1100人に聞いた「実現してほしかった未成線ランキング」(関東編) 成田新幹線や空港結ぶ「リニア新線」がランクイン

計画されたものの開業には至らず、幻のまま終わってしまった「未成線」。

今や鉄道ファンだけでなく一般の方々にも通じる言葉になっているのかもしれません。

不動産・住宅情報サービスの「LIFULL HOME’S(ライフルホームズ)」はこのほど、一都三県(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)在住の20代~60代男女1,100人に「実現してほしかった未成線」のアンケート調査を実施。その結果をランキング形式で発表しました。

「この路線がもし実現していたら便利だったかもしれない」

そんな思いを抱くのは、鉄道ファンだけではありません。普段の生活に直結することを考えると、お部屋探しや新居選びを検討中の方にこそ響くトピックなのかも。当記事では第5位にランクインした路線から順に、各路線の簡単な説明やアンケートへ寄せられた声を紹介いたします。

国分寺と雪が谷大塚駅を結ぶ路線

5位にランクインしたのは国分寺から多摩川沿いに南下する「池上電気鉄道国分寺線」です。

国分寺と雪ヶ谷駅(現:雪が谷大塚駅)を結ぶ路線として計画された路線で、多磨墓地(現:多磨)、調布、玉川(現:二子玉川)などを経由する構想でした。

実際に雪ヶ谷駅から北西へ伸びる新奥沢線が敷設された時代もありましたが、ライバル企業に行く手を阻まれてしまいます。支線は廃止され、当時の諏訪分駅と新奥沢駅も廃駅となっています。

アンケートでは次のような声が寄せられています。

「中央線の利用者として価値があると感じた」
「東京の市部の南北を結ぶルートが不便だから」
「埼玉の川越から国分寺までの南北は西武線でつながっている。もっと南進することができるなら、埼玉と神奈川をつなぐ重要な路線になりえそう」

葉山や三崎港を電車でめぐる?「三浦半島循環線」

4位にランクインしたのは、京急電鉄の前身となる湘南電気鉄道が計画した路線。神奈川県の三浦半島を循環するという壮大な構想です。

現在の京急線は三崎口駅までで止まっており、三崎の中心部へ行くためにはバスやタクシーを使わなければなりません。しかし元々の構想では三崎まで乗り入れ、さらに三浦半島の西側を海岸線に沿って進む循環線となるはずでした。

ところが免許を取得した5日後に関東大震災が発生。景気も悪化するなど不幸が重なり、実現には至りませんでした。京急電鉄は2016年に三崎口~油壺の延伸計画を凍結しており、三崎港や自然豊かな葉山町、半島の西側はいま車やバスで結ばれています。

アンケートでは次のような声が寄せられています。

「三浦半島は車でないと回れないので不便」
「三浦半島の交通渋滞も緩和されそう」
「部活の遠征のときも、元々本数が少ないバスが渋滞でなかなか来なくて大変だった」

東京駅と成田空港を結ぶ新幹線

3位にランクインしたのは、東京駅~成田空港間の約65kmを結ぶ「成田新幹線」です。未成線の中でも高い知名度を誇り、本サイトでも何度か取り上げています。

1971年に全国新幹線鉄道整備法にもとづく整備新幹線の一つとして基本計画が決定され、1974年に着工しましたが、反対運動などにより1985年に工事は凍結。

成田新幹線の夢は実現には至りませんでしたが、東京駅側・空港側でそれぞれ着工された施設は現在も有効活用されています。

アンケートでは次のような声が寄せられています。

「これからは国際線の利便性が重要」
「街から距離がある以上、特別感を持って移動をしたい」
「都心への移動が容易になれば成田空港の稼働率も上がると思われる」

山手線の外側を行く「第二山手線」計画

2位にランクインしたのは「第二山手線」として知られる「山手急行電鉄」計画です。

現在の山手線の外側に一回り大きな環状線を作り高速運転するという計画で、起点駅は現在のJR大井町駅です。計画は大正時代に登場しましたが、世界恐慌による不景気など様々な要因が重なり、実現には至りませんでした。

現在の路線図と比べてみると、山手線と武蔵野線の間の山手線寄りを通るような計画だったようで、縦方向の移動に使いやすい路線となっていたかもしれません。

アンケートでは次のような声が寄せられています。

「東京西部は南北の移動が困難」
「城東地区は縦の路線が無く不便」
「満員電車の緩和にもなりそうだし、車の外環のように便利そう」

羽田・成田空港を結ぶ「リニア新線」構想

気になる1位は、羽田空港と成田空港を結ぶ「羽田・成田リニア新線構想」でした。

世界でもトップクラスの旅客数・貨物取扱数を誇る羽田・成田の両空港ですが、東アジア諸国で大型空港の整備が進んだことから国際競争力は相対的に低下しました。しかしながら、首都圏に十分な空港容量と乗り継ぎ機能を有する空港を新設するのは困難な状況です。

そこで成田・羽田両空港を一体的に運用することで、国際線・国内線の乗継機能強化を図るという構想が浮上しました。平たく言えば、両空港間の移動にかかる所要時間を抑えることで、同じ空港内の「国際線⇔国内線」ターミナル間を移動するような感覚で、2つの空港を利用できるようにするというプランです。

検討された案の一つが羽田・成田の空港をリニアモーターカーで結ぶというもの。所要時間は約15分。試算では建設費は1兆3,000億円、経済波及効果は2兆9,000億円に上ります。

しかしながら神奈川県が2009年に発表した報告書では、年間の運営費は約1,200億円と試算されています。単純計算で片道1万円としても年間1200万人の乗客が必要になる計算ですが、両空港間の移動にそんな需要はなく、計画は具体化されていません。

アンケートでは次のような声が寄せられています。

「乗り継ぎが楽になりそう」
「成田空港が使いやすくなり、羽田空港の混雑緩和につながる」
「インバウンド需要もあると思う」

2023年現在、両空港間を鉄道のみで移動しようとした場合、スカイライナーなどを利用しても1時間以上かかります。移動手段としては直通のリムジンバスもありますが、道路の混雑状況により到着が遅れる場合があり、早くて快適ではあるものの定時性では鉄道に劣ります。採算性を考慮すると現実味の薄い案ですが、もし実現したら夢のある話……かも?

全体の得票数ランキングはこちら 選定基準も聞いてみた

「実現して欲しかった未成線ランキング(関東編)」の全体順位は次の表のとおりです。

選定基準についてLIFULLの担当者に確認したところ、同社では本アンケートの「関東編」と「関西編」を実施するにあたり、それぞれ25以上の候補をピックアップした上で、次の3つの選定基準の内、1つでも当てはまるものを選んだということでした。

①鉄道事業法・地方鉄道法・私設鉄道法・軽便鉄道法による許可・免許・認可および軌道法による特許が取得されたもののすでに失効している路線

②交通政策審議会(運輸政策審議会を含む)および近畿地方交通審議会によって1度以上答申されたものの、最新の答申に記載されていない路線

③自治体から構想が公表されたもの実現していない路線

羽田・成田リニア新線などは③に該当します。2016年の交通政策審議会の答申でも言及されておらず、「未成線」とするには根拠が乏しいと感じられるかもしれませんが、「実現すれば夢のある路線」という意味では他の路線に決して引けを取らないでしょう。

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