フジロック '23 ヘッドライナー【フー・ファイターズ】オルタナ以降の米ロック王道!  フジ グリーンステージヘッドライナーにフー・ファイターズ登場!

最愛のバンドメンバーと母の死を乗り越えたデイヴ・グロール

2022年3月25日、フー・ファイターズのドラマー、テイラー・ホーキンスが亡くなった。

2022年8月17日、フー・ファイターズのボーカル、ギター、デイヴ・グロールの母、ヴァージニア・グロールが亡くなった。

デイヴ・グロールは最愛のバンドメンバーと母を立て続けて亡くしたのだ。

そして、2023年6月2日、フー・ファイターズは11枚目のアルバム『バット・ヒア・ウィ・アー』を発表した。

普通に考えると最愛の人を立て続けて亡くした直後に作られたアルバムなので、悲痛な作品になると思われるが、本作では力強くキャッチーな相変わらずのフー・ファイターズ節が貫かれている。 ただし、そこで歌われる内容は喪失感に向き合った内容も目立つのだが、ただただ、悲しみに打ちひしがれているわけではない。悲しみに向き合いながらも、そこから前を向こうとする力強さも同時に歌われており、演奏もそうした力強いサウンドが鳴らされている。

カート・コバーンの死から約1年でロックシーンの最前線に帰還

思い返せば、1994年4月5日、デイヴ・グロールは最愛のバンドメイトであるカート・コバーンを亡くしている。カートの死によって、ニルヴァーナは消滅したが、1995年7月4日にはフー・ファイターズとしてのデビューアルバムを発表している。

カートの死から約1年でフー・ファイターズとして再びロックシーンの最前線に帰還したことからも分かる通り、デイヴ・グロールという人は、悲しみに打ちひしがれても前を向き、その悲しみを力強さに変換していくポジティブな心を持っているように感じられる。

そんな人間性はフー・ファイターズの音楽にもよく現れており、センチメンタルでエモーショナルな楽曲を力強い演奏で聴かせるド直球で分かりやすいサウンドだ。パンクスピリットとハードロックのドライブ感が共存しており、そんなところはオルタナ以降のアメリカンロックの王道サウンドと言えるだろう。また、サウンドだけではなく、デイヴのヴォーカルも繊細さと力強さを上手く使い分け、感情の起伏をわかりやすく伝えている。

フー・ファイターズの最大の魅力とは?

こうして書いていると、あまりにも真っ当すぎるロックバンドであまり個性がないような書きっぷりになってしまうのだが、フー・ファイターズの最大の魅力はエモーショナルな切なさと力強さがとんでもなく高いレベルで同居しており、最終的にはポップに分かりやすく表現されているところだ。

涙が出そうなくらいセンチメンタルなメロディーの曲もあるし、明るく楽しい曲もある。一方ではモッシュピットで大暴れしたくなるような曲もある。また、そうした要素が1曲の中で同時に鳴っている曲もたくさんあり、それこそがフー・ファイターズの真骨頂と言えるだろう。

そして、本作『バット・ヒア・ウィ・アー』は最愛のバンドメンバーと母を亡くした悲しみとそこから立ち直ろうとする力強さの同居が今までのキャリアの中でも極めて分かりやすく、そして、メリハリあるさじ加減で表現されており、そのエモーションと熱量はキャリアハイと言えるほどの圧倒的なバランスだ。

堂々たるフジロックフェスティバル’23のヘッドライナー

さて、フー・ファイターズは、『でも、俺たちはここまでたどり着いた(バット・ヒア・ウィ・アー)』というアルバムタイトルどおりに悲しみを乗り越えた先の景色を表現した傑作アルバムを作り上げた。そして、傑作アルバムを手土産にこの夏、苗場スキー場にやって来る。そう、今年のフジロックにヘッドライナーとして登場するのだ!

最新作の充実度から察するにライブでも過去最大級のエモーションと熱量を爆発させてくれることは間違いなさそうな勢いだ。

そして、デイヴ・グロールは今年54歳になった。50代半ばのアーティストだと円熟味や渋さを表現の核にしている場合が多いが、デイヴは今でも前を向き、時には攻撃的なサウンドを作り出す。その姿はこれっぽっちも渋くない。だからといって、無理して若づくりしてトンガっている感じでもなく、至って自然体でトンガっているところがメッチャカッコイイ!

現在、51歳の自分は、デイヴ・グロールみたいな自然体でトンガっているおっさんになれたら最高だと思う。本作『バット・ヒア・ウィ・アー』を聴いて、「デイヴ・グロールみたいになりてー!」って痛感した。

カタリベ: 岡田 ヒロシ

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