【コラム】公安調査庁が「日本共産党」を対象にする違和感

 日本維新の会の馬場伸幸代表は7月23日、ネット番組で「日本共産党は日本から無くなったらいい政党」と語り、「立憲民主党は何の役にも立たない」と発言した。

 これには「公党の代表なのに民主主義の基本の基も分かっていない」と呆れる声もあるが、馬場氏は「謝罪、撤回の気は全くない」とし、共産党について馬場氏は「公安調査庁から破防法(破壊活動防止法)の調査団体に指定されている。危険な政党と、政府としてみているということだ」と自身の主張の根拠にもしたそうな発言もしている。

 そもそも、1961年に「武装闘争の否定こそが61年日本共産党綱領確立の出発点だった」とする共産党を、60年以上経た今も「国益や国民の安全・安心を確保する」「外交・安全保障、公共の安全にとって深刻かつ重大な脅威となる情報の収集・分析」の対象にする「正当性」「妥当性」「合理性」がどこにあるのか、記者の1人として、驚きと違和感を持ってしまう。筆者は党員でも、特別な支持者でもない。

 ただ公安調査庁が発行する「2023年版『内外情勢の回顧と展望』(2023年1月)」の国内情勢では(1)オウム真理教(2)過激派(3)共産党(4)右翼団体など、の4ジャンルに分けて概要を伝えていることに驚く。公安が対象にすべきは今の国民感覚からすれば「旧統一教会」と関連団体の動きではないのか。

 日本共産党は「国政政党」であり、21年10月の衆院選(比例代表)での得票数は416万6076票。投票者の7.25%の国民が支持していることになる。選挙によって選ばれた国会議員は衆議院議員10人、参議院議員11人。

 加えて、野党の中で最も鋭く政府に対して国会で「チェック機能」を果たしている政党の一つといえよう。

 「桜を見る会」「森友学園問題」(近畿財務局内では安倍事案と呼ばれていた)「加計学園疑惑」「Dappi」「政治家とカネにまつわる問題」。党機関誌「赤旗」のスクープ記事は多い。その意味では政府からは無くなってほしい政党の一つかもしれない。

 内外情勢の回顧と展望は共産党について「故安倍晋三国葬儀や世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と岸田政権の閣僚との関係などについて追及を続けた」「防衛政策では、いわゆる『反撃能力』について、『戦争する自衛隊に変えようとするものにほかならない』などと批判した」と記述。

 国政政党として党の立ち位置からみて、あるいは憲法9条遵守の立ち位置からの批判は当然。そうした公党の意見や疑問に答えることが国民全体の理解を深めることにつながるし、政府の暴走を修正できることにもつながる。民主主義の土壌醸成には欠かせないことだ。

 現在の日本共産党を「オウム真理教」や「過激派」「右翼団体」と同列の対象にしなければ「危ない」と恐怖を感じる人が何人いるのだろう。維新の馬場氏はそう感じる1人なのかもしれないが。公安調査庁に聞かせて頂きたいものだ。

 菅義偉前総理は総理当時「現在においても破防法に基づく調査対象団体」と質問主意書で答弁している。公安が調べた結果は政府関係機関に提供されるわけだから、当然、共産党の動向を自民党の政府としては知りたいだろう。

 「危険な政党であると、政府としてみているということだ」(馬場氏)が「危険な」の意味合いがどうも違うような気もしないか。自民党政権が続く限り共産党が公安の対象から外れることはないようだが、「破壊活動」「暴力革命」などを視野にする調査は国民感覚からかなり乖離した対応で、共産党の政策に賛同し、選挙に投票してきた400万人超の国民に失礼としか言いようがない。

 そろそろ、見直すべき時期にあるのではないか。対象にし続けるのであれば、国民が納得のいく根拠、資料を国会に提示し、説明する責任と義務が公安調査庁、政府側にあるだろう。国税を使い調査しているのだから。「日本共産党」を対象にする違和感払しょくをお願いしたい。(編集担当:森高龍二)

公安調査庁が発行する「2023年版『内外情勢の回顧と展望』(2023年1月)」の国内情勢では(1)オウム真理教(2)過激派(3)共産党(4)右翼団体など、の4ジャンルに分けて概要を伝えている

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