由になった。着古した下着が破れた。もう嫌、と叫び、バスタオルを腰に巻いて濡れた足音をべたべたとたてながら新しい下着を部屋に取りに行く。廊下はひんやりしていて猛った気持ちが静まっていく。

 ここ数年できないことが多くなってイラつく。長い靴ベラがなければ靴が履けない。フォークでは滑るのでケーキは割り箸で食べる。パソコンに不都合が起こり使い方を業者に電話で訊いた。何を言っているのかさっぱりわからない。もうかれこれ三十年使っているが、言葉は日々新しくなるのだろうか? 奇妙だ。

 『女性である自分の視線で世の中をひとつひとつ再定義すること、それが、女性が年を取ることの本質ではないかと。女性は年を取るほど革命的に変わらざるをえない』“主婦である私がマルクスの「資本論」を読んだら”チョン・アウン著からの孫引きである。女性の認識革命、上等だ。

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