【MLB】合計WARは-2.7 ドジャースのトレード補強の狙いとは?

写真:ドジャースに加入したアメッド・ロサリオ@Getty Images

先日のエンゼルスによるジオリト獲得、そして今日のレンジャーズによるシャーザー獲得のトレード以外は大物の動きがなく、まだ停滞気味とも言えるトレードデッドライン。

その中でも昨年のナリーグ西地区王者・ドジャースは既に4選手を獲得するなど、精力的に動いている。

レッドソックスからはユーティリティのエンリケ・ヘルナンデスを呼び戻し、ガーディアンズとは余剰戦力同士をトレードする形で先発投手のノア・シンダーガードを放出して遊撃手のアメッド・ロサリオを獲得、そして直近ではホワイトソックスから先発投手のランス・リンと救援投手のジョー・ケリーを手に入れている。

停滞気味のトレード市場にあって、ドジャースは大きな戦力アップに成功した・・・とは言い難い。というのも、獲得した選手は全員、今シーズンは不振に陥っているからである。

総合的な貢献度を示す指標・WAR(今回は『ベースボール・レファレンス』版)では、ヘルナンデスが-0.6、ロサリオが-0.1、ケリーが-0.4、リンが-1.6となっている。

WARのコンセプトは「代替可能な選手と比べてどれだけの勝ちを上積みできているか」というものであることを考えれば、ドジャースが獲得した4選手は「代替可能な選手未満」と言えるかもしれない。

では、ドジャースの狙いは何なのか。

現状のヘルナンデスとロサリオへの期待は、デプス(ベンチを含めた戦力層)の強化だろう。

ドジャースのベンチ層は、これまでヨニー・ヘルナンデス、ジェイク・マリスニックといったマイナーリーガーや、ミゲル・バルガスやジョニー・デルーカといった、ベンチに漬けておくよりは、マイナーで出場機会を得て調整させたほうが良い選手たちが担っていた。

ベテランで複数のポジションを守れるヘルナンデスとロサリオの加入によって、安定感は増すはずだ。さらに今季はショートを守って大きなマイナスを叩き出していた2人を別のポジションで起用して負担を減らすこと、そして成績の良い対左腕での起用をメインにすることで、2人の成績を改善させる目論見もあるだろう。

対して、投手のリンとケリーの狙いは何なのか。

先発投手のリンはドジャースの他にもレイズなどが争奪戦に加わっていたと見られている。実際に対価の一部のニック・ナストリーニは多士済々のドジャースのプロスペクトランキング(『MLB.com』)でも9位につけていた剛腕で、今季不振のリンとケリーにはもったいないとの声も聞かれたほど。

リンとケリーは、多くの投手を好転させてきたドジャースに加入することによって、復活するのではないかと見る向きが多い。事実、今年は打球の質から推定されるxERA(期待防御率)と実際の防御率が大きく乖離しており、運に恵まれていない要素もある。

そして、ドジャースのローテーションは故障者の多さに悩まされており、有望株とはいえ未知数な若手がローテ入りしている現状がある。故障知らずのベテランであるリンがもたらす安定感は貴重なものになるだろう。

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