鳥インフル、ウイルス侵入早期化 防疫対策前倒しを 農水省

農水省の高病原性鳥インフルエンザ疫学調査チームは25日、同病の発生が過去最大となった2022~23年シーズンの報告書と対策の提言をまとめた。国内へのウイルス侵入が過去最も早く、農場への侵入リスクが高い状況が長期間続いたと指摘。防疫体制の整備を9月中に前倒しし、鶏舎の入気口にフィルターを設置するなど、ウイルス侵入防止の対策徹底を提言した。

報告書は、今季の野鳥での感染確認が9月25日、農場での発生が10月28日で、いずれも過去最も早かったことを強調。渡り鳥を通じ、感染したカラス類などの野鳥や、感染野鳥を食べた小動物などが農場内に侵入するリスクが高かったとした。

今秋以降の発生に備えた提言として、衛生対策が十分と報告した農場でも不備のある例が多かったとし、従業員や外来業者らの動線の再確認や衛生対策の徹底を求めた。①ちりやほこりと一緒にウイルスが侵入しないよう、鶏舎の入気口にフィルターや細霧装置などを設置する②カラスなどの野鳥が近づかないよう、こぼれ餌の片付けや止まり木の剪定(せんてい)をする――ことなども検討が必要だとした。

報告書によると、今季の発生農場では18種類のウイルスを確認した。鶏への接種試験では、平均死亡日数は2日が多かったが、6日かかるウイルスもあったという。死亡までの日数が長い場合、感染に気付かないまままん延する可能性もあるため、鶏に異常がないか観察することが重要とも提起した。 川崎勇

埋却予定地 実効性確認求める

高病原性鳥インフルエンザで殺処分した鶏などの死骸の埋却処理を巡り、農水省は都道府県に対し、埋却予定地が実際に使えるかどうかの確認を求める通知を出した。今季、同病の発生後に、予定していた埋却地が使えない問題が各地で発生したためだ。埋却地を確実に確保し、感染拡大の防止を徹底する。

通知は21日に発出。防疫措置で必要な埋却地や焼却施設などの準備ができているか、家畜所有者に確認するよう求めた。特に埋却地については、自身が所有する土地以外を候補地にし、その土地の所有者とトラブルになる場合があったことなどから、土地利用の契約状況を確認するよう呼びかけた。焼却処理をする場合は、焼却施設の管理者と調整し、利用時の要件や準備事項などの確認を求めた。

同病は、昨年10月から今年4月までに26道県で84事例発生し、1771万羽が殺処分となった。殺処分後の死骸は、埋却か焼却で処理する。埋却だけで処理したのは56事例で7割を占めた。

通知は、今後、夏休み期間に入ることを踏まえ、アフリカ豚熱や口蹄疫(こうていえき)の発生地域への畜産関係者の渡航自粛、空港や港での靴底消毒の実施なども改めて求めた。

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