王者3回、優勝19回、PP24回。引退を発表した立川祐路のスーパーGTでの記録と名レース

 7月28日に2023年シーズン終了をもってスーパーGTドライバーを引退することを発表した立川祐路。1975年に神奈川県で生まれた立川は、1993年に地方カート選手権でチャンピオンを獲得すると、翌年にはオイルメーカーであるエルフのスカラシップを受け、フランスのフォーミュラルノー・キャンパスに参戦し2勝を挙げる。

 さらに1995年のフォーミュラトヨタ西日本王者となった立川は、その後全日本F3選手権、フォーミュラ・ニッポンへとステップアップを果たし、1999年からスーパーGTの前身である全日本GT選手権(JGTC)にCERUMOからレギュラー参戦。GTでは2001年、2005年、2013年にチャンピオンを獲得し、19回の優勝回数と24回の歴代最多ポールポジション記録を保持している。

 ここでは、名実ともにトップドライバーである立川が2005年からシリーズが開始されたスーパーGTで繰り広げた名勝負やベストレースを編集部が独断でセレクト、その活躍を紹介したい。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

2005年第6戦富士

 まず紹介するのは立川が2度目のスーパーGT王者に輝いた2005年から、第6戦富士をピックアップ。この年は富士スピードウェイが全面改修され、2023年現在までのコースレイアウトに変更された。“こけら落とし”となった5月の第2戦をポール・トゥ・ウインで制していた立川/高木虎之介組のZENTセルモスープラは、この第6戦で松田次生が駆るEPSON NSXとの約20周に渡る激しいトップ争いを制して優勝を飾った。

2005年のスーパーGT第6戦富士、EPSON NSXを操る松田次生とZENT セルモ スープラの立川祐路は、19周に渡ってトップ争いを繰り広げた
2005年スーパーGT第6戦富士 EPSON NSXとの首位争いを制して優勝を飾った高木虎之介と立川祐路(ZENTセルモスープラ)

2005年第8戦鈴鹿

 そして2005年シーズンからはもう一戦、シーズン最終戦となる第8戦鈴鹿を紹介したい。自身2度目のチャンピオンを獲得するべく鈴鹿に乗り込んだ立川は、見事に予選で当時のコースレコードを叩き出してポールポジションを獲得する。しかし、翌日の決勝日は大雨となりレース距離が短縮されるという波乱のなか、背後に迫るザナヴィ・ニスモZの追撃を振り切りトップフィニッシュ。立川/高木組のZENTセルモスープラがシーズン3勝を挙げ、スーパーGT元年、そして80スープラ最後の王者に輝いた。

2005年スーパーGT第8戦鈴鹿 GT500クラスチャンピオンを獲得したZENTセルモスープラ(立川祐路/高木虎之介)
2005年スーパーGT第8戦鈴鹿 GT500クラスのシリーズ表彰式

2009年第2戦鈴鹿

 2005年のチャンピオン獲得以降も、シーズン中には必ず1勝を挙げる活躍を披露していた立川だったが、王者には届かない状況が続いていた。この2009年も例外ではなく、結果的にランキング10位でシーズンを終えることに。しかし、第2戦鈴鹿でみせた追い上げが記憶に残る。

 このレースを2番グリッドからスタートしたZENT CERUMO SC430は、スタートを努めたリチャード・ライアンがポジションをキープしたままピットに入るも作業に時間がかかり、IMPULカルソニックGT-R、RAYBRIG NSX、PETRONAS TOM’S SC430の先行を許してしまう。しかし立川は諦めることなくプッシュを開始、IMPULとRAYBRIGをかわすと、同じくレクサスのエースであるPETRONAS脇阪寿一とのトップ争いを展開。残り4周のカシオトライアングルで脇阪に並びかけた立川が大逆転優勝を飾った。

2009年スーパーGT第2戦鈴鹿 ZENT CERUMO SC430(立川祐路/リチャード・ライアン)
2009年スーパーGT第2戦鈴鹿 GT500クラスの表彰式

