・ひどい言葉で罵倒されたり、人格を否定するようなことをよく言われる。
・実家や友人との交流を嫌がられる。
・外出を制限されている。
・無理な節約を強いるなど、お金の制限をされている。
・思い通りにならないと、思い通りになるまでしつこく責め立ててくる。
・無視あるいは不機嫌な態度を取ってこちらの行動をコントロールしようとする。
夫によるこのようなモラハラ(モラルハラスメント)に苦しめられている女性は少なくありません。
夫からモラハラを受けると、多くの場合、次のように考えるのではないでしょうか。
・「離婚」もしくは「別居」する。
・あるいは、「子どもや生活のために我慢する」。
経済的に十分ゆとりがあれば、離婚や別居を視野に入れることも可能でしょう。
しかし、子どもや生活のためにはそう簡単に離婚や別居に踏み切れない場合もあります。
この場合、「私が我慢すればいいだけだから…」と夫の暴言や要求に耐え続けることになります。そんな生活を続けていれば、いずれ心身に大きな悪影響を及ぼしかねません。
夫からのモラハラを受けたら、「離婚」「別居」「我慢」これらの選択肢しかないのでしょうか?
モラハラ解決相談所『Re:gene(リジェネ)』の所長、太田瑠美さんに夫婦間のモラハラの解決法についてお話を伺いました。
どんな人がモラハラ解決相談所に訪れる?
夫婦間のモラハラについて、弁護士の先生や行政に相談に行くと、離婚や別居を前提に話をされるのが一般的です。真剣に離婚を視野に入れて考えている方はそこで話を進めていけますが、そうでない方もやはりいらっしゃいます。
太田さんの元には、法律事務所や行政機関に相談に行ったものの、うまく現状や思いを伝えられず、心が折れて、それでもやっぱり「今の現状をどうにかしたい」と思い、民間の相談所を探してたどり着く方が多いそうです。
モラハラ相談所に相談・問い合わせに訪れる男女の割合は、女性6:男性4。
女性の相談者には、大きく次の2つのパターンがあるそうです。
・経済的には裕福で、この生活を切り崩したくはない(離婚したくない)けれど、夫のモラハラに耐えられそうもなく、どうすればいいのか分からない。
・離婚はしたいけれど、経済的に夫にコントロールされていて身動きが取れず、どうすればいいのか分からない。
今までモラハラする気配は一切なかったのに、仕事のストレスが大きくなった、出産などで生活環境が変化したことなどが引き金となり、モラハラ夫化していった…というケースも多く、「元の夫婦関係に戻りたい」という思いを抱いて相談に来られる方も少なくないそうです。
モラハラをする夫の特徴
モラハラをする夫には、どんな特徴があるのでしょうか?
また、なぜモラハラ行為に及ぶのでしょうか?
太田さん「モラハラする人には、「○○するべき」「○○であるべき」という固定観念がとても強いケースが多いです。
男は、妻子を十分に養うことができる収入源をいつでも確保しておくべき。
女は、家庭内と子どもの世話を何より優先すべき。
人に何かをしてもらったら、必ず「ありがとう」を言うべき。
家の中は常に整った状態であるべき。
夫婦の家庭内の役割は、平等であるべき。
そういった固定観念を自分の中だけの『マイルール』として自分だけに適用していれば問題ないのですが、それがなかなかできません。マイルールが多い人は、他人にも自分のマイルールを押し付けようとします。
そして、自分の作ったマイルール通りに相手が動いてくれないと、激しい怒りの感情を抱きます。
会社や組織など社会生活では怒りを表面に出さず過ごしている分、配偶者など心を許した相手には我慢ができず、怒りを爆発させてしまいます。怒りを何らかの形でぶつけることで、相手を思い通りに動かそう、コントロールしようとするのですね」
モラハラを受けやすい妻の特徴
モラハラを受ける側の妻には、特徴や共通点はあるのでしょうか?
