気になる230号車Zのフロントの変化とタイヤ事情「まだ決まったわけではない」松村総監督/ニッサン陣営の2024年事情

 ホンダの2024年の新型車両、シビック・タイプR-GTに注目が集まった岡山国際サーキットでの3メーカー合同テスト。もちろん、ライバルとなる他2メーカーも手をこまねいてシビックを眺めていたわけではない。2024年に向けた初めての車両開発テスト、各陣営がどのようなテーマで取り組んでいるのか。今回はニッサン陣営にフォーカスしてみた。

 ニッサン/ニスモ陣営にとっては、昨年2022年にニッサンZ GT500がデビューしたばかりということもあり、ニッサンZを継続して使用することになる。ただ、今回のメーカーテストでシェイクダウンしたクルマは、現行のニッサンZとはフロントまわりが変わっている。

 ノーズ先端がやや長く伸びたようでボンネット部のダクト部も変わっており、フロントグリルの形状もこれまでの横長のスクエアな長方形から、両サイドを少し絞って小さくなり、複雑な形状となった。どこかで見たことのある形状のようだと調べたところ、6月末に北米日産のホームページで公表されたニッサンZのニスモバージョン、『ニッサンZ NISMO』のフロントマスクに酷似していることが判明した。

「外観はそんなに違っていないんじゃない?」と、まずはフェイントをかけるニスモの松村基宏総監督。いえいえ、ニッサンZ NISMOのデザインにしっかり変わっていましたと伝えると、松村総監督はニヤリと笑みを浮かべて応えた。

「まあ、もうベース車両の方は発表になっているからね。それでも今回はその形状が適応するかどうかのテストをしている段階で、まだ採用が決まったわけではない。フリックボックス、ラテラルダクト含めて、最後、来年の3月の段階で確定するまで暫定のものを付けて、いろいろテストをしていきます」

2023スーパーGT第3戦鈴鹿 MARELLI IMPUL Z(平峰一貴/ベルトラン・バゲット)
『ニッサンZ NISMO』のフロントを採用した2024年型のGT500マシンをシェイクダウンさせたニッサン陣営

 230号車ニッサンの開発車両で今回もうひとつ気になったのは、230号車がブリヂストンタイヤを装着して、ブリヂストンのロゴをつけていたことだ。ニッサン陣営は23号車MOTUL AUTECH Z、そして3号車Niterra MOTUL Zの2台がミシュランタイヤを装着しているが、ミシュランはすでに今季限りでGT500での活動を終えることを発表している。23号車と3号車の来年のタイヤはまだ発表されておらず、どのタイヤメーカーになるのか、さまざまなウワサが飛び交っている状況だ。

 その状況の中、2024年型の新車シェイクダウンテストでブリヂストンを装着していたことから、今回のパッケージは23号車、3号車の2台について2024年への伏線かと読めたが……松村総監督はその推測を明確に否定した。

「今回の新車のテストはたまたま、スタッフの関係でチームインパルとブリヂストンの組み合わせでスタートしているだけで、次の新車のテストでは違うタイヤメーカーになって違うロゴが貼られることになります。230号車の開発車両はどのタイヤメーカーにも対応した共有車両なので、テストごとにステッカーを張り替えて、スタッフの人員構成も変えています。今回はインパルとニスモ開発陣の混合チームで参加しているので、赤い服(ニスモのチームスタッフ)は誰もいません。年間のスタッフの稼働時間を考えてスケジュールを組んでいますので」と、松村総監督。

 実際、今回ステアリングを握ったドライバーもニスモの4人(松田次生、ロニー・クインタレッリ、千代勝正、高星明誠)ではなく、インパルの平峰一貴とベルトラン・バゲットのふたりだった。中身のパッケージとしては、松村総監督の言葉通り、12号車のMARELLI IMPUL Zのままだった。

 では、その体制での今回のテスト、どのような方向性のテストと位置付けているのか。

「とにかく2024年型の新車のシェイクダウンですよね。今回がまったく初めての走行になるので、まあ、初日はきちんとメニューをこなせたと思います」と松村総監督。

 実際、2024年型の230号車ニッサンZ開発車両はテスト初日の午前、午後の両セッションでトップタイムをマーク。シェイクダウンテストでのタイムとはいえ、午後には1分19秒961をマークする速さを見せた。今年の開幕戦岡山での決勝ファステストタイムは1分19秒736で、この時は雨上がりのドライだったとはいえ、開幕戦の4月と今回の真夏のコンディションでは、エンジンパフォーマンスの面で圧倒的に今回の方がタイムが出ずらい状況だということを考慮すると、すでに新車は現行Zと同等以上のパフォーマンスがあることが察せられる。

 「なかなかタイムが上がって来ない時もあったので、そこまで順調ではない」と松村総監督が謙遜するものの、初日から午前、午後と230号車ニッサンZは縁石いっぱいを使いながら、ドライバーが毎周攻めやすそうな特性で走れているのが印象的だった。もちろん、今回の230号車ニッサンZがどのような条件で走っていたのかは外からは知るよしもないが、今の段階では3メーカーの中でもっとも実戦に近い形で走れているクルマであることは間違いなさそうだ。

 もうひとつ、ニッサン陣営としては第3戦鈴鹿で大クラッシュに見舞われた23号車の松田次生の回復具合が気になるところだが、ちょうどこのテストの直前にエントリーリストが発表され、第4戦富士の参戦が明らかになった。

「無事に退院して、古いGT3のマシンを使ってサーキットのスポーツ走行で走って問題なかったとのことなので、次の第4戦富士に選手登録しました。電話では話をしていて、順調に回復できているようで大丈夫とのことです」と松村総監督。

 2024年のニッサンZがニスモバージョンとなるのか否か、そして23号車、3号車の来季のタイヤメーカー、そして次の第4戦富士で復活する松田次生の走りと、今年も来年もニッサン陣営には気になる話題が豊富に続くことになる。

3メーカー合同テストでシェイクダウンされた2024年型のニッサンZ

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