親子でアート楽しもう 岡山の美術館や博物館 多彩な展示

 夏休み、子どもと一緒にどこに行こう―。岡山県内の美術館や博物館では、親子で楽しめるよう工夫を凝らした展示が行われている。最先端のデジタル技術を駆使したり、展示品の表情から多彩な感情を読みとらせたり、目の錯覚を利用するトリックアートを生かした作品もある。酷暑でも涼しい館内で、学びながら親子で交流する貴重な機会になりそうだ。

 岡山市北区下石井の杜(もり)の街グレースでは、画家フィンセント・ファン・ゴッホ(1853~90年)の絵画を映像として展示する「親愛なる友フィンセント~動くゴッホ展」(山陽新聞社など主催)を開催中だ。コンピューターグラフィックスで動きや立体感を持たせ、特に巨大スクリーンに映した風景画は迫力たっぷり。雲は流れ星々はきらめき、鮮烈な色彩と大胆な筆運びに圧倒される。人物画もまばたきし、かすかにほほ笑むなどまるで映画「ハリー・ポッター」の魔法の世界のよう。

 並ぶのは、ハリウッドで活躍するデジタルアートスタジオによって命を吹き込まれた動く絵24点。ゴッホが南仏に滞在したときの絵「アルルの寝室」を立体作品にした展示では、奥の窓に名作が風景のように次々と映し出される。また、ゴッホのカラー作品860点を一挙に鑑賞できるスライドショーもある。同展運営事務局の井上佳穂さんは「国内ではまだ珍しい展示。ゴッホ作品を理解するための新たなアプローチを親子で体感してほしい」と話している。

 林原美術館(同市北区丸の内)で開かれている「一瞬をキリトル―表情の向こう側―」は、堅苦しい美術論ではなく、自分が美術を見たときの素直な感想を大切にすることをテーマにしている。喜怒哀楽の感情が伝わる能・狂言面や、ひょうきんな顔だが何を考えているかわからない置物など、内心を探り、家族で話し合いたくなる46点が並ぶ。

 遊女の踏み台になった閻魔(えんま)と、美男子に髪を手入れしてもらう奪衣婆(だつえば)を描いた河鍋暁斎(かわなべきょうさい)の「閻魔・奪衣婆図」には、地獄を取り仕切る2人がなぜこんなありさまに…と考えを巡らせずにはいられない。

 会場では作品のイメージや感想を「ひと言フレーズ」で募集。槌田祐枝学芸員は「クイズを解くようにアートを読み解く楽しみを与えてくれる。子どもの美術館デビューにもおすすめです」と言う。

 瀬戸内市立美術館(同市牛窓町牛窓)では「印象派とトリックアート展」を開催。「見て、触って、写真を撮って遊べる」ユニークな体験・参加型展示で、セザンヌやドガら印象派巨匠の代表作をモチーフにした16点が並ぶ。最初に目にする「揺れる美術館」は、一見普通の静止画のようだが実は近くのものが遠くに見える逆遠近法により、角度で景色が変化。まるで揺れ動いているように感じさせる。モネの「散歩、日傘をさす女性」では貴婦人と並んで作品の一部になれ、ゴーギャンの「アヴェ・マリア、マリア礼賛」では、描き込まれたブランコに“座って”記念撮影。

 岡山シティミュージアム(岡山市北区駅元町)で開催中の「ティラノサウルス展~T.rex 驚異の肉食恐竜」(山陽新聞社など主催)は、ティラノサウルスを中心に全身復元骨格や実物化石など約40点を展示。巨大な化石やロボットに子どもたちの目はくぎ付けだ。

 倉敷市立自然史博物館(同市中央)は開館40周年特別展「秘蔵お宝展」を開く。100万点余りの標本から新種や突然変異個体などの希少種化石・標本など約600点を厳選。“唯一”の黒化したモンシロチョウ標本、同館“最古”の植物標本、“超高品位”光竜鉱山の金鉱石といった、子どもの心をくすぐるような解説を付けて公開している。

 新見美術館(新見市西方)は「宮西達也の世界 ミラクルワールド絵本展」を開催。「おまえうまそうだな」「おとうさんはウルトラマン」など人気作を手掛けた宮西達也さん(66)=静岡県=の原画やスケッチなど紹介する。

 参加型では招き猫美術館(岡山市北区金山寺)が「招き猫美術館でたのしい夏休み」を展開。絵付けによるオリジナル招き猫作り体験がある。

「親愛なる友フィンセント~動くゴッホ展」で、アルルの寝室を立体作品にした展示
「印象派とトリックアート展」でブランコに座ったように写真を撮る家族連れ

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