太田さん「モラハラを受ける女性というと、弱々しい姿を想像する人もいらっしゃるかもしれませんが、決してそんな方ばかりではありません。
コミュニケーション上手で多くの人から慕われていて、要領も良く、職場などで重宝されている(されていた)ような方が多いです。
モラハラを受けやすい人が周囲との関係性が良好なのは、自分の気持ちを抑えて人に合わせることができるからです。白か黒かで物事を考えず、グレーゾーンを受け入れる心の広さがあるのです。
そのグレーゾーンを受け入れられる心の広さが、モラハラ気質の男性にどんどん踏み込む余地を与えてしまうのですね。
結果、「私が我慢すればいいだけだから…」という思考になり、自分の気持ちを抑えて、心身に限界が来てしまうまで、夫に合わせて生活をするようになります」
夫婦間のモラハラ、どう修復する?
夫婦間のモラハラは、修復は可能なのでしょうか?
可能な場合、どんな方法があるのでしょう?
太田さん「夫婦間のモラハラは、双方ともに自分と向き合うこと、そしてお互いに対するコミュニケーションを見直すことで修復は可能です。『Re:gene(リジェネ)』では、主に次のようなステップを大事にしています」
一次感情と向き合う
モラハラする側は、怒りの感情がとても強く、コントロールができない人です。
怒りというのは、心理学で『二次感情』と言われています。つまり、元になる『一次感情』があるのです。
一次感情は、寂しさ、不安、恐怖、などです。怒りの底にある本当の気持ちを自分の生い立ちを含めて見つめ直し、怒りの正体を分析する。それが衝動的な怒りを止めるための第一歩になります。
モラハラを受けている側は、自分の気持ちを抑えて人に合わせて生きてきた人が多いと先ほど述べました。自分の本当の気持ちに敏感になり、伝えることが大切です。
私自身も、かつて夫からモラハラを受けて鬱になりました。修復の第一歩は、自分の本当の気持ちを伝えたことからでした。
あなたのあの言動でどれだけ傷ついたか。どんな悲しい気持ちで毎日を過ごしているのか。私は今すぐ離婚したいぐらい辛い思いを抱いている。…夫はそこで私の気持ちを知り、自分のモラハラ行為に気づき、自分を変えようという意識を持ったのです。
マイルールを共有する
モラハラをする側は、自分の中のマイルールを明確にする必要があります。
モラハラの原因となるマイルールは、幼少期の家庭環境から来ているものが多いです。自分の中では当たり前かもしれませんが、他人からしたらまったく当たり前でないのです。マイルールを言語化することで、客観的に自分を見ることができるようになります。
モラハラを受ける側は、相手のマイルールがよく分からぬまま相手に全部を合わせている状態。
マイルールを共有することで、妻側も「だから夫はあの時あんなに怒っていたのか」ということが理解できます。
そして、『マイルールは共有するものであって、強要する(強要される)ものではない』ということも、互いにしっかり認識します。
お互いの違いを尊重する
夫婦間のモラハラはお互いに深く依存しあっていて(共依存)、モラハラする側は「相手は自分の思う通りに動いて当然だ」、モラハラを受ける側は「相手の言う通りに考えなければならない」「相手のすべてを受け入れてあげなければならない」という考えを強く持ってしまっている場合が多いです。
そこをしっかり、お互いに「あなたはあなた、私は私」と、区別をつけていきます。
お互いの違いを受け入れ、分かり合い、尊重する関係性に変えていきます。
違いを楽しむ、と言ってもいいでしょう。
互いの違いを活かして家庭内の役割分担をするなど、夫婦生活を楽しむ工夫をしていくことが大切です。
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夫婦間のモラハラは、家庭という閉じた世界だけで起こるもので、友人や知人、親きょうだいには相談できない、相談してもなかなか分かってもらいにくいのが実情です。
「夫からのモラハラが辛い」「誰にも理解してもらえない」と悩みを抱えている方は、モラハラ専門のカウンセラーに相談・問い合わせてみてください。
【取材協力】太田 瑠美
モラハラ解決相談所『Re:gene(リジェネ)』所長。
自身もかつて夫によるモラハラに悩んでいたが、1年がかりで修復。2015年より「同じ思いで苦しんでいる人の助けになれれば」と活動を開始。現在までに約1300件を超す相談を受け、解決に導く。その活動が、産経新聞・神戸新聞・NHKほっと関西など、全国のメディアに取り上げられ、反響を呼んでいる。
(ハピママ*/ 黄本 恵子)