「闇バイト」応募後“脅迫”され逮捕まで“使い捨て”…「犯行実行者募集の実態」とは

SNSで「高額報酬」等を検索すると多くの“募集”アカウントが出てくる(Graphs / PIXTA)

7月27日。浜松市に住む高齢男性から不正に入手したキャッシュカードを使用し、現金50万円を盗んだとして静岡県御殿場市に住む高校生(17)が窃盗容疑で逮捕された。逮捕後の取り調べに対し高校生は「複数犯で一連の犯行をした」と容疑を認めているが、犯行に至った経緯にはいわゆる“闇バイト”が介在していたとみられている。

闇バイトに応募し、犯罪行為に加担するまでの流れ

今回、逮捕された高校生のように近年では安易な気持ちで闇バイトに応募したために犯行グループから個人情報を基に執拗(しつよう)に脅迫され、逮捕されるまで犯行から抜けられないといったケースが相次いでいる。

そのような状況に注意喚起をすべく警察庁は、保護者、教職員らに向け、犯行グループによる犯罪実行役の募集の実態や危険性や悪質性、検挙されるまでの実態について記した『犯罪実行者募集の実態』冊子を7月27日にリリースした。

この『犯罪実行者の募集の実態』には少年らが闇バイトに応募してから摘発されるまでの実例が個別具体的に挙げられており、今後も増加すると思われる闇バイトを介在にした犯罪への啓発となっている。以下に『犯罪実行者募集の実態』のポイントを要約する。

冊子はまず少年らが闇バイトに応募し、犯罪行為に加担するまでの流れについて次のように記す。

①自らSNSで「高額報酬」等を検索・応募

②犯行グループから連絡が入り、以降、匿名性の高いアプリでやりとり

③犯行グループに言われるがまま個人情報を送信

④犯罪行為への加担を拒否すれば犯行グループが個人情報を基に脅迫

そして①の応募に関しては、

【パパ活をするためにtwitterを利用していたら、犯行グループから「パパ活ではないが、荷物を受け取るだけの仕事をしないか」旨の連絡が届いた】

【職場の社長が知人から紹介された「高収入」の仕事を請け負い、社長からの指示で「受け子」として犯行に加担した】

などの闇バイトに応募した個別具体例について挙げながら、犯行グループは応募後にTelegramやSignal等の匿名性の高いアプリをインストールさせ、「アルバイトをするための登録情報として必要」などと個人情報を要求すると警告している。

なかには自分が住んでいるマンションの入り口から部屋までの道のりを動画撮影するように指示されたり、氏名、住所、連絡先等とともに、上半身裸の写真を送信させられた事例もあるという…。

指示役など主犯者の検挙はわずか

そして犯行グループは少年らが犯罪行為への加担を拒否しようとすれば、応募の際に入手した個人情報を基に、少年らが犯罪行為に加担するまで執拗に脅迫し、

「犯行グループによる脅迫等の結果、少年たちは犯罪行為に加担せざるを得ない状況となり、「受け子」などの役割を繰り返した結果、必ず検挙されることになります。脅し等により、逮捕されるまで使い続けられることが特徴」だと警鐘を鳴らしている。

冊子にはこれらの闇バイトに応募してしまった少年らの応募から逮捕に至るまでの具体事例とともに、実際に詐欺被害に遭ってしまった高齢者らの体験談や応募後に犯罪行為に加担されそうになり、ヤングテレホン(少年相談窓口)に架電して警察に発見・保護された、というような未然に犯罪に加担せずに防ぐことができた事案についても触れられている。

社会部記者が言う。

「警察庁はこれまで捜査二課や組織対策犯罪対策部がそれぞれ行っていた特殊詐欺の捜査を一括して”組織犯罪”として捉え『組織犯罪対策部』が一元的に特殊詐欺の捜査を行うようになっています。ですが、令和4年の特殊詐欺検挙件数6640件のうち指示役など犯行グループの中枢にいる主犯被疑者の検挙人員は41人とわずか1.7パーセントです。安易な気持ちで闇バイトに応募して犯罪行為に加担させられてもトカゲの尻尾きりで終わるだけなので注意が必要です」

『犯罪実行者募集の実態』は警察庁のホームページから無料で閲覧可能となっている。

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