ロッドオタクであるDAIWAロッドデザイナーの今井亮介さんが、トップウォータールアーに適したロッドとは何かを解説。『“へ”の字』テーパーと『“の”の字』テーパーをキーワードに、DAIWAのロッドに込められたこだわりと設計思想を紹介していく。
●文:ルアマガプラス編集部
― 今井亮介(いまい・りょうすけ)
DAIWAのバスロッド開発の司令塔としてスティーズやブラックレーベルシリーズに携わる。自他ともに認めるロッドマニアで、DAIWA以外のロッドも自腹購入し研究に勤しんでいる。
操作もキャストも決まるメリットだらけのテーパー、それが「〝へ〟の字」
― 『〝へ〟の字』
― 『〝の〟の字』
― 操作系か、ただ巻きかでロッドのテーパーが変わる
トップウォータールアーといっても、ペンシルベイトからポッパー、クローラーにバズベイト、虫ルアーまで多種多様。ルアーの種類やサイズ、使い方に合わせてマッチするロッドは変わってくる。トップウォータールアーに適したロッドに共通する項目はあったりするのだろうか?
「昔のトップウォーターロッドというと、アンダー6ftでグラスのスローテーパーというのが一般的でした。それは大きなルアーを投げやすいというのが理由だったんだと思います。昔のグラスのスローテーパーのロッドはバットが太くて、曲がるは曲がるけどバットは強いという。まあそのスローテーパーの名残は現在にも残っていますね。オールドのトップロッドの雰囲気を継承しつつ、中~高弾性でレギュラー~ファストテーパーで自分で操作して食わせるというのが、現在のトップロッドですね」
トップに適した長さは?
「62~64くらい、マックス66くらいが操作系で使いやすい長さかと思います。ジャークベイトに近いイメージですね。ロッドを下に向けて細かく操作したいという人はアンダー6ftでもいいでしょう。そして、ただ巻き系のルアーは操作する必要がないのでもっと長くてもいい。重ためのクローラーなどは7ftクラスのほうが、ラインメンディングもできるし使いやすいです」
ロッドセレクトにおいて注目して欲しいのがティップのテーパー。それが『〝へ〟の字』テーパーと『〝の〟の字』テーパーだという。ベントカーブがひらがなの〝へ〟の様に曲がるタイプが〝へ〟の字テーパー。ひらがなの〝の〟の様に先端から曲がるタイプが〝の〟の字テーパーだ。
「〝へ〟の字テーパーはティップを硬く設計したアクションのこと。先端が曲がらないことで、アングラーの入力したアクションをラインとルアーに伝達することができる。つまり、細かくトゥイッチしたりという操作系のルアーに向いています。〝へ〟の字テーパーは、曲がりとしては一見美しくないんですけど、とても投げやすいですよ。〝へ〟の字のロッドはキャストした時、着水地点でティップが〝へ〟の字の分だけお辞儀して、着水音がソフトになる。勝手にソフトプレゼンテーションしてくれるんです。スピナーベイトなどを使っているとよくわかりますよ。アメリカの良くできたロッドは〝へ〟の字が実は多かったりします」
〝へ〟の字テーパーは巻きモノやワーミングも使いやすいという。
「ラインスラックを作りやすいので、ワイヤーベイトの弛ませ引きにも向いたテーパーですね。ワーミングではティップがスタックを躱し、半スタック状態を作りやすい。感度も良いし、シェイクすれば外れてくれると。ボトムのワーミングで〝の〟の字だとどんどんスタックしていってしまうんです」
では、『〝の〟の字』テーパーのメリットはどんなところだろうか。
「〝の〟の字テーパーはティップの先端から徐々に曲がっていくアクション。クローラーベイトやI字系のルアーは〝の〟の字テーパーが向いています。先端から綺麗に曲がってくれたほうが、ルアーにブレーキをかけながら巻くことができるからです。そして、ルアーが吸い込まれた時もフッキングがいい。クランクベイトは〝へ〟の字も〝の〟の字も良くて、それは適材適所で自分もまだ最終回答は出てないですね」
― まずはロッドの曲がりを理解することが大事
「“へ”の字」と「“の”の字」の曲がりの様子。「“へ”の字」はティップを硬くすることでアクション入力がしっかりとルアーに伝わる。「“の”の字」は先端から順に曲がってくれることでルアーにブレーキをかけやすいのが特徴。
― 今井さん思い出のトップウォーターロッド
トップ用だけど実はクランクも巻きやすい
「トップウォーター用で、スローテーパー表記なんですが、そこまでスローテーパーではない。ティップが“へ”の字でバットは硬いっていう。“へ”の字テーパーなんだけど、これが実はクランキングにも良くて、それでインスパイアされて作ったのがスワッガーのクランキンロッドです」
ポップR専用設計の「“へ”の字」テーパーロッド
「Mr.ポップR、ゼル・ローランドのシグネチャーモデルで、ずばりポップR用ですね。先端“へ”の字テーパーでジャークベイトも使いやすいですよ。昔のアメリカの使いやすい竿はへの字が多く、やはり本場アメリカは流石だなと思いましたね」
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