旬を食べよう〜東海地方の伝統野菜〜【 天狗なす(てんぐなす)】愛知県北東部(北設楽郡)

日本列島のほぼ真ん中辺りに位置する東海地方は、古くからモノやヒトの往来が盛んで、豊かな自然と過ごしやすい気候に恵まれていることもあり、野菜づくりが盛んな地でした。

そんな東海地方には、数々の伝統野菜が地産地消されており、野菜本来の「旬」や食文化を教えてくれる貴重な存在として親しまれています。

新城市内の産直店で購入した実物には天狗なすの特徴が書かれた「説明書」が貼られていた

今月は、「あいちの伝統野菜」に選定されている「天狗なす(てんぐなす)」(写真)をフカボリします。

天狗なすの特徴

長さも胴回りも特大サイズの「天狗なす」(定規の単位はミリ)

愛知県北東部の奥三河と呼ばれる地域、特に北設楽郡設楽町内の津具地区を中心に、戦前から栽培されてきた特大サイズのナス。

そのサイズの大きさと、天狗の鼻状の奇形果ができやすいことから、地元に伝わる天狗伝説にちなんで「天狗なす」と名付けられたと伝わっています。

旬は、7月中旬から10月。名古屋市内の市場へも出荷されるようですが、奥三河地域の直売所や道の駅の方が入手しやすいでしょう。

実際に購入した天狗なすを計測してみたら、タテ約24センチ、ヨコ約17センチあり、重さはなんと約750グラムもありました!

大人が持った場合のサイズ感

大人でも、片手で持つとちょっと手に余るほどの大きさ。指にしっかりと力を入れないと、落としてしまいそうです。

ヘタ周りの隆起

購入した天狗なすに付いていた説明書には、奇形果はできやすいが、実際に天狗の鼻状までになるものは少数派で、鼻がないのが一般的とありました。

購入した個体には、天狗の鼻とまではいきませんが、ヘタ周りに少し隆起した部分がありました。

加熱するととろけるような食感

天狗なすは、皮が薄く、果肉がやわらかく、水分を多く含むのが特徴。火が通りやすく、加熱するととろけるような食感が味わえるといわれます。それらを確認すべく、買ってきたものを実際に調理してみました。

1本で普通のナスの4〜5本分に相当するほど大きいので、半分は、普段ナスを調理するときによく作るステーキ(甘味噌のせ)に、残りの半分を「蒸しナス」にしてみました。

「天狗なすのステーキ(甘味噌のせ)」※味噌の上の黄色いものは練りガラシ

厚さ6センチほどの輪切りにし、縦に半分に切った状態のものを、多めの油をひいたフライパンで焼きました。

所要時間は4分ほど。焼き上がりはとてもやわらかく、箸を入れると、中から「ジュワー」と水分があふれ出しました。

天狗なすのステーキに箸を入れたところ

口に含むと、みずみずしさと、少しの歯応えが心地よく、あっという間に平らげてしまいました。

「蒸した天狗なすの醤油おかか和え」

販売店の人に「自分たちは蒸して食べることが多い」と聞いたので、2〜3センチの厚さに食べやすく切ったナスを蒸してみました。

こちらも所要時間(蒸し時間)は4分弱。箸でつまむと跡がついてしまうほどやわらかく、噛めば中から水分が溢れてきました。

暑さで食欲のないときでも、蒸し天狗なすを冷やして濃いめの味のタレをかければ、パクパクいけそうです。

昔からナスには体を冷やす働きがあるといわれます。また最近では、産学官連携の研究により、ナスに多く含まれるコリンエステルという成分に、血圧の改善や気分をよくする効果があるということがわかってきたそうです。

暑い夏にナスを食べることは、身体にとって良いことであるといえそうですね。

連日猛暑が続き、体調管理が難しい時期ですが、おいしくて健康にも良い旬の「天狗なす」を食べて、厳しい東海地方の夏を乗り切りましょう。

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