干潟の機能応用 汚水処理システム ウエスコ普及に力、微生物で浄化

ウエスコが大阪府豊中市に設置した人工湿地。水位を変えながら生活排水を浄化している

 総合建設コンサルタントのウエスコ(岡山市北区島田本町)は、海水を自然に浄化する干潟の機能を応用した汚水処理システムの普及に力を入れている。人工の湿地に生活排水などを流し、微生物の働きで汚濁物質を分解する手法。管理にかかる労力が少なく、維持費が安いのが特長という。国内や都市化が進むベトナムで売り込みを図っている。

 システムで活用する人工湿地は、遮水した池の底に砂利や木炭を敷き詰めて「ろ過層」をつくり、周囲に湿地性植物を植栽。微生物や水辺のミミズに、流し込んだ汚水を分解してもらう仕組み。自動サイフォン装置を使って、潮の干満のように湿地内の水位を数時間ごとに変えることで“生態系”に刺激を与え、水の浄化を加速させている。

 ウエスコは約10年前から、日本大工学部の中野和典教授(環境生態工学)の協力を得て、実用化に向けた研究に着手した。4人家族の生活排水なら1畳ほどの人工湿地で浄化できることを確認。電気や薬品、フィルターなどを使用しないため、環境への負荷が少ない自然浄化システムとして注目を集めている。

 これまでに大阪府豊中市と神戸市の計3カ所にシステムを設置。豊中市の約750平方メートルの湿地では、水の汚れを示す窒素濃度が大幅に改善するとともに、絶滅が危惧される昆虫・コガムシも定着するようになったという。今後は、水源が乏しい地域の公衆トイレなどに設置。汚水を浄化しながら循環させる手法をPRしていく方針だ。

 経済発展などに伴い、水質汚染が深刻化しているベトナムでは2022年、国際協力機構(JICA)の支援事業に選ばれた。同国での市場調査や政府関係者への説明会を実施。環境に配慮したシステムとして開発業者らの関心は高く、テーマパークやホテルに設ける池などへの活用が検討されているという。

 ウエスコは「人工湿地は生物の力だけで水を浄化でき、緑化推進にもつながる。持続可能な環境保全の手法としてアピールしていきたい」としている。

 同社はウエスコホールディングス(岡山市北区島田本町)の中核会社。1970年設立、資本金1億円、売上高114億2393万円(22年7月期)、従業員約670人(パートを含む)。

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