醤油ペロペロ、列車停止…子どもが「迷惑行為」で“送検”されたら? 突然の事態に「親がやるべき対応」とは

非常ボタンを押した高校生は「写真を撮る為に列車を遅らせたかった」と供述したという(bravy100/PIXTA ※写真はイメージです)

回転ずしチェーン「スシロー」で今年1月、客の高校生が備え付けのしょうゆ容器をなめる動画が拡散された騒動で、運営会社「あきんどスシロー」は被害届を警察に提出。3月22日には、少年に対し約6700万円の損害賠償を求め大阪地裁に提訴した。

同じく今年1月、JR東海道線の踏切(静岡県沼津市)で、いわゆる「撮り鉄」の高校生が非常停止ボタンを押し、列車の運行を妨害した疑いで6月12日に書類送検された。

また、警察庁によれば、オレオレ詐欺などの「特殊詐欺」にかかわったとして昨年(令和4年)検挙された20歳未満の少年は477人に及び、成人を含む「特殊詐欺」検挙人員の19.4%を少年が占めた統計も出ている。

令和4年「特殊詐欺」の検挙人員における少年の割合(※警察庁からの発表資料をもとに弁護士JP編集部作成)

これらのように、SNSの普及などで、未成年の迷惑行為や犯罪行為が拡散、注目されることも増えている。インターネット上では、「問題行動をする子どもは、親の躾や教育にも問題があるのではないか」との意見も散見されるが、それは少し思い違いがあるかもしれない。

警察庁によれば、刑法犯少年の保護者に「放任」「過干渉」などの特徴・問題が「ない」場合が父親で7割、母親で6割を超えるというデータも出ている。

警察庁生活安全局人身安全・少年課「令和3年中における少年の補導及び保護の概況」より

親のあずかり知らないところで、子どもがトラブルに巻き込まれる可能性は、どんな環境下でも発生し得ると言えるだろう。

子どもが「迷惑行為」で損害賠償請求…? 謝罪の前にすべきこと

子どもの迷惑行為がインターネット上で拡散したり、被害を受けた企業や相談を受けた警察から直接連絡が来た場合、親としてどう行動するべきなのか。

子どもの権利委員会に所属し、少年事件の対応に注力する宮脇知伸弁護士は、まず謝罪の“前”に弁護士に相談してほしいと話す。

「謝罪自体はすぐにすべきだといえますが、相手に対する申し訳ないという気持ちからあまりにも不利な内容で合意してしまうこと等が考えられます。

当事者同士で会うことで相手方から不必要な攻撃を受ける恐れもあります。不要なトラブルを避けるためにも、謝罪をするとしても弁護士に同席してもらい、必要以上に不利な内容で合意しないようにした方がいいと考えられます」(宮脇弁護士)

また、子どもの行為だとしても、必ずしも謝って済むという訳ではなく、相手が被害届を提出するなどして逮捕・送検されたり、スシローの騒動のように損害賠償を請求されるといったケースも考えられる。

20歳未満の少年が関わる“少年事件”には、「通常の刑事事件とは異なる手続きが多くある」として、宮脇弁護士は「子どもが当事者の場合には、刑事事件に精通しているだけでなく、少年事件を多く取り扱っている弁護士に依頼すると良いと思います」と説明する。

ネット上で巻き起こる“私刑”「誹謗中傷」への対応法

原則として実名報道がなされない未成年の犯罪行為だが、たとえばスシローの騒動では、拡散された動画に少年の容姿が映っていたことから身元が特定され、インターネット上では本人や家族への“私刑”とも言える誹謗中傷が起きた。さらに通っている学校にも非難が殺到し、少年は自主退学に追い込まれたとも報じられている。

このように昨今では、迷惑行為をした本人やその家族に対し、ネットを中心とした“袋だだき”状態が起きてしまうことも少なくない。

自分の子どもの映った迷惑行為の動画や写真から、容姿や氏名、通っている学校などが特定、拡散された場合の対応について宮脇弁護士は、「一度インターネットに拡散されてしまったものは、いわゆる“デジタルタトゥー”として、削除請求(※)では完全に削除しきれない可能性が高い」とした上で、以下のように語った。

(※)インターネット上の投稿などにより、人格権である名誉権やプライバシー権等が侵害された場合に、サイトの管理者やプロバイダに投稿の削除を請求すること。

「あまりにも過激な誹謗中傷をしてくる相手などには、損害賠償請求を行うことで、それ以上の攻撃を防ぐことが考えられるかと思います。起こしてしまった迷惑行為や犯罪行為については反省が必要ですが、親御さんやお子さんの権利を守ることも大切です」(宮脇弁護士)

トラブルに巻き込まれないために

子どもが迷惑行為や犯罪の加害者になってしまった場合、親としてやるべきことは、①謝罪の前に弁護士に相談することと、②過激な書き込み(誹謗中傷)には毅然とした対応をとることだ。

もちろん、子どもがトラブルにまきこまれないよう、「親子でネットリテラシーについて話し合ったり、ネットに限らず何をしたら犯罪になってしまうのか、他人に迷惑をかけることがどういった被害に繋がるのか等、子どもがトラブルに巻き込まれないよう日ごろからコミュニケーションをとって考えを共有するなど注意しておくと良いと思います」と宮脇弁護士。

前述した通り、ある日突然“加害者”の親になってしまう可能性は誰にでもあると用心しておくことも大切ではないだろうか。

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