少女と老人の人生が交差 新しい人生の歯車が動く 福間健二遺作「きのう生まれたわけじゃない」公開決定

詩人で映画監督の福間健二が原案・脚本・監督を務めた映画「きのう生まれたわけじゃない」が、2023年11月11日より劇場公開されることが決まった。本年の4月に亡くなった福間監督にとって、長篇劇映画第7作にして遺作となった。

「きのう生まれたわけじゃない」は、学校に行かない中学2年生の七海(ななみ)と、妻を亡くした元船乗りの77歳の老人・寺田との心の交流を描いた作品。心の通わない母との二人暮らしで希望を持てない14歳と、人生の終わりが近づいて過去にとらわれている77歳の2人が、ふとしたことで心が通い、いつしか大切な友人となり、家族のような日々を過ごすなかで、新しい人生の歯車がゆっくりと動いていく。

七海を演じるのは、映画初出演となるくるみ。幼い笑顔とともに、まっすぐで強い表情も見せる。老人の寺田役を福間健二監督自身が務め、七海が心を許せる女性・岬役と亡くなった寺田の妻・綾子の亡霊役の2役を正木佐和が演じる。七海と寺田が出会っていく人々に、守屋文雄、安部智凛、蕪木虎太郎、住本尚子、谷川俊之、今泉浩一、小原早織らが顔をそろえる。

福間健二監督は映画企画時のコメントで、「いま、人々は、とりわけ弱い立場にある老人と少年少女は、生き方を見失っている者が多い。これから何をすればいいのか、展望が見いだせない。けれども、人は人に出会い、なにかを受け取り、与えあうことで、小さな希望をつかむことはできる。東京郊外を舞台にした、近過去でも近未来でもあるような物語を通して、そういう主題を訴えるとともに、いままでの殻を破るような映画表現を追求し、そのなかに人々を招くような「対話」を実現したい」と、本作への思いを明かしている。

また、プロデューサーの福間惠子は、「福間健二は、この地上にたしかな感触をもって生きることを底辺におきながら、詩と映画への冒険的な表現に果敢に挑戦してきた。本作では、探していた七海役のくるみに出会えた瞬間に、みずからが老人の寺田役を引き受けることを決めたのだと思う。20 歳で若松孝二監督『通り魔の告白 現代性犯罪暗黒篇』の脚本を書き主演してから53年後の、大きな挑戦だった。「主演作が遺作になるなんてカッコよすぎるよ、監督」とスタッフのひとりが言ったが、果たしてそうなのである」と、コメントを寄せている。

【作品情報】
きのう生まれたわけじゃない
2023年11月11日(土)よりポレポレ東中野ほか全国順次公開
配給:ブライトホース・フィルム
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