【連載コラム】第22回:アメリカのデータサイトが掲載している「プレーオフ進出確率」 エンゼルスは13.8%

2023年レギュラーシーズンも後半戦に突入し、プレーオフ争いの行方に注目が集まる時期となりました。シーズン終盤になると各メディアで話題になるのが各球団の「プレーオフ進出確率」です。代表的なものとしては、アメリカのデータサイト「ファングラフス」が算出しているものと「ベースボール・リファレンス」が算出しているものがあります。ここでは、この2つのサイトの「プレーオフ進出確率」がどのように算出されているのかを紹介しようと思います。

まず「ファングラフス」では、現在の順位、残りの試合日程、各球団の予想成績をもとに、残りのシーズンのシミュレーションを2万回行っています。この2万回のシミュレーションの結果を集計し、各球団の地区優勝、ワイルドカード獲得、ワールドシリーズ制覇などの確率が算出されます。たとえば、ある球団のプレーオフ進出確率が90%と算出されている場合、それは2万回のシミュレーションのうち、1万8000回はその球団がプレーオフに進出したことを意味します。

一方、「ベースボール・リファレンス」では、「ファングラフス」と同様のシミュレーションを1000回行っていますが、各球団の予想成績は直近のレギュラーシーズン100試合をベースに決められています(シーズンをまたぐ場合もある)。つまり、シーズン開幕直後には前年のパフォーマンスが予測に含まれますし、トレード・デッドラインで大きな戦力補強があったとしても補強前のパフォーマンスが予測に含まれることになります。「ベースボール・リファレンス」自身も「ロースターの変動を考慮した複雑なシステムを希望される場合は、他のサイトをご参照ください」と案内しています。

では、現時点の各球団の「プレーオフ進出確率」を見てみましょう。日本時間7月25日の全試合が終了した時点で、「ファングラフス」による各リーグの「プレーオフ進出確率」は以下のようになっています。

アメリカン・リーグ
レイズ 93.8%
オリオールズ 89.6%
ツインズ 83.7%
レンジャーズ 79.3%
ブルージェイズ 74.7%
アストロズ 73.9%
ヤンキース 34.2%
レッドソックス 27.5%
ガーディアンズ 15.7%
エンゼルス 13.8%
マリナーズ 11.6%
タイガース 1.9%
ホワイトソックス 0.2%
ロイヤルズ 0.0%
アスレチックス 0.0%

ナショナル・リーグ
ブレーブス 100.0%
ドジャース 97.5%
ブリュワーズ 77.8%
フィリーズ 61.9%
ジャイアンツ 58.1%
マーリンズ 50.9%
ダイヤモンドバックス 49.7%
レッズ 33.5%
パドレス 33.4%
メッツ 16.5%
カブス 13.8%
カージナルス 6.5%
パイレーツ 0.3%
ロッキーズ 0.0%
ナショナルズ 0.0%

ア・リーグは「プレーオフ進出確率」が70%を超えている球団が6つあります。ワイルドカード争い2位のアストロズから8位のガーディアンズまでの7球団が7.5ゲーム差のなかにひしめいていますが、データ上はブルージェイズとアストロズがかなり有利で、ヤンキース以下の球団にはかなり厳しい数字が出ています。ヤンキースをスイープするなど直近8試合で6勝2敗と好調のエンゼルスですが、コンテンダーとの対戦が多く残っていること、そもそも戦力が不足していることなどから高い評価は得られていません。仮に今日からのタイガース3連戦をスイープしたとしても、そのあとに強豪との対戦が続くことを考えると、「プレーオフ進出確率」はあまりアップしないことが予想されます。この状況で大谷翔平をトレードするのか、キープするのか、エンゼルス首脳陣は難しい判断を迫られることになります。

一方のナ・リーグは「プレーオフ進出確率」が70%を超えているのが地区首位の3球団だけ。ワイルドカード争い1位のレッズから5位のフィリーズまでの5球団がわずか1ゲーム差という大混戦の状況が「プレーオフ進出確率」にも反映されており、まだまだワイルドカード争いの行方はわかりません。意外なのは、ワイルドカード争い1位のレッズと、そこから6ゲームも離されているパドレスの「プレーオフ進出確率」がほとんど変わらないこと。おそらくこれはスター選手を多く抱えるパドレスの戦力が高く評価された結果なのでしょう。開幕から波に乗れず、苦しい状況が続く今季のパドレスですが、少なくともデータ上はまだプレーオフ進出のチャンスがあると言えそうです。

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