カラスと目が合ったら“見続けろ”カラス被害はなぜ起こる?カラスの習性&ゴミ被害を防ぐ方法を紹介

都市部のカラス被害が深刻化したのは2000年代初頭からといわれています。

筆者の住む地域でも、昨今はカラスによるゴミ被害が後を絶ちません。

ゴミ出しの日にカラスの鳴き声が聞こえると、「またか……」と憂うつになります。

「カラスはなぜあんなにゴミを漁るのだろう」「どうやったらゴミ被害を減らせるのだろう」……、本記事ではこれらの疑問を解決すべく、カラスの実態や習性を調べていきたいと思います。

カラスってどんな鳥?基本情報をチェック

童謡にも歌われ、日本では古くから親しまれているカラス。

しかしそもそも、カラスとはどのような鳥なのでしょうか?

基本情報を見ていきましょう。

頻繁に目にするカラスは2種類

カラスとは「カラス科」の鳥の総称であり、固有の鳥を指すものではありません。

日本には10種類のカラス科の鳥が生息しているといわれており、生態や姿形は微妙に異なります。

色も必ずしも黒とは限らず、オナガやカケスのように明るめのカラーの鳥もいるんですよ!

私たちがいわゆる「カラス」として認識しているのは、「ハシブトガラス」「ハシボソガラス」の2種類です。

一目で見分けるのは困難ですが、それぞれ違いはあります。

ハシブトガラス

その名のとおり、くちばしが太く湾曲したカラスです。

最も特徴的なのは、その額。

丸くこんもりしていて、厚みがあります。

「カアカア」と澄んだ鳴き声が聞こえたら、おそらくハシブトガラスです。

以下でスペックをチェックしてみましょう。

体長:約56cm

移動方法:ぴょんぴょん跳ねる

分布エリア:アジアの東南から極東

食性:雑食

好物:肉類・樹木の種子

ゴミ被害を引き起こしているのは、主にハシブトガラスです。

本来は森林に暮らすカラスですが、都市部の構造を上手に利用しており、今や都市部が生活圏となっています。

ハシボソガラス

こちらは、くちばしが細く真っ直ぐなカラスです。

ハシブトガラスのような額の厚みはなく、「ガアガア」とダミ声気味に鳴きます。

体長:約50cm

移動方法:2本足を交互に出して歩く

分布エリア:主にユーラシア大陸

食性:雑食

好物:昆虫類

ハシボソガラスはゴミを狙うことはまれなものの、農作物を食べ荒らすことで知られています。

農業を営む人からはハシブトガラスと同様に忌避されます。

参考:自治体担当者のためのカラス対策マニュアル|環境省自然環境局

視力がよく嗅覚はほぼない

カラスの視力は、人間の5倍もあるのだとか!

目の構造はズームレンズに似ており、遙か遠くの物もはっきりと見えます。

高い建物や木の上からでも、ゴミ袋の生ゴミを見逃すことはありません。

また人間が赤・緑・青の3色しか認識できないのに対し、カラスは「紫外線」を含む4色を認識可能です。

人間にとっては7色に見える虹も、カラスの目を通すと14色に見えるのだそうですよ!

ずば抜けた視力を持つ反面、カラスは臭いには鈍感です。

カラスの嗅球(臭いの処理に関わる脳神経)は非常に小さい上、鼻に伸びる嗅神経も狭く細いといわれています。

嗅覚はほぼないに等しく、「イヤな臭いで撃退する」などの方法は効果がありません。

とにかく賢い!

カラスが厄介といわれるのは、ものすごく賢いため。

「鳥頭」などという言葉がありますが、カラスは記憶力がよい鳥です。

100カ所以上にエサを隠しても、きちんと覚えているのだそうですよ!

またカラスは、人の顔を覚えることも得意です。

万が一人間から危害を加えられた場合は、その人間の顔を覚えてグループ間で情報を共有します。

つまり1羽のカラスに嫌われると、グループのカラス全てに嫌われる可能性もあるのです。

カラスが賢い理由については、「体に対する脳の比重が大きいため」などといわれます。

カラスの賢さを体と脳の比重を数値化した「脳化指数」で比較してみましょう。

カラス:0.16

鶏:0.03

ネコ:0.12

イヌ:0.14

※文献等により数値が異なります

カラスの脳化指数はイヌ・ネコよりも高く、知能も高いと推察できます。

同じ鳥類である鶏などと比較すると、その差は歴然です。

カラスについて気になる5つのQ&A

ここからは、カラスについての気になる疑問をチェックしてみましょう。

今回ご紹介する気になる疑問は以下の5つです。

①カラスが人を襲うことがあるのはなぜ?

②黄色が嫌いなの?

③カラスは夜だと目が見えない?

④なぜ街中にカラスがいるの?

⑤なぜ「不吉」といわれるの?

カラスについての噂や疑問を検証することで、カラスへの理解も深まります。

それではチェックしていきましょう。

①カラスが人を襲うことがあるのはなぜ?

前述のとおり、カラスは非常に賢い鳥です。

カラスを追い払おうとしたり追いかけ回したりすると、顔を覚えられて攻撃されることがあるかもしれません。

特に3~7月頃は、カラスの繁殖期。

巣でヒナを育てているカラスは非常に神経質になっています。

うっかり巣のそばに近づいてしまうと、威嚇されたり襲われたりすることもあるでしょう。

カラスは木の上・電柱の上に巣を作る傾向があるため、高い木や電柱の近くを通るときは要注意です。

襲われるかも!というときはカラスから身を隠そう

「カラスの巣があるかも!でもそばを通らなければならない!」というときは、傘をさしましょう。

頭部がカラスに見つからなければ、襲われにくくなるのだそうです。

またうっかりカラスと目が合ってしまったら、逸らしてはいけません。

目を逸らすと、カラスに攻撃のスキを与えてしまいます。

目線をしっかりと合わせたまま、ゆっくり距離を取るようにしてくださいね。

万が一カラスに攻撃されてしまった場合は、ひとまず病院に行きましょう。

ケガそのものはたいしたことがなくても、雑菌などが入り込んでいるかもしれません。

②黄色が嫌いなの?