2012年第1戦岡山

 2012年開幕戦の岡山で2年半ぶりのポールポジションを獲得した立川/平手晃平組のZENT CERUMO SC430。決勝では平手が第1スティントで逃げ、立川が第2スティントを担当するという戦略を採った。その立川の前に立ちはだかったのが、当時ホンダの若手として注目を集めていた山本尚貴だ。しかし立川もトヨタのエースとしての意地をみせ山本をオーバーテイクしてトップ奪還を果たす。

 だが残り2周、山本がHSV-010が得意とするダブルヘアピンふたつめの加速を活かして立川を追い抜き再び首位に。これで勝負あったかと思われたが、立川はファイナルラップのヘアピンで山本の一瞬の隙を見逃さず、マシンをインにねじ込んで再逆転。そのまま自身13勝目のトップチェッカーを受けた。

2012年スーパーGT第1戦岡山 トップ争いを繰り広げるZENT CERUMO SC430とRAYBRIG HSV-010
2012年スーパーGT第1戦岡山 トップ争いを制してGT500クラス優勝を飾った立川祐路/平手晃平(ZENT CERUMO SC430)

2013年第8戦もてぎ

 2013年の最終戦として開催された第8戦もてぎ。シリーズチャンピオンへの権利を残す立川/平手組ZENT CERUMO SC430は4番グリッドから決勝レースに挑んだ。スタートでは平手が3番手にポジションを上げると、4周目には2番手に順位を上げる。ZENT CERUMO SC430はその後立川にドライバーを交代するも、ペースが上がらずタイトルを争うKEIHIN HSV-010にオーバーテイクされてしまう。しかし立川は3番手を守りきり自身3度目のタイトルを獲得、チームタイトルも勝ち取り、レクサスSC430のラストイヤーを有終の美で終えた。

2013年スーパーGT第8戦もてぎ 3位フィニッシュでGT500タイトルを決めたZENT CERUMO SC430
2013年スーパーGT GT500クラス王者に輝いた立川祐路と平手晃平(ZENT CERUMO SC430)

2015年第3戦タイ

 立川祐路vs本山哲。JGTCやスーパーGTで繰り広げられてきた日本を代表するトップドライバー同士のバトルは、舞台を海外に変えても行われた。タイのチャン・インターナショナル・サーキットで開催された2015年第3戦で立川が駆るZENT CERUMO RC Fはポールポジションからレースをリードしていた。

 しかし、徐々に本山がドライブするS Road MOLA GT-Rが立川の背後に迫り、テール・トゥ・ノーズのバトルが繰り広げられる。まずは25周目の最終コーナーで本山が立川のインを差してトップに立つが、今度は29周目の最終コーナーで同じように立川が抜き返すという“ドッグファイト”状態のバトルは、両者がピットに入るまで続けられ、多くのファンを魅了した。

2015年スーパーGT第3戦タイ GT500ポールポジションを喜ぶ立川祐路と石浦宏明(ZENT CERUMO RC F)
2015年スーパーGT第3戦タイのGT500クラス決勝スタート

2016年第5戦鈴鹿1000km

 レクサスRC F同士の優勝争いとなった2016年第6戦の鈴鹿1000km。立川/石浦宏明組のZENT CERUMO RC Fは序盤に首位に立ちレースをリードしていたものの、終盤のピットストップでau TOM’S RC Fに逆転されてしまう。そんななか雨が降り始め、ZENT RC Fの立川がauキャシディの背後に迫りオーバーテイク。その後も両車のバトルは続いたが、最終的にZENT RC Fが逃げ切りでのシーズン初優勝を果たした。

2016年スーパーGT第5戦鈴鹿1000kmを制した立川祐路/高木虎之介監督/石浦宏明(ZENT CERUMO RC F)
2016年スーパーGT第5戦鈴鹿1000km ZENT CERUMO RC F(立川祐路/石浦宏明)

