「現場は一発勝負」事件の真相解明へ“ウソをつかない”証拠と向き合う鑑識捜査員

事件・事故の現場から証拠を採取して分析する「鑑識」。その仕事を取材すると緻密な作業と向き合い続ける、捜査員たちの強い信念がありました。

事件・事故の真相解明に欠かせない証拠

事件・事故が発生すると、現場に残された証拠を採取し科学的に調べることで、その状況や犯人などの行動を推定します。

そんな証拠採取の最前線に立つのが「鑑識捜査員」です。

住宅で窃盗事件が発生したと通報…

一報が入ると現場へと向かいます。

事件は、住宅に空き巣が入り、タンスから現金を奪われたという想定。犯人は、カギをかけ忘れた窓から侵入したようです。

室内に犯人の痕跡はあるのでしょうか?鑑識捜査員が採取に取り掛かります。

鑑識捜査員
「犯人が入ってくる時に、もしかしたら靴のまま入ってきている可能性がありますので」

被害者に丁寧に説明を行いながら、まずは「足跡」の採取です。

犯人の行動を想像しながら、畳の上に黒いシートを広げ、静電気を放射する機器をかざします。裏返すと、塵やほこりが集まった「足形」が浮かび上がりました。

チャンスは「一度きり」証拠採取の難しさ

しかし、指導官から指摘が…

県警本部刑事部 鑑識課 西岡成太警部補
「もしかしたら、ここも踏んでいるかもしれない。『そのまま、本当に下に降りているか?』というところも気を付けないと」

机の上の足跡を見落としていたようです。

どこに証拠が残されているのか?現場ごとに異なる難しさがあります。

県警本部刑事部 鑑識課 西岡成太警部補
「1つも同じ事件はないので、その場その場で臨機応変に対応しなければならない。現場は1度きりなので一発勝負」

今治署刑事課鑑識係 吉川拓海 巡査部長
「どんな現場でも、必ず犯人の痕跡を取れる鑑識係員を目指していきたい」

指紋採取には様々な方法が

続いては「指紋」の採取です。

窓から侵入したと見られる犯人。特殊な粉をふりかけ、払うと、指紋がはっきり現れました。

こちらは砂鉄を含んだ粉です。ペン型の磁石でふりかけます。

採取した証拠は「鑑定」で判断

採取された証拠は「鑑定」に回されます。足跡は装置にセットし、下から光を当てて、模様や大きさを見ます。劣化しないよう画像(写真)にして、容疑者が逮捕されていたらその靴底と一致するか確認するなど、裏付けも進めます。

県警本部刑事部鑑識課 秋山仁美 足痕跡課長補佐
「結局、自分たちの目が頼りになる」

履物のデータベースと照合作業を行い、犯人の履物を割り出すことも可能です。さらに、別の現場でも同じ足跡が発見されたら、余罪の可能性も捜査します。

県警本部刑事部鑑識課 秋山仁美 足痕跡課長補佐
「鑑定する立場としては、どの立場にもおもねることなく資料と真摯に向き合うことが大事」

一方の指紋。これら2種類の証拠は、現場から採取されたものと、住人など関係者から採ったものです。

ルーペを使って、現場の指紋と関係者のものと一つ一つ突き合わせながら、犯人の可能性があるものを絞っていきます。

難しそうな作業を見て気になった記者が、指紋鑑定について率直な感想を聞いてみると…

県警本部刑事部鑑識課 山本莉可子係長
「気の遠くなる作業です」

鑑定のポイントは、指紋の中で線が止まっているところや枝分かれしているところ。「特徴点」と呼ばれます。

県警本部刑事部鑑識課 山本莉可子係長
「自分の鑑定結果が事件の解決に結びついて、犯人を特定できた時はとてもやりがいを感じますし、それが難しい指紋ですごく長時間をかけて鑑定したときは、なお喜びを感じます」

証拠はウソをつかない-。事件現場に残されたそれらは、採取されることで真実を語るのです。

松山東署刑事第一課鑑識係 青木志帆巡査部長
「被害者にとって事件や事故は、一生に一度あるかないかの出来事なので、その方々の悲しい気持ち、残念な気持ちを晴らしたいという気持ちで取り組んでいます」

鑑識の捜査員たちは事件の真相解明のため、ひとつひとつの証拠とまっすぐ向き合う強い信念がありました。

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