中小企業庁のM&A支援機関、一部事業者離脱か 6月は2897件

M&A支援登録機関数が減少、実績報告など未提出の事業者が離脱か

中小企業庁が公募している2023年度(6月分まで)のM&A支援登録機関が2,897件となり、過去最多だった5月分までの3,133件から236件減少した。毎年6月末までに提出が義務付けられている実績報告などの未提出・不備により、登録継続申請が認められなかった支援機関の離脱が大きな要因とみられる。

M&A支援機関登録制度は、経済産業省が2021年4月に策定した「中小M&A推進計画」に基づき、同年8月に運用を開始。国の事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用事業)で設定されているM&A仲介手数料などへの補助は、登録制度で認定された支援機関が提供するサービスのみが対象となる。

M&A専門業者が最多の1017件

6月分までの支援機関の内訳は法人2,132件、個人事業主765件。種類別はM&A専門業者(フィナンシャルアドバイザー・仲介)1,017件、税理士544件、コンサルティング会社(経営コンサル)421件、公認会計士282件、中小企業診断士230件などとなった。地方銀行や信用金庫・信用組合などの金融機関も計174件が登録している。

中小企業庁「令和5年度公募(5月分)における登録について 別紙2登録状況」より引用
中小企業庁「令和5年度公募(5月分)における登録について 別紙2登録状況」より引用

また、専従者数別は0~2人が2,079件と大半を占め、50人以上の支援機関は14件のみ。設立年代別は2010年代以降が2,550件に上る。専従者数が少なく業務経験も浅い支援機関が多い傾向は従来と変わらないが、こうした状況が実績報告などの不備や未提出の遠因になっている可能性もある。

昨年度は129件が登録継続申請の要件を満たせず

中小企業庁の集計結果を見ても、2021年度に登録した2,823件のうち、2022年6月末までに実績報告などを提出しなかった事業者は129件(書類不備9件を含む)に上る。マンパワーやノウハウの乏しい支援機関がM&Aをサポートする機会を得るのは容易ではないことから、実績報告などを作成できなかったケースが少なくないと推察される。

7月分以降の登録数は再び増加に転じることも予想されるが、全国では中小企業などの倒産が急増している。東京商工リサーチの調べによると、2023年上期(1~6月)の倒産件数は前年同期比32.0%増の4,042件で、上期としては3年ぶりに4,000件を超えた。人手不足や物価高も深刻化する中、M&A支援を含めた対策が急がれている。

一方、減少したとは言え3,000件近くに上る支援機関を活用する国の動きは、事業承継・引継ぎ補助金しか見当たらないのが現状だ。登録制度の創設目的には「中小企業が安心してM&Aに取り組める基盤の構築」が掲げられていることから、支援機関の積極的な活動を後押しする新たな枠組みづくりも求められそうだ。

文:M&A Online

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