【株式投資】初心者は知っておこう!「株主優待銘柄」購入時の3大注意点

筆者が株式投資を始めるきっかけとなったのは、「株主優待制度」のお陰でした。

配当金や株式自体の値上がりだけでなく、各企業の優待券や各地の特産品がもらえるこの制度は、投資をこれから始める方にぜひ知っていただきたいものです。

今回は「株主優待制度」の楽しみ方と、銘柄選びについて紹介します。

「株主優待制度」とは?

「新NISA」の開始まで1年。日本政府からの「金融所得倍増」の掛け声もあり、
「なんだかよくわからないけど、そろそろ投資を始めてみようかな?」と、考え始めた方も多いのではないでしょうか。

筆者は現在、日本の個別株を数十銘柄保有していますが、そのうちの6割程度は「株主優待制度」がある銘柄で、初めて買った株式も、ほぼ「株主優待」が目当てでした。

その後も優待銘柄を中心に買い進め、毎年多くの優待券や商品を頂き、多くの銘柄は購入後の株価も堅調です。(株主優待につられて購入したものの、経営が悪化して損をしてしまった銘柄もあります)

株主優待を絶対視して投資をすることはおすすめできませんが、経験上「これから投資を始めようかどうしようか?」と悩まれている方の背中を押すためには、株主優待制度は大変有効であると思っています。

ところで「株主優待制度」は、じつは日本以外の国ではほとんど見られないということはご存じでしょうか。

例えば、外食チェーン「くら寿司」は、日本のほかアメリカでも株式を上場しています。日本ではくら寿司(2695)の株式を100株以上保有する方は、年に一度2500円分の割引券がもらえるのですが、アメリカ市場NASDAQに上場している「くら寿司USA」(KRUS)の株主には、そのようなサービスは受けられません。

「でも、もしかすると海外でも株主優待制度を行っている企業はあるのではないか?」と思い調べてみたのですが、少なくとも米国ではこのような制度は皆無のようです。

その代わり、米国株式は全体として配当金支払いを重視していると言われますので、「商品券などを優待でもらうより、そのぶん現金(配当金)を積み増ししてくれよ!」とお考えの方は、日米両方の市場に上場している株を買う場合は米国市場で買ったほうが良いかもしれません。

しかし、皆さんはせっかく日本に住んでいるのですから、ある種日本独特の文化ともいえる「株主優待」も、しっかり楽しんでいただきたいと思っています。

株主優待の楽しみ方

「株主優待」が大好きな投資家の一人に、元プロ将棋棋士の桐谷広人さんという方がいらっしゃいます。投資家界隈では有名人ですので、ご存じの方もいるのではないでしょうか。

リーマンショックで大損してしまった時期は「生活費のすべてを株主優待でまかなっていた」とおっしゃるほどの、「優待ガチ勢」です。

その桐谷さんがおっしゃっていた言葉で、とても印象に残っているものがあります。

それは

「(桐谷さんが大損したことのある)信用取引は“猛獣狩り”」
「優待株という種を植え、収穫を得るのは“農耕生活”」

というものです。

一気に大儲けを狙えるが、大損する危険もあるバクチのような株取引ではなく、「優待銘柄」を多種類、長期保有してゆったりと身構え、株価の上昇・下落に一喜一憂せずに、年に数回届く優待を楽しむ。

これは投資初心者にとって非常に有益で、とっつきやすい心構えだと感じますし、なにより古来から「農耕民族」である日本人にとっては、大変納得感のある考え方ではないかなと思います。

もちろん、これだけが株式投資の楽しみ方ではありませんが、このような考え方・視点も持つことによって、皆さんの投資生活に一つのスパイスが加わるのではないでしょうか。

「株主優待銘柄」購入の注意点

もちろん、優待銘柄であれば何を買ってもお得というわけではありません。

前述のとおり、筆者も優待制度につられて購入したある株式銘柄で大失敗をしたことがあります。その企業は経営の不調のため、株式を購入した時点からまもなく株価が大きく下落し、おまけに頼みの優待制度も廃止となってしまいました。