「カラスは黄色が嫌い」などとしばしばいわれていますが、全くの迷信です。

カラスについてはさまざまな実験が行われていますが、特定の色を忌避する傾向は見られないというのが定説となっています。

「カラスは黄色が嫌い」といわれる根拠は、カラスを忌避するために使われ始めたゴミネットが黄色かったためだといわれています。

このネットは紫外線カット機能が付いていて、カラスの色彩感覚を混乱させたのだとか。

一時的にカラスが寄り付かなくなったことから、「カラスは黄色が嫌い」と認知されるようになりました。

③カラスは夜だと目が見えない?

暗いところで視力が落ちることを「鳥目」などと言いますが、これは鶏限定の話です。

カラスを含む一般的な鳥は、夜でも視力が落ちることはありません。

基本的にカラスは、夜の暗がりでも昼間と同様に動けます。

一説によると、夜のカラスの視力は夜行性のフクロウと同じくらいよいのだとか。

「暗いうちにゴミを出せば、カラスに見つからないだろう」などと考えるのは大間違いです。

④なぜ街中にカラスがいるの?

カラスが街で暮らすようになったのは、ゴミを漁ればエサが手に入るためです。

野山の環境が破壊され、カラスに限らず野生動物はエサを得るのが難しくなってきました。

都市部で暮らせばエサに困ることはなく、悠々自適に暮らせます。

また都市部には、カラスの天敵であるタカやフクロウといった動物がいません。

神社などには大きな森もあり、巣を作る場所を探すのも簡単です。

巣作りに必要な道具も手に入れやすく、都市部での暮らしはカラスにとって非常に快適といえます。

【東京】カラス対策により生息数は減少傾向

東京都ではカラスの数が増えすぎたことによるカラス被害が大きな問題となりました。

2000年代初頭では、東京23区から50km圏内には約8万羽ものカラスが生息していたといわれています。

東京都は2001年よりカラス対策に本腰を入れ始め、現在カラスの生息数は減少傾向です。

2001年に都内に約36,000羽いたカラスは、2022年時点では約8,700羽となっています。

参考:生息数等の推移(取組状況)|東京都環境局

⑤なぜ「不吉」といわれるの?

カラスが「不吉」などといわれるのは、「群れる習性」の影響が大きいのではと考えられます。

カラスは「集団ねぐら」を形成する習性があり、秋から冬にかけてはさまざまな群れが集まって巨大な群れとなります。

群れは数百羽から数千羽、多いところでは1万羽にもなることがあるのだそうです!

真っ黒なカラスが群れて空を飛び回る様子は、不気味ですし、怖いですよね。

「黒」という色も縁起がよくないとされ、忌避されるようになりました。

日本神話では「神の使い」

一方で日本では、カラスを神聖な鳥とみなす傾向もあります。

『古事記』・『日本書紀』にも登場する神武天皇の東征では、八咫烏(やたがらす)が熊野から大和までを道案内したとされています。

熊野にある「熊野那智大社」では、八咫烏が導きの神様・交通安全の神様として祀られているんですよ。

よくよく考えてみれば、日本サッカー協会のシンボルも真っ黒な八咫烏ですよね。

日本では、カラスについて悪いイメージばかりではありません。

カラスがゴミを漁る! 被害に遭わないようにするにはどうしたらいい?

カラスの被害で困るのは、ゴミを漁られてしまうこと。

周辺にゴミが散らかって目も当てられない状態となります。

カラスのゴミ被害に遭わないようにするには、どのように対策すればよいのでしょうか?

とにかくゴミの中身が見えないようにする!

カラスは目で食べ物があるか・ないかを見分けます。

ゴミを出すときは新聞紙などで覆い、中が見えないようにしましょう。

生ゴミが外から見える状態だと、カラスのターゲットにされてしまいます。

ネットでゴミを隠すのは有益ですが、すでにカラスはネットの下にゴミがあることを知っていることがほとんど。

ネットをただかぶせただけだと、ネットをめくってゴミを漁られてしまいます。

ゴミを出した後は、ネットをきちんと中まで入れ込むこと。

ネットの端をブロックなどで押さえておくと安心です。

鷹匠を呼んでみる方法も

カラスは賢く大きな鳥ですが、空の王者・タカにはかないません。

カラスをどうにか排除したいと考えるなら、鷹匠(たかじょう)を雇うのも1つの方法です。

鷹匠はタカを使ってカラスを追い払うため、道具や薬剤は必要ありません。

騒音もなく、エコ&環境にやさしい駆除方法です。

カラスは、本能的に猛禽類を恐れるのだとか。

ゴミ出しエリアを「危険」と認識させられれば、カラス被害は収まるかもしれません。

まとめ

カラスへの被害対策が難しいのは、カラスが賢いことや「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」で守られていることなどが理由です。 ゴミ被害に遭った人の中には、キラキラした物をぶら下げたり忌避剤を使ったりした人もいるかもしれません。 しかしいずれのケースも、カラスが驚くのは最初だけです。脅しだと見破られれば、ゴミ被害は再発します。 ゴミ出しについては一人ひとりがゴミ出しのルールを守ること・中身が見えないようにするなどをして対応するしかありません。 あまりにもカラス被害がひどい・騒音・襲撃のトラブルがあったなどの場合は、自治体や専門業者に相談するのも1つの方法です。 文/カワサキカオリ

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