城田優の「見たことない顔」、大阪での怪演っぷりに拍手喝采

城田優が演出&主演をつとめるミュージカル『ファントム』が、現在「梅田芸術劇場メインホール」(大阪市北区)で上演中。同じ小説を原作とし、劇団四季の上演などでよく知られている『オペラ座の怪人』とは一味違う、もうひとつの「怪人」の物語に、連日大きな拍手が送られている。

ミュージカル『ファントム』よりファントム役の城田優(右)、クリスティーヌ役の真彩希帆(左)提供:梅田芸術劇場

■ 物語は「青年」にフォーカス、観客は涙

日本では2004年に大沢たかお主演で初演され、城田は2014年に初主演。2019年からは演出もつとめるようになり、これが2度目の2足のわらじとなる。しかも今回は大野拓朗とのWキャストで、ファントムの恋敵となるシャンドン伯まで演じるという、3足目のわらじに挑戦していることも話題だ。

シャンドン伯爵を演じる城田優(提供:梅田芸術劇場)

物語の舞台は、19世紀末のパリ・オペラ座。シャンドン伯の推薦で、オペラ座に出入りできることになった少女・クリスティーヌ(真彩希帆)。その地下に住み、劇場の人々に「ファントム」と恐れられる仮面の青年・エリック(城田/加藤和樹)は、彼女の歌声に衝撃を受ける。エリックはクリスティーヌにレッスンを付けて、オペラ座の歌姫に育てようとするが・・・。

ミュージカル『ファントム』より、劇中シーン(提供:梅田芸術劇場)

『オペラ座の怪人』が、超人的な怪人に人間たちが翻弄されるゴシックホラーだとすると、この『ファントム』は、悲劇的な生まれと特異な容姿ゆえに、孤独のなかで育たざるを得なかった、1人の青年の葛藤に焦点を当てている。エリックがはじめて人を愛したことで生まれる喜びと、それに比例した苦しみがクッキリと浮かび上がるという、ヒューマンドラマの側面が強い舞台だ。

■ 城田優の「意外な一面」が目白押し

その人間くさいファントムを体現するのが、城田優の演技。端正な顔立ち&堂々とした体躯で、ヒーロー然とした役柄がハマる俳優だが、このファントムではだだっ子とか、コミュ障のような言動が多く「え、こんな一面があったの?」とびっくりするだろう。さらには歌唱シーンでの毅然とした姿や、愛ゆえに狂気に走る様など、非常に多彩な顔を見せて、ある意味「城田全部盛り」という状態だ。

醜い姿を生まれ持ったファントム役を熱演する城田優(提供:梅田芸術劇場)

また演出家としても、20年以上国内外の名演出家の演出を、その身に浴びてきただけあって「なにをしたら、このシーンがより劇的になるか」を、熟知しているという印象を受けた。特に今回は、パンデミックの間は禁じられていた、役者が客席に降りる演出を多用。観客たちがまさに「オペラ座」の客席で、この事件を目撃しているような体感を強めていた。

悲しいながらも包み込むような安らぎを感じさせるラスト、そして2~3曲は必ず頭に残るほど、クラシカルだけどキャッチーな楽曲の数々によって、忘れられない観劇体験になるはずの『ファントム』。そして一度見たら、城田とはアプローチが異なっているはずの、加藤和樹のファントムも確認したくなるだろう。

城田優とWキャストでファントム役をつとめる加藤和樹(提供:梅田芸術劇場)

大阪公演は8月7日までで、東京でも公演あり。ほかにも石田ニコル・皆本麻帆(Wキャスト)、岡田浩暉などが出演。当初Wキャストでクリスティーヌ役を務めるはずだったsaraは、全公演の休演が発表されている。チケットはS席1万4000円ほか、当日券は全公演で発売(貸切公演をのぞく)。Wキャストのスケジュールは、公式サイトでご確認を。

取材・文/吉永美和子

ミュージカル『ファントム』

会場:梅田芸術劇場メインホール(大阪市北区茶屋町19-1)
期間:2023年7月22日(土)~8月6日(日)
料金:S席1万4000円、A席9000円、B席5500円

© 株式会社京阪神エルマガジン社