帰省シーズンを前に土産の定番「東京ばな奈」も 8月・9月は「ガツン、とみかん」「柿の種」も値上げ

~主要飲食料品メーカー200社の「価格改定・値上げ」調査~

飲食料品の値上げが止まらない。今年に入り主要メーカー200社の値上げは、出荷分だけで3万797品にのぼる。年初は、練り物や缶詰、ハム・ソーセージなどの加工食品に加え、醤油、たれ類など、日々の食卓に欠かせない商品が中心だった。8月以降は、アイスクリームや土産用の焼き菓子などの値上げ表明も相次いでいる。
学校が夏休みに入り、本格的な帰省シーズンを迎えるが、食卓に馴染みの食品に加え、アイスキャンディーなどの氷菓や菓子類も続々と値上げされ、家計にはさらなる負担増が襲いかかっている。

東京商工リサーチ(TSR)は国内の主要飲食料品メーカー200社を対象に、2023年1月からの出荷・納品分で価格改定を公表した商品を調査した。
200社のうち、2023年1月以降の出荷・納品分の値上げ(見込みを含む)を公表したのは163社(構成比81.5%)で、対象品目は3万797品に達する。前回調査(6月、2万9,372品)から1カ月で1,425品増えた。円安や再び上昇気配が続くエネルギー価格により、輸入食材を使用するメーカーは、コスト高に耐え切れず値上げや内容量の削減を余儀なくされている。

8月の値上げは、27社・938品で、5月(756品)以来、3カ月ぶりに1,000品を下回ったが、ベストセラー商品の「北海道あずきバー」「メロンボール」(井村屋)や「柿の種」(亀田製菓、内容量変更)、東京土産の定番「東京ばな奈(シリーズ)」(グレープストーン)など、人気商品の価格が見直される。アイスクリーム類や菓子は、9月もすでに複数のメーカーで値上げを表明しており、真夏の風物詩ともいえる季節の味にも影響が広がってきた。

※ 本調査は、国内の主な飲食料品メーカー200社を対象に、2023年1月1日以降出荷・納品分で値上げを表明した商品を開示資料等を基に集計した。本調査の実施は2023年6月に続き7回目。1回の値上げで複数商品の値上げが行われる場合の値上げ幅は、平均値を 集計した。
※ 値上げ、価格改定は、2023年7月26日公表分まで。

商品イメージ(TSR撮影)

【分類別品目数】「調味料」がトップ

値上げが公表された3万797品の分類別は、最多は調味料(8,654品、構成比28.1%)で、約3割を占めた。
調味料は、醤油や味噌のほか、真夏に欠かせない麺つゆ、秋冬の定番である鍋つゆ類も軒並み値上げされ、品目数は毎月増加している。だし原料の煮干し(カタクチイワシ)、カツオ節、サバ節は昨秋以来、原材料不足が長引いている。
次いで、加工食品(7,824品、同25.4%)は、缶詰やインスタントラーメンなどの即席麺、パックごはんに加え、今春に値上げが相次いだハム・ソーセージ類の再値上げを9月以降、大手が公表している。

【値上げ理由別】「原材料」がトップで9割超

値上げ対象の3万797品の理由別は、「原材料」高騰が2万8,798品(構成比93.5%)でトップ。次いで、「資源・燃料」が2万5,320品(同82.2%)、「物流」が2万346品(同66.0%)、資材・包材が1万9,188品(同62.3%)と続いた。
構成比が前回から上昇したのは、「原材料」(93.1%→93.5%)、「資源・燃料」(82.1%→82.2%)、「物流」(65.3%→66.0%)だった。原材料価格に加え、再び高騰に転じた油価や電気代などの光熱費、さらに物流コストは燃料上昇の影響を大きく受ける。
こうしたコストアップ要因が重なり、メーカー側は値上げに踏み切らざるを得ない状況に陥っている。今夏の資源・燃料価格の上昇が製造コストに反映し、秋以降は再値上げされる商品が増えて“値上げの秋”を迎える公算が大きい。


主要飲食料品メーカー200社が公表した2023年1月以降の出荷・納品分の価格改定は、3万797品に達した。月別では、ピークの2月から4月は値上げを実施した社数が3カ月連続で月間40社を超え、品目数も同4,000品超で推移した。6月、7月も2カ月連続で45社、3,500品を超え、2度目のヤマ場を迎えた。8月は3カ月ぶりに1,000品を下回るが、10月は再び3,932品と4,000品を突破する勢いだ。

分類別では、ハム・ソーセージなどは、今年2回目の値上げを予定するメーカーが相次ぐ。大手でも伊藤ハム・米久、プリマハム、丸大食品は4月に家庭用商品の価格改定を行ったが、10月に再び値上げを予定している。原材料をはじめ、輸送コストも上昇し、その他の大手でも追随の動きが強まっている。

気象庁は7月24日、「早期天候情報」を発表し、7月末から異例の猛暑を警告した。一方、夏の定番であるアイスクリーム・氷菓も値上げ公表が相次ぎ、8月は「北海道あずきバー」「メロンボール」(井村屋)、9月には「ガツン、とみかん」(赤城乳業)が予定される。
今春、すでに「ピノ」(森永乳業)やハーゲンダッツジャパンのミニカップ価格が改定されており、身近なアイスクリーム類が段々と高嶺の花になりつつある。

異例の猛暑の下で光熱費の上昇など、例年以上に家計への負担が増しているが、今後も食品メーカー、消費者の双方とも消耗戦の厳しい環境が続く。原材料高騰や円安、エネルギー高騰の長期化などの懸念材料は多く、夏以降も値上げ品目数は高水準で推移しそうだ。

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