エコで新鮮、生協流農業 参入が拡大、地域密着の強み生かす

ソーラーパネルの下でピーマンを栽培するコープこうべの子会社の圃場(ほじょう)(神戸市で)

生活協同組合(生協)による農業参入が広がっている。農業生産を担う法人を立ち上げ、組合員の要望が高まる環境配慮や新鮮な地元産を売りにした農産物を充実させる。耕作放棄地の解消や担い手確保など、1次産業側だけでは解決が困難な課題にも協同組合として取り組む。

国内最大級の生協、コープこうべ(神戸市)は7月、農業事業を担う子会社を設立し新規参入した。三木市内13ヘクタールで小松菜やトマトを作る。店舗から出る生ごみを堆肥にして使うなどし、化学肥料や化学農薬をできるだけ減らして栽培する。

環境や労働安全に配慮した持続可能な農業の実現に向け、生協版GAP(農業生産工程管理)を広めるモデル農場と位置付ける。将来的にはGAPに基づいた農産物を集めたプライベートブランドの立ち上げも構想する他、他の生協などからの研修も積極的に受け入れていく。

地元産ニーズ応え

福井県民生協(福井市)が立ち上げた農地所有適格法人のふくいレインボーファーム(あわら市)は、県内3カ所の計20ヘクタールで果樹やカボチャなど、県内で生産量が少ない品目を取り入れながら栽培する。

力を入れるのが県産を売りにした総菜や弁当などの加工だ。製造施設はJA福井県経済連の炊飯施設に隣接し、自ら生産した農産物の他、県産の米や規格外も含む野菜などを活用する。

ファームの中川政弘社長は「担い手が高齢化する一方で、地元産を食べたいという組合員の要望は高まっている。1次産業とより深く関わっていくことで地域農業を守っていきたい」と話す。同経済連も「消費に精通している生協と手を組むことで、地産地消へ相乗効果が期待できる」と歓迎する。

収穫した翌日に有機野菜を届けるサービスを直営農場で実現したのが、パルシステム千葉(船橋市)だ。農業部門であるパルグリーンファーム(野田市)が、市内の遊休農地1・5ヘクタールで葉物野菜などを栽培。週に1回2品目を346円で配達し、利用者は約2200世帯と、2013年の開始時から10倍以上に伸びた。

ファームの椎名一樹農場長は「鮮度が高い有機野菜を手頃な価格で食べてもらうことで、地産地消の良さを知ってほしい」と話す。

遊休農地解消へ

各地の生協が加盟する日本生活協同組合連合会によると、少なくとも12生協が関連会社を立ち上げるなどして農業に参入している。自給率の低迷や耕作放棄地の増加を背景に10年ごろから動きが出始めたといい、「組合員のニーズに応えるのはもちろん、地域に根差す協同組合として生産側の事情を知り連携を強める狙いもある」と指摘する。多くは遊休農地を活用しており、消費者との交流に生かしたり、新たな担い手として障害者雇用に取り組んだりする事例も多い。 本田恵梨

© 株式会社日本農業新聞