2019年第2戦富士

 そしてGT通算19勝を誇る立川にとって、2023年現在最後の優勝となっているのが、富士スピードウェイで行われた2019年第2戦だ。500kmで争われたゴールデンウイーク恒例の一戦では、ZENT CERUMO LC500を駆る立川が7番グリッドから追い上げを披露。レース中盤に降り始めた雨も関係なしとばかりに、トップをいくMOTUL AUTECH GT-Rをオーバーテイク。“富士マイスター”の異名を持つ立川にとって2年ぶり、通算19勝目を獲得した。

2019年スーパーGT第2戦富士 ZENT CERUMO LC500(立川祐路/石浦宏明)
2019年スーパーGT第2戦富士を制した立川祐路と石浦宏明(ZENT CERUMO LC500)

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 ここまで紹介した上記レース以外でも、多くの記録・記憶に残るレースを繰り広げた立川。2020年第4戦もてぎではポールポジションを獲得して最多記録を伸ばし、2021年第6戦オートポリスでは2023年第3戦終了時点での最後の表彰台を獲得している。立川の2022年までのスーパーGTレース戦績は次のとおりだ。

■立川祐路のレース戦績

立川祐路 全日本GT選手権、スーパーGTでのレース戦績

1999年:全日本GT選手権 GT500クラスシリーズ14位(#38 FK/マッシモセルモスープラ)
2000年:全日本GT選手権 GT500クラスシリーズ5位、1勝(#38 FK/マッシモセルモスープラ)
2001年:全日本GT選手権 GT500クラスシリーズチャンピオン(#38 auセルモスープラ)
2002年:全日本GT選手権 GT500クラスシリーズ3位、2勝(#1 auセルモスープラ)
2003年:全日本GT選手権 GT500クラスシリーズ9位(#38 auセルモスープラ)
2004年:全日本GT選手権 GT500クラスシリーズ5位、1勝(#38 auセルモスープラ)
2005年:スーパーGT GT500クラスシリーズチャンピオン、3勝(#38 ZENTセルモスープラ)
2006年:スーパーGT GT500クラスシリーズ5位、1勝(#38 ZENTセルモSC)
2007年:スーパーGT GT500クラスシリーズ7位、1勝(#38 ZENT CERUMO SC430)
2008年:スーパーGT GT500クラスシリーズ2位、1勝(#38 ZENT CERUMO SC430)
2009年:スーパーGT GT500クラスシリーズ10位、1勝(#38 ZENT CERUMO SC430)
2010年:スーパーGT GT500クラスシリーズ9位(#38 ZENT CERUMO SC430)
2011年:スーパーGT GT500クラスシリーズ6位、1勝(#38 ZENT CERUMO SC430)
2012年:スーパーGT GT500クラスシリーズ2位、2勝(#38 ZENT CERUMO SC430)
2013年:スーパーGT GT500クラスシリーズチャンピオン、1勝(#38 ZENT CERUMO SC430)
2014年:スーパーGT GT500クラスシリーズ8位、1勝(#1 ZENT CERUMO SC430)
2015年:スーパーGT GT500クラスシリーズ4位(#38 ZENT CERUMO RC F)
2016年:スーパーGT GT500クラスシリーズ6位、1勝(#38 ZENT CERUMO RC F)
2017年:スーパーGT GT500クラスシリーズ4位、1勝(#38 ZENT CERUMO LC500)
2018年:スーパーGT GT500クラスシリーズ4位(#38 ZENT CERUMO LC500)
2019年:スーパーGT GT500クラスシリーズ4位、1勝(#38 ZENT CERUMO LC500)
2020年:スーパーGT GT500クラスシリーズ10位(#38 ZENT GR Supra)
2021年:スーパーGT GT500クラスシリーズ12位(#38 ZENT CERUMO GR Supra)
2022年:スーパーGT GT500クラスシリーズ13位(#38 ZENT CERUMO GR Supra)

2023スーパーGT第3戦鈴鹿 ZENT CERUMO GR Supra
2023スーパーGT第3戦鈴鹿 立川祐路と石浦宏明

© 株式会社三栄