皆さんはこのような失敗を繰り返さないよう、以下の3点にぜひ気を付けて、株式優待銘柄を選んでいただきたいと思います。

優待があまりにも高利回りでないこと(見た目、お得過ぎないこと)

例えば一年間にもらえる優待券の額面価値が、その株式を買うのにかかったお金の5%を超えている(利回り年5%以上)状態であれば、一般的にかなり危ない傾向にあると判断できます。また、株主優待制度は充実しているのに、配当金が変に少ない、または全く出ていない。という状況も非常に危ういです。

経営状況が悪いのに、異常にお得な株主優待があるおかげで、何とか株価が維持できている。という銘柄は、探せば数多くあるはずです。そのような銘柄が仮に経営危機に陥った場合、株主優待制度の廃止はかなりの可能性で起こり、その結果大きく株価が下落するということは身をもって経験していることもあり、実際に起きます。

やや逆説的ですが、良い「優待銘柄」を探すには、「優待制度がなくても、その銘柄を買いたいか?」と、自分に問いかけるのが良いかもしれません。

目の前のお得すぎる優待制度に、目くらまし状態になっていないか?これを、読者の皆さんには常々意識していただきたいです。

経営の状況、これまでの株価の推移を慎重に見ること

株式を買う方にとっては当たり前かもしれませんが、改めて指摘させていただきます。特に「経営不安から株価が下落したが優待制度は維持したため、相対的に優待券の利回りが上昇した」という状況の株式銘柄は、超・要注意です。

例えば、年間100円分の優待をもらうために1万円分の株式を買うのが必要である株式銘柄の優待利回りは「1%」ですね。この株式が仮に半額まで値下がりした場合、年間100円分の優待をもらうために必要な株式の購入額は5000円となり、優待利回りは「2%」に跳ね上がります。

このように、株価が不調・下落傾向の株式は、「優待利回りが優秀」になりがちなのです。

長期投資の目線で株式を買う際は鉄則とも言われますが、「上がっている株を買う」ことこそが、優待銘柄狙いでも大切です。

自分の家庭で確実に消費(自家消費)できる優待をもらうこと

特に優待制度が、その企業でのみ使える金券・割引券などであるときに意識していただきたい項目です。

「自分で使わなくても、優待券は金券ショップで換金するからいいよ」という方もいるかもしれません。しかしそれでも、「優待券はすべて、確実に自家消費すること」をおすすめいたします。

何より、優待券は金券ショップに持ち込んだ時の換金率が非常に低い場合が多く、「優待利回り」が激減するパターンが多いです。

それよりは確実に自家消費し、株主優待制度をフルに、本来の形で満喫する、言い換えれば、『できれば日常的に使用するお店で、そのお店を応援するつもりで株式を買い、株主優待も余さず利用する』本来、会社側もそのような観点で「株主優待制度」を設けているはずですから、このような使い方が最も健全かと思います。

株式投資を始めるのは怖いものですが、贔屓にしているお店や企業を応援するつもりで株式を最低単位購入し、じっくりと株主優待を楽しむ形でなら、ハードルはかなり低くなるのではないでしょうか。

この記事がきっかけとなり、株式投資に対して「やってみようかな…」と前向きにとらえて頂ければ幸いです。

【執筆者プロフィール】 山田 圭佑(KYお金と仕事の相談所 所長)

キッズ・マネー・ステーション認定講師、国家資格キャリアコンサルタント、ファイナシャルプンナー技能士2級・AFP、琉球古典音楽 野村流伝統音楽協会 歌三線 師範、八重山古典民謡保存会 歌三線 教師

東京都出身。大学入学と同時に沖縄県へ移住。
大学卒業後、沖縄県庁にて18年間奉職した後にキャリアチェンジ。
現在は若年者に向けて就職支援サービスを行う企業のサラリーマンとして勤務するかたわら、フリーランスのキャリアコンサルタント・ファイナンシャルプランナー・歌三線師範として幅広く活動。2022年7月に「KYお金と仕事の相談所」を開設。所長を務めている。

(ハピママ*/ キッズ・マネー・ステーション)

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