【部活どうなる(11)教員が受け皿に】中学バスケ顧問が「ファミリー」創設 部活でもクラブでもない姿とは

幅広い世代が参加する「バスケファミリー TRUST」。バスケットを通じて新しい部活動の在り方を模索する斎藤穣さん(中央)

 2月初旬の週末の午後6時半すぎ、埼玉県北本市立北本東中学校の体育館で、ハイテンポな音楽が鳴り響き、選手を鼓舞する横断幕が掲げられた。参加者が集まり、バスケットボールをつく音が大きくなる。練習開始直前には40人を超えた。

 主宰しているのは北本東中バスケットボール部の顧問、斎藤穣教諭(40)。「楽しいと思える場所、わくわくできる空間をつくりたい」と意気込む。

 斎藤さんは一昨年の夏、「絶対に夢を実現するバスケファミリー TRUST(トラスト)」を創設した。きっかけはコロナ禍、生徒や部員とのコミュニケーションを増やすためだった。目指す組織は部活動と切り離しながらも、クラブチームとは異なる「ファミリー」という形だ。「誰でも参加できる。一度会ったら家族のように付き合う。来るのも帰るのも自由。なるべくお金は取りたくない」と理想を語る。

 月2回、週末の午後7~9時、北本東中の体育館でバスケを楽しむ。年齢制限はない。部員に加え、地域のミニバスケに通う小学生や近隣自治体の中学生、OB、愛好家らが集まる。メンバーは口コミや交流サイト(SNS)で増えた。

 2時間の練習時間は前後半に分ける。前半は小学5年生以下の子どもたちを対象に。小6以上の選手が指導者だ。1時間後、一度練習を切り、年少の児童が帰宅すると、後半は小6以上、経験者が互いに技術を磨く。指導も高度になる。

 部活動の地域移行で、課題は指導者不足や受け皿がないこと。解決策の一つとして挙がるのは部活に積極的な教員の兼職兼業だ。指導力や専門性があり、子どもや保護者からの信頼も厚い。施設利用など自治体や学校との調整も得意だ。

 「ファミリー」では、ことあるごとに参加者同士が声をかけ、ハイタッチをする。斎藤さんは将来的には部活動の地域移行の受け皿にしたいと考えている。信じることを意味する「TRUST」を名前にした理由を尋ねると、こう返ってきた。

 「伝えること、コミュニケーションは、信じることから始まるのです」

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