4年足らずで21軒! 驚異的入居者数のワケは…? 小学生から80代までが関わる街ぐるみの空き家対策 広島・庄原市山内地区

「いらっしゃいませ!」と元気な声を上げ子どもたちが販売するのは…
・スミレの柄のカップ&ソーサー(無料)
・足踏みミシン(7000円)
・自転車(150円)

これらは全部、空き家にあった不要品です。ただの蚤の市ではありません。なんと、地域人口を増やすための取り組みなんです。広島県庄原市山内地区で実績を上げている、まさに町ぐるみの空き家対策をご紹介します。

「住みたい田舎ベスト1位」の街をしのぐ⁈ 驚きの空き家入居率

過去30年間の広島県内の空き家の数です。県内では20の市町、つまりほとんどの自治体で空き家対策に取り組んでいますが、全国的に見ても広島県には空き家が多く、また、増加率も全国平均に比べて高い、というのが現状です。

そんな中、庄原市の山内自治振興区(=山内地区)では、4年間で21軒の空き家に入居が決まって、移住した人はなんと62人!

これがどれくらいすごいかというと…? 今年「住みたい田舎ベストランキング」で1位になって話題の長野県飯田市は2019年からの4年間で30軒の空き家に入居が決まったんですが、こちらの市の人口規模はそもそも約4万300世帯。対して山内地区は700世帯足らず。…わかっていただけますでしょうか?

この人気の背景には、ものすごく細やかなサポート体制があり、その一端を取材しました。

「サトちゃん」の貯金箱と旧式の水筒をそれぞれ300円で購入する女性。
「これはお花を入れようかなと」

ラタンのチェストが500円⁈ リサイクルマーケットが激安な理由は…?

広島県庄原市山内地区。人口1500人余り、高齢化率49%というこの地域で、6月最後のこの日、平日にも関わらず、ひときわにぎわう場所がありました。

雨で濡れてしまったラタンのチェストを500円で購入する女性。
「ジャガイモ入れるのにいいんじゃない? 風が通って」

「山内リサイクルマーケット」と題された4回目の取り組みで、無料の食器類から最高額は7千円のミシンまで様々なものが出品されています。

楊行李も黒電話も、鉄製のアイロンまで…全て500円。

木製の棚を「100円か300円か」で購入する母と娘。
Q.即決でしたね?
「アンティークなのもいいし、子どもがオモチャを入れたりするのにちょうどいいかなと」「釘が使われていないところも」

まだまだ使えそうなものでも、激安で販売されるのには、ワケがありました。実は全て空き家から運び出された不要品だったのです。

同じ山内町内にある木造2階建ての空き家です。ここにあった家財道具や日用品は、軽トラ6台分。半分はゴミとして処分されましたが、残り半分はリサイクルマーケットに出品されました。

山内てごぉし隊 寺西玉実さん
「今回はこの空き家の持ち主が依頼した方々(業者)から、『全部品物をなくしてください』とお願いされて、全て出させて頂いております」

山内地区の空き家対策の仕組みはこうです。
まず、空き家の所有者や、販売や賃貸契約を委託された不動産業者が、「山内てごぉし隊」に不要品の処分を無償で依頼。
てごぉし隊は、家財道具を運び出し、リサイクルマーケットを開催。
その売り上げで、廃棄する物の処分費用を賄い、さらに残った売り上げは、地元の保育園と小学校の教育支援金になる、ということです。

空き家対策の救世主「山内てごぉし隊」って何者なんだ?

今回の店には、空き家5軒分の品物が並んでいます。運び出しなどの作業は、全て寺西さんたち「山内てごぉし隊」が行っています。

山内てごぉし隊 寺西玉実さん
Q.運び出しなど作業は大変だったのでは?
「でもね、楽しいんですね、みんなね。(てごぉし隊の)メンバーは、学生さんから、地域の人や、あと地域外の人も色々おられるんで、私のようなおばちゃんから、色々、みんなで力を合わせてがんばっております」

さらにこの取り組みがユニークなのは、地元の小学生をも巻き込んでいる、ということ。これまでにも、荷物を運び出した後の古民家を子どもたちが掃除するなど、町の人たちが一体となって活動してきました。

参加した児童は…
「楽しい。築150年の家がまだ残っていて良かった」
「きれいになって、ここに住む人がおったらいいなって思う」

「おはようございます!」
この日も、山内小学校3年生の9人が宣伝・販売係として参加しました。
「こちら無料コーナーです!」
「この木の靴買ってみてください」
「サンダルになりますよ」
「ちょっと履き心地は悪いかもしれませんが…」

Q.「こうなったらいいな」という思いは?
「この山内が、まだ使えるのに捨てるものを少なくしたい、ということです」

山内てごぉし隊 谷本豊さん
Q.狙いは?
「地域のことですからね、地域皆で、子どもから年寄りまでみんなで協力して、住みよい地域が作れれば」
Q.大人だけでやるのと…
「張りが違います。励まされます」

物理的に家がキレイになったり、モノが売れたりするだけではない、街ぐるみの雰囲気づくりが功を奏したのか、山内地区では、ここ4年間で、21軒の空き家に住む人が決まり、子どもを含めた62人が移住してきています。

「空き家をキレイに」から生まれる好循環…地域にジェラート店OPEN?!

Uターンして、実家の近くの空き家に移り住んだ人は…?
Uターン移住した女性
「過ごしやすく、きれいな家でありがたく住まわせて頂いています」
「私の実家が牧場なんです。その牧場の牛乳を使って、今、隣の敷地でジェラート屋さんを開けるためにやってます」

色んな地域で、空き家が活用されないままになっている理由の一つが、「残された荷物の処分に時間とお金がかかる」ということ。この「山内てごおし隊」の場合、基本的に無料で引き受けてくれる、ということで、地域の人たちにとても頼りにされています。

一方で、移住するか決める側にとっても、
・立地条件 ・価格 ・物件の状態 だけでなく
・家財道具が片付いているかどうか というのも決め手になるそうで、
一般的には、「荷物が残っている物件は敬遠されがち」なんだそうです。
また、移住するかどうかを考える上で、地域にどんな人たちがいるのか、という広い意味での「環境」は重要な要素。この活動は、そういった意味でも好循環を生んでいると言えます。

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