マイナカード問題の影に見えたデータ公開の課題/行政DXは都道府県警統計データに学ぶべし(データアナリスト 渡邉秀成)

マイナンバーカードをめぐるトラブルが続き、7月20日には政府の調査機関「個人情報保護委員会」が立ち入り調査に乗り出す事態に発展しています。各種情報の紐付けの誤り、コンビニエンスストアでの交付で他人の情報が出力される、他人の写真をマイナンバーカードに貼付する等々です。これらのトラブルから、個人情報の流出等の不安からマイナンバーカードを返納する人も出てきています。

マイナンバー問題の背景に見えた行政によるデータ公開の問題点と、選挙の分野にも共通する自治体DXの道筋と好事例について、データアナリストの渡邉秀成氏が徹底解説!行政DXは地味な部分から進めるべきではないか?そして都道府県警統計データに学ぶべきではないか?ということについて具体的な事例で見ていきます。

データ公表は継続的に!コロナ対策でも浮かんでいた問題点

総務省のマイナンバーカード交付状況は毎月12日前後に前月の交付状況についてされていましたが、7月3日時点では2023年5月末時点の交付状況についての情報が掲載されていませんでした(編集部注:現在では、2023年6月末時点での情報が更新されています)。

【参照サイト:総務省公式サイトより「マイナンバーカード交付状況について」】

公開されていないことについての何らかの説明が掲載されていれば、ウェブサイトを継続的に観察している人にとっては、公開が遅れている理由がわかり納得できるのです。

しかしウェブサイト上にはそれらの説明は見当たりません。マイナンバーカードを返納する人が多いために数値が把握しにくくなっているのかもしれません。突然、データ公表がされなくなるとどのような事情があるのかを考えてしまいます。

都道府県が公表するワクチン接種状況データについても同様のことが言えます。

ワクチン接種状況について各都道府県が市区町村別に接種回数別人数を公開していたものが、途中から市区町村別データが非公開とする自治体と、継続的に市区町村別データを公開する自治体とに対応がわかれてしまっています。

総務省のマイナンバーカード交付率データ、都道府県の市区町村別ワクチン接種状況データ等、これら定期的に公開されていたものは継続的に情報が公開されることを望みます。

継続的に情報公開することで官公庁に対する信頼が醸成されますし、公開された情報をもとに国民がそれぞれに分析することも可能になります。そのような状態を作り上げるのも行政DXの目的ではないでしょうか?

また継続的に公開する情報、どの自治体でも同じ内容を記載する情報については、同一テンプレートで処理できるようにして欲しいとも思います。

以前ブログでも取り上げましたが、都道府県、市区町村別に異なる選挙結果の公開方式を総務省が統一フォーマットを作成して、各都道府県、市区町村選挙管理委員会に配布をして、その形式でデータ公開、データ収集する等を行なって欲しいと思います。

>>関連記事:選挙管理委員会のデジタル・トランスフォーメーション(DX)は難しいのか?(データアナリスト・渡邉秀成)

警察機関のデータ公開を見習うべき理由とは?

情報公開の取り組みとして、お手本となるのが、各都道府県警が発表する犯罪発生データです。項目が「罪名/手口/管轄警察署/発生地/市区町村コード/都道府県/市区町村/町丁目/住所/発生年月日/発生時/発生場所/発生場所の詳細/施錠関係/現金被害の有無」で統一されています。

例えば、下記表は富山県警のものです。

犯罪発生状況(富山県オープンデータポータルサイトより)

従って犯罪発生状況等の分析をする際に、データ前処理にかかる時間を最小限にして、分析作業に取り掛かることができます。

このような統一フォーマットを用いた、情報公開を総務省、各選挙管理委員会にもお願いしたいと思います。

統一的なフォーマットでもう一つ整えて欲しいものは、各市区町村ごとに異なることが多い住民票の写し等交付申請書です。誰でも住民票等を取り寄せる機会があると思うのですが、この住民票の写しを申込する際の交付申請書が市区町村ごとにバラバラであることが多いのです。

例えば千葉県内市町村の住民票写し等の交付申請書をウェブサイトで閲覧をしてみてください。同じ形式の交付申請書はほとんどありません。市町村ごとに記入フォームが異なります。

千葉県千葉市と千葉県我孫子市で比較してみます。

千葉市は縦長、我孫子市は横長。
一番最初の各項目が、千葉市は証明が必要な人、我孫子市は窓口に請求する人。
このように自治体が異なるごとに、記入する用紙の向き、記入する内容の順序等が異なります。

このような記入する内容が同じものについては、同じフォームで記入できるようにすれば、住民は記入しやすく、間違いも減らすことができるのではないでしょうか?

マイナンバーカード等で情報の一元化を図り行政の効率化を一気に目指すことよりも、このような身近にある住民票取り寄せ記入用紙等の全市区町村での共通化、選挙データ、統計データフォームの共通化等の統一化を進めていくほうが、結果的には行政効率化がはやく進むものと思います。地道な取り組みこそが国民の信頼を得ることにもつながるのではないでしょうか。

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