フォードにさらなる性能調整でビッグスロットル採用。シモーナ・デ・シルベストロも復帰へ/RSC

 今週末の7月28~30日にシドニー・モータースポーツパークでの第7戦『Beaurepaires Sydney SuperNight』を控えるRSCレプコ・スーパーカー・チャンピオンシップにて、導入初年度となる“Gen3”規定車両のフォード・マスタング・スーパーカーにふたたびの『同等性評価(パリティ・レビュー)』が発動。規約の即時発効で、週末より80mmのビッグスロットル導入が承認された。

 またシーズン終盤の10月5~8日に開催される“祭典”こと、恒例『Repco Bathurst 1000』の2023年大会に向けては、かつて豪州大陸で戦った経験を持つシモーナ・デ・シルベストロの復帰も決定。今季ステップアップカテゴリーのスーパー2で活躍するカイ・アレンとともに、名門ディック・ジョンソン・レーシング(DJR)が走らせるシェルVパワー・レーシングのマスタングをドライブし、ワイルドカード枠でのエントリーが発表されている。

 現地25日の火曜にDJRからアナウンスされたニュースは、現在34歳の彼女にとって2019年以来のオーストラリア・シリーズ復帰となり、今季もポルシェのファクトリー契約ドライバーを務める国際派は、現在のスーパー2でランク2位につけるアレンと最新Gen3規定の98号車をシェアすることになる。

 同じく耐久カップのコドライバー登録が必要なサンダウンと、このマウントパノラマ双方に向け、すでにトリプルエイト・レースエンジニアリングからはクレイグ・ラウンズ/ゼイン・ゴダード組の888号車シボレー・カマロZL1スーパーカーの参戦がアナウンスされているが、それに続く2台目の公式ワイルドカード枠となった98号車は、10月のレース当日に18歳3カ月と12日になるアレンにとって、最高峰クラスへのデビュー戦にも位置付けられる。

「あのバサーストの象徴的なトラックで、ふたたびレースできることに興奮しているし、この素晴らしい機会を与えてくれたDJRとシェルVパワーに感謝したい」と、まずは感謝の言葉を述べたシルベストロ。

「4年間は長過ぎたし、2019年にこの地を離れた時点でこれほど長期間、オーストラリアに旅ができないとは誰が想像したでしょう。それに若く才能あるカイ(・アレン)と組むことも楽しみにしているし、素晴らしいチームになると確信している」

 豪州市場で供給されるオクタン価“98”のプレミアム無鉛燃料にちなんで選択された98号車には、DJRがフルタイムで走らせる2台のマスタングとは異なる、ユニークなカラーリングが適用されるという。

「もちろん、オーストラリアで私のキャリアをずっとサポートしてくれたハーベイ・ノーマンと(代表の)ケイティ・ペイジにも感謝したい。9月にオーストラリアに戻って、この新しいGen3のテストを始めるのが待ち切れないわね」

同じくワイルドカード枠からのデビューを経て、ニッサン陣営のKelly RacingでL33型アルティマを走らせたシルベストロ
「シモーナとの共同運転は間違いなく今年のハイライト。彼女は経験豊富なドライバーなので、彼女から学ぶのが楽しみ」とカイ・アレン
現在34歳のシルベストロにとって2019年以来の豪州復帰となり、アレンと最新Gen3規定の98号車フォード・マスタングをシェアする

■ニッサン時代の最高位は13位「やり残した仕事がある」

 参戦当時にはニッサンのファクトリー活動を担ったケリー・レーシングでL33型ニッサン・アルティマを走らせたスイス出身の彼女だが、今回のワイルドカード参戦に続いて、シリーズへの本格復帰の可能性を尋ねられた際、どんなアイデアにも扉を閉ざさず“Never say never(どんな可能性もあり得る)”のアプローチでいる、と明かした。

「私のキャリアを知っている人は、私がいつも最善の機会があるところに向かおうとすることを知っていると思う」と、ポルシェでのプログラムのかたわら、インディカーへのスポット“復帰”やドイツでADAC GTマスターズにも挑戦したシルベストロ。

「私はいつだって“Never say never(意外とあり得るかも)”のタイプなのよ(笑)、競争力のあるマシンに乗る機会が適切であれば、それはつねに考慮すべきことだと思う。現時点で私はポルシェでも良いポジションにいるけれど、最終的にはレースに勝ちたいし、競争力を持ちたいと思っている。だから、何が起こっても“Never say never”が私の意見よ」

 2015年のフォード・ファルコンFG-Xから数えて、通算6回目のバサースト1000に挑む彼女だが、最高位はニッサン時代の2019年に記録した総合13位となり、今回のDJRからのカメオ出演を「チャンスとしてはこれまででもっとも強力」と評価し、彼女自身にとっても「やり残した仕事がある」と主張した。

「スーパーカーでの3年間を振り返ってみると、各シーズンを通じて自分としてはかなりうまく成長できたと感じていたけれど、私が乗っていたクルマは間違いなく、あるべき場所に到達できる道具ではなかったんだろうと思う」と振り返ったシルベストロ。

「未完の仕事はつねに存在すると思う。勝ちたいし、レースカーに乗っているときに自分ができることを示したいと思うから、これは素晴らしい機会よ。良い結果を得るためにさらに努力して、週末を最高の状態で終えたいと思う。なぜなら、このチームと私たちにはやるべき要素がすべて揃っていると思うから」

 そのDJRを筆頭とするフォード陣営はさらなる同等性評価を受け、第6戦『NTI Townsville 500』を終えた直後から、DJRがホモロゲーション登録担当チームとしてエンジン性能の再調整を実施することに。

 昨季までのマルチではなくシングルスロットルを採用する現行規定下にて、DJRは新しい80mmのスロットルボディをテスト。結果を検証した末に、フォード勢のエンジン仕様書(ESD)の変更がシドニー向けに承認された。

 前戦での空力調整に続き、この週末からエンジンのパフォーマンス向上も果たすマスタングは、この週末シボレー・カマロとともにポニーカー対決時代では初となるナイトレースに挑むこととなる。

今季もポルシェのファクトリー契約ドライバーを務めるシルベストロだが、RSC本格復帰の可能性には”Never say never(どんな可能性もあり得る)”だと含みを持たせる
3年間のレギュラーシーズンでは、トップ10が遠い厳しい戦いを強いられていた
ふたたびの『同等性評価(Parity Review)』規約の即時発効で、週末よりGen3マスタングには80mmのビッグスロットル導入が承認された

© 株式会社三栄