水戸芸能士協会の舞方7人 お座敷文化、次代へ つなぐ伝統、発信に力 茨城

踊りの稽古で所作を確認する舞方=水戸市五軒町

茨城県水戸市のお座敷文化を次代へ引き継ごうと、舞方の奮闘が続いている。北関東一といわれた水戸の花柳界は最盛期には300人近い芸者を抱えたが、現在は水戸芸能士協会(水戸市八幡町)の舞方7人のみ。同協会理事で舞方の安原保子さん(59)は「今動かなければ。担い手を育てて文化を守りたい」と意気込む。

「おっしゃいな、おっしゃいな」。7月中旬、同市内の稽古場に、浴衣姿の安原さんをはじめ、舞方4人が集まった。この日は太鼓や踊りの稽古。太鼓の心地よい音色とあでやかな歌声が響く中、舞方らは真剣な面持ちで扇子や風呂敷など小物を使ったり、足さばきや所作を確認したりした。稽古は「四丁目」「おっしゃいな」「春の花」など15曲以上で4時間を超えた。

水戸の花柳界は明治末から大正末期にかけて隆盛を誇り、当時は300人近い芸者を抱えた。その後衰退したが盛り返し、1981(昭和56)年ごろには約90人の芸者が活躍していたとされる。お座敷文化を代表する小唄では、日本三大民謡の磯節を取り入れた「磯の月」、大工町花柳界を盛り上げるために作られた「大工町小唄」などが、現在も歌い継がれている。

同協会は2010年、お座敷文化を継承しようと、料亭や舞方などを束ねる「水戸大工町三業組合」内に設立。芸者を呼んで飲食する文化を知らない世代が増える中、周知活動を続け月15~20回はお座敷がかかるようになったという。

ところが、2020年の新型コロナ流行で状況は一変。多人数の会食や祭りなど地域イベントの中止が相次ぎ、舞方の仕事は激減。舞方8人(当時)のうち2人が休業を余儀なくされた。お座敷文化の継承に奔走していた安原さんも「生活が成り立たなければ難しい。諦めそうになった」と振り返る。

それでも、23年2月には社団法人格を取得し、伝統芸能の普及活動の一環で、大学の学祭にも出演した。今後はインバウンド(訪日客)観光の取り込みを視野に情報発信に力を入れる。

安原さんは「舞方は夢を売る職業。おもてなしの心で来てくださったお客さまに魅力を発信したい」と語った。水戸芸能士協会の山口晃平代表理事(50)は「伝統芸能を守りつつ、時代に合わせて舞方を進化させたい」と意気込んだ。

同協会は8月5日の水戸黄門まつり(同市)や、同26、27日のみなと八朔まつり(茨城県ひたちなか市)に出演し、山車に上がって踊りと太鼓を披露する予定という。

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