【漫画】精神科療養病棟の患者はなぜ『孤児の歌』が好きなのか?謎めく展開に「じんわり感動」 作者語る

音楽療法士として活動する主人公は、山の中にある精神科療養病棟で、いつもしかめっ面の中年男性に出会う。歌唱活動の中で、その中年男性だけが毎回、“孤児の歌”として知られる『浜千鳥』の唱歌を希望する。なぜ、男性はこの歌を好きになったのか。2人の長きにわたる交流の中で、この歌が持つ意味を理解できるようになっていく──『浜千鳥』。

『浜千鳥』-01

音楽療法士のかたわら、SNSなどで漫画作品などを発表する、かときちどんぐりさん(@katokich)。読者から感動や共感を呼ぶ、不思議な味わいの漫画作品を手掛けていることは、以前当サイトで紹介した。今回は、そうした作品の中でも、「じんわりと感動した」「不思議な話だけど最後まで一気に読んでしまった」と好評を博し、SNSで10万以上のインプレッションを獲得した作品『浜千鳥』を取り上げ、本作を描いた経緯や思いについて、かときちさんに話を聞いた。

患者に長らく愛された歌

リアリティーある作品にも関わらず、明確にフィクションであることが示されている本作。かときちさんによれば、「個人情報の取扱いには最大限の注意を払いフィクションとして全て創作しました」と語る中で、なぜ、この作品を描いた理由は何だったのだろうか。かときちさんが語る。

『浜千鳥』-02

「30年余り精神科医療の現場で仕事しているので、漫画に出てくるキャラクターは一人のモデルではなく漠然とした総体として描きました。ただ、実際『浜千鳥』という歌は患者さんに長らく愛されており、いつか題材にしたいなと思っていたのです」

『浜千鳥』-03

作中では、中年男性がこの歌を愛した理由について、主人公が「心の安らぎになっていたことは確か」と推測していく。かときちさん自身は、この歌について「私も大好きな歌です」という。

『浜千鳥』-04

「みなしごの歌なのですが、浮かぶ情景が三陸海岸の美しい夜の海なので、私自身も大好きです。あと、岩手県釜石市に『浜千鳥』という地酒があり、本当においしいので全国の皆さんに是非お勧めしたいです!(笑)」

『浜千鳥』-05

かときちさんは、中年男性の心を癒やした音楽が持つ力について、次のような話をしてくれた。

『浜千鳥』-06

「音楽は、幼い頃からの体験が思い出として歌にふくまれやすいので、認知症を患った方でも歌を刺激として感じると、情動が働き、さまざまな周辺症状が和らぐ作用があります。個人体験により、どの歌が良いのかは異なるので、音楽療法士は膨大な量の音楽を知り、演奏できるように訓練されています」

『浜千鳥』-07

こうした独特な作風を得意とするかときちさんは、今月7月28日(金)より、初の商業連載として『推し嫁ルンバ』(ダ・ヴィンチWeb)がスタートする。タイトルからして異彩を放つこの作品は、どのようなジャンルで、どういったストーリー展開になるのか。こちらも見逃せない!

<かときちどんぐりさんInformation>
▶Twitter /
https://onl.sc/yH6gC2f

(よろず~ニュース特約・橋本未来)

© 株式会社神戸新聞社