埼玉中小企業家同友会【設立50周年・地域に生きる(15)】リリーフ・落合裕樹社長、足場の魅力をSNSで発信

軽量の足場を手にするリリーフの落合裕樹社長。「職人の負担を減らし、トラックの過積載も防げる」と利点をあげる

 埼玉県内の中小企業経営者らが加盟する埼玉中小企業家同友会(会員約千人)が今秋、設立50周年を迎える。経営を学ぶ「社長の学校」として1974年に設立。コロナ対策に加え、原材料費やエネルギー価格の高騰を受けながら、地域の課題解決をビジネス化し、「ウィズ・コロナ」を見据えた新事業を展開するなど個性的な企業が多く集まる。人を生かし地域に生きる地元企業16社を紹介する。

■リリーフ(東京都日の出町)落合裕樹社長

 てきぱきと足場を組み立てる職人。抜き打ちで現場を視察する社長。職場での団らん。足場工事会社リリーフのSNS上には日常を切り取った動画や写真が溢れている。使うのはインスタグラム、ユーチューブ、TikTok(ティックトック)、フェイスブック等々。「うちにはソーシャルメディア事業部があるんです」。落合裕樹社長(41)が言う。

 きっかけは求人だった。社長によると建設業界は人材不足が課題。特に足場工事は職人が足りずに受注を逃すことも多い。同社もホームページや民間の求人媒体で募集してきたが、経費を何十万円かけても電話は全く鳴らなかった。

 そこで2年前に立ち上げたのが同事業部。仕事の様子や日常の出来事を投稿すると同時に「人材募集」を呼びかけた。効果はてきめん。昨年は107人から応募があり、これまでに秋田、熊本、宮崎など全国から職人が入社した。

 「質は求めない。回数をどれだけ発信できるか」と落合社長。2020年からユーチューブ224本、インスタ1030件を投稿。「業者に頼むと会社の色が出ない」と従業員が撮影し、職場のリアルを映し出す。同事業部は人事担当も兼ね、求職者と連絡を取ったり、面接に同席したり、SNSと人事一体で優秀な人材を集め会社を活性化させた。

 3年前には2億円を投じて軽量の足場材を導入。軽さをSNSでアピールし、興味を持った職人が応募してきた。丁寧な仕事を動画で伝えることで顧客集めにもつながる。

 所在地は東京都日の出町だが、17年に知人の紹介で埼玉同友会に入会。SNS事業が評判を呼び、会合で報告する機会も増えた。「足場業界から日本を元気にしたい。俺もやってみたいという人が増えるといいかな」。同社のSNSを見ればその秘密が分かる。

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