日本最北の地、北海道で36年ぶりに開催されているインターハイ。西の果てから乗り込んでいる長崎県勢にとっては、移動費などの経費が悩ましい問題となっている。直行の航空便がないため、羽田、伊丹空港を経由すると割高になり、人気観光地の夏休みは宿代も高騰中。公的補助金の見直しも追い打ちを掛け、出場校からは「生徒の活躍がうれしい半面、お金がかかって仕方ない」といった切実な声が上がっている。
▽かさむ経費
道内で比較的アクセスがいい札幌市。ここで開催される競技の出場校を例に挙げると、飛行機代は事前に団体割引で予約して片道1人4万円、宿舎は一般的なビジネスホテルで1泊1万3000円。約1週間の滞在で必要経費は選手1人当たり20万円に上る。四国インターハイに出場した昨夏の倍近くで、学校予算でまかなえずに生徒負担も発生した。
インターハイに出場する選手は原則、大会本部に設置される「合同配宿センター」を仲介して宿舎を手配してもらうのが必須となっている。「満室でどこも予約できない」などのトラブルを回避できる利点がある一方、費用がかさみがちになるという側面も。予算に応じて宿のランクを8段階から選べるようになっているものの、今回は事実上、ほとんどが1泊1万円オーバー。昨年から1~2割ほど値上がりしており、頭を抱える学校も多い。
全体の経費が膨らみ、今年は県高体連も補助費の見直しを迫られた。例年は実際にかかった費用の一定割合を支給してきたが、今年は予算が足りずに宿泊数などに応じて定額配分という形式に変更。結果、各校が受け取る額は目減りする見込みという。
▽工夫凝らす
厳しい懐事情の中、さまざまな工夫を凝らす学校も出てきた。
6月の県高総体で最多6本の優勝旗を獲得した瓊浦。バスケットボール男子やバドミントン男子、同好会になったばかりのボクシングなどの選手計58人がインターハイ出場を決めた。学校側が北海道遠征にかかる費用を見積もると、実に約1500万円まで膨れ上がった。
こうした中、立ち上がったのが同校同窓会だ。莫大(ばくだい)な経費を補おうと開幕前にクラウドファンディングを立ち上げ、200万円を目標に支援を呼びかけている。同窓会長の武田龍𠮷さんは「今まさに、北海道で瓊浦の選手たちが頑張っている最中。エールと愛の寄付金をお願いしたい」と話した。
既に支援の輪が広がったケースも。テニス女子団体で14年ぶりの出場を決めた長崎東には、14年前に出場したOGや男子部OB、関係者などから県高総体後に続々と寄付が集まった。そのかいがあり、メンバーから外れた3人を含めた部員8人全員で北海道に行けることになったという。8月1日の本番を前に、田中正和監督は「選手や保護者も、もちろん私も、さまざまな方の温かさを実感して晴れ舞台に臨める」と感謝している。