緑茶輸出5年で1・5倍 有機栽培が拡大、海外需要に対応

緑茶の輸出が好調だ。2022年の輸出額は5年前の17年比で5割増、23年も1~5月の累計が前年同期比で4%上回っている。輸出先ごとに違う残留農薬基準など非関税障壁が課題だったが、有機栽培の産地の拡大や、農水省の働きかけで輸出向け栽培で使える農薬の種類が増え、旺盛な海外の需要への対応が可能になってきた。

農水省によると、23年の緑茶の1~5月の累計輸出額は90億5200万円で、前年同期比で4%増えた。全体輸出量の34%を占める最大輸出先の米国向けに、単価の高い抹茶を含む粉末状での輸出割合が増え、金額を押し上げた。日本茶輸出促進協議会は、米国で粉末状の緑茶は菓子類や飲料の原料としての「業務需要が高まっている」と分析する。

主産地の鹿児島県は、海外での需要増加を見据え、輸出向け栽培への転換を進める。有機茶栽培面積の拡大に尽力し、同県の22年度の有機JAS認証取得の栽培面積は592ヘクタールで、17年度比では4割増となった。有機茶の生産性向上や販路拡大に向けた取り組みも進めており、同年の輸出額は同5倍の13億4000万円に上った。

静岡県も国内のリーフ茶需要が減る中で、有機茶などの輸出向け栽培への転換を重要視し、対応を進める。同県は、有機茶栽培面積を25年度までに20年度比で約2倍に拡大することを目標とし、転換に向けた情報提供や補助金事業を行う。需要の高まる抹茶の生産拡大に向けた設備導入支援や生産者と海外のニーズに詳しい輸出事業者との連携など販路拡大も支援する。

農水省は、有機茶の生産拡大の支援に加え、輸出向けの緑茶生産に使える農薬の種類の拡大に向けた取り組みも進めてきた。日本国内で使っている主要な農薬成分について、輸出先国での残留基準の設定に向けたデータの収集や輸出先国への申請を支援する。

例えば米国向けに基準値が設定された農薬成分は、22年度末までの6年間で9種類増えた。日本茶輸出協議会は、輸出に対応可能な防除基準を満たす緑茶の生産量が増え、「大きな海外の需要に向けて輸出量を増やせている」と話す。

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