<坂口将也記者>
こちらの交通事故の写真、全てここ1年以内に静岡県内で起きたものですが、いずれも運転手は70代以上の高齢ドライバーだったんです。このようなニュースがある度に「免許の自主返納」の是非が問われますが、高齢ドライバーにとって「返納」だけではない、さまざまな可能性を考えます。
<自動車学校教官>
「いま段差によってタイヤが止まっているという状態。では、アクセルを思いっきり踏んじゃって!」
<受講者>
「思い切り?」
<教官>
「でも、走らないというのが急発進抑制装置」
7月25日、藤枝市にある自動車学校では、高齢者向けの交通安全教室が開かれ、「安全運転サポート車」=通称・サポカーの体験会が行われました。サポカーとは衝突被害軽減ブレーキやペダルの踏み間違いによる急発進抑制装置などの先進安全技術を搭載した車のことです。初めて体験するサポカーに参加者の反応は…?
<参加者>
「すごいですね。安心して乗れますね。こういう車でしたら」
「100%装置を信用するわけじゃないけど、(安全装置が)ついていればドライブの安心感は増す。格段に。絶対、高齢者には必要」
県内でも相次ぐ高齢ドライバーの事故には、ある特徴が見られます。
<県警交通企画課 岡澤尚浩管理官>
「令和4年中は高齢ドライバーの事故は出合い頭、そして追突の順で全体の6割を占めているという特徴がある」
警察庁が発表している75歳以上の高齢ドライバーの事故原因です。全体の約3割がブレーキとアクセルの踏み間違いなどといった「操作ミス」から起きていました。このような背景からサポカーの重要性が高まり、2022年5月、「サポートカー限定免許」の導入が始まりました。
この免許はサポカーのみ運転が可能で、「免許更新」と「自主返納」の中間の選択肢になると期待が持たれていました。しかし、導入から1年以上経つ中、現時点(7月20日)で県内での取得者は3人。全国でも3月末時点でわずか17人にとどまっている状況です。
なぜ普及が進まないのか。大きな理由として、経済的な負担やメリットの少なさが挙げられます。まず、サポカーを準備するために購入費用がかかること。加えて補助金などの優遇措置がないなど、課題の多い制度となっているのが現状です。
<県警運転免許課 豊山良太課長補佐>
「県警としては本人(高齢者)に限らず、ご家族や自動車販売事業者などに広くご理解・ご協力をいただき、周知に努めていきたいと考えている」
一方、事故を減らすことを目的にサポカー限定免許と同時期に導入されたのが、免許更新の際に行われる「運転技能検査」です。
<坂口将也記者>
「実際に運転技能検査、体験したいと思います。よろしくお願いします」
この検査は一定の違反歴がある75歳以上のドライバーを対象に義務づけられています。
<教官>
「ここを左折です。中央線に従ってそのまま道なりに走行してください」
一時停止や右左折、段差乗り上げなどの運転操作を減点方式で採点し、不合格の場合は免許更新ができなくなります。
<マジオドライバーズスクール藤枝校 篠原健也さん>
Q.操作自体は非常に初歩的な操作のみだったと思うが、この検査を受ける高齢者はどうか?
「一時停止の交差点で多いのは止まったつもりで行ってしまう、見通しの悪い交差点で停止線を越えて止まってしまう。運転経験を積めば積むほど無意識の操作が多い。自分の癖、そういうものに気づいてもらえたら」
免許更新か返納か。またはサポカー限定免許か…。高齢ドライバーにとって選択肢は増えましたが、最も大事なことは人に迷惑をかけないために何を選ぶか、です。