社説:立候補年齢 引き下げへ与野党で議論を

 若い世代の問題提起に真摯(しんし)に耳を傾けたい。

 選挙で18歳から投票できるのに、立候補が認められる年齢は25歳や30歳のまま公選法が改められないのは憲法に違反するとして、19~25歳の男女6人が被選挙権年齢の引き下げを求めて東京地裁に提訴した。

 若者の声を政治に生かすため、年齢引き下げを求める意見はかねて根強い。訴訟は国会の怠慢に対する異議申し立てとも言えよう。

 被選挙権は国会議員などの選挙に立候補し当選人となれる資格で、公選法はその年齢を衆院議員、市区町村長、地方議員は25歳以上、参院議員と都道府県知事は30歳以上と定めている。

 2016年の改正法施行で投票できる年齢は18歳に引き下げられたが、被選挙権の年齢は戦後の法制定後、70年余り一度も見直されていない。若い世代の政治参加は制限されたままだ。

 原告の6人は東京都や鹿児島県などの大学生や団体代表で、いずれも4月の統一地方選挙に立候補を届け出たものの、被選挙権年齢に達していないとして受理されなかったという。

 国民主権や選挙の平等などを定めた憲法に違反していると主張し、国に対して次回選挙で立候補できる地位の確認や損害賠償などを求めている。

 原告側は「若者は経験値が劣ると年齢で判断するのは視野が狭すぎないか」などと訴えており、選挙制度の現状に疑問を抱く若者らは少なくないのではなかろうか。

 確かに国民の代表として負託を受ける首長や議員は、それにふさわしい知識や経験、人格が望まれよう。それゆえ被選挙権は選挙権より年齢が高く定められているとされてきた。

 国立国会図書館によると、議会下院の被選挙権年齢は英国やフランス、ドイツなどが18歳。韓国も21年に国会議員などの被選挙権年齢を25歳から18歳に引き下げ、高校生も立候補可能となった。世界を見渡せば、日本のように25歳以上としているのは少数派となっている。

 成人年齢と同じく、18歳に達したら投票できる今日、若い世代の政治参加への壁となっている立候補年齢は放置できない。

 立憲民主党が昨年5月、被選挙権年齢をそれぞれ7歳ずつ引き下げる法案を衆院に提出したが、議論は進まなかった。

 ただ、地方議員のなり手不足を解消する狙いもあって、直後の参院選では与野党を問わず多くの政党が公約で被選挙権年齢の引き下げに言及していた。

 現職にとってライバルを増やしかねないため、長年棚上げされてきた年齢制限の見直しだが、機は熟しつつある。

 提訴を機に、国会は議論を急ぎ、選挙への立候補を通して若者が積極的に政治参画できる道を広げるべきだ。若い担い手を育て、新たな発想を政治に反映させることにもつながろう。

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