【角田裕毅F1第13戦分析】ドライ寄りのセットアップが奏功し入賞。アルピーヌとのバトル中は冷静な判断でタイヤを労わる

 前日のF1第13戦ベルギーGPスプリント・シュートアウトはSQ1敗退、同日に行われたスプリントでは、リヤの挙動に悩まされて完走中最下位とまったくいいところがないまま終わった角田裕毅(アルファタウリ)。

 しかし、日曜日のレースは、金曜日に行われた予選を元にグリッドが決まる。その予選で11番手を獲得していた角田にとって、ルーキーだった2021年の16番手(予選は17番手)、2年目の昨年のピットレーンスタート(予選は19番手)を上回るスパ-フランコルシャン・サーキットでの自己最高グリッドからのスタートとなった。

2023年F1第13戦ベルギーGP 角田裕毅(アルファタウリ)

 そして44周後、チェッカーフラッグを受けた角田は、2021年の15位、2022年の13位を上回る10位でフィニッシュ。3年目にして、ドライバーズ・サーキットと言われるスパ-フランコルシャンで初めて入賞した。

 アゼルバイジャンGP以来、ポイントから遠ざかっていた角田。しかも、第7戦モナコGP以降はトラブルやペナルティなどによって、角田にとっては不満の残るレースが続いた。そんななか、今回は入賞したというだけでなく、その内容も本人が満足いくものだった。

 それは「素晴らしいレースでしたね」という筆者の最初の問いに、笑顔で「ありがとうございます」と返していたことでもわかる。そして、こう続けた。

「素直にうれしいという気持ちと、チームに感謝の気持ちでいっぱいです」

 角田が感謝しているのは、マシンをセットアップし、戦略を立ててくれたエンジニアたちと、ピットストップで素早いタイヤ交換作業をしてくれたメカニックに対してだ。

「(ウエット寄りのセットアップにしても)僕たちのクルマは予選では厳しいだろうということと、日曜日はかなり高い確率でドライになることがわかっていたので、ドライに賭けました」

2023年F1第13戦ベルギーGP インタビューを受ける角田裕毅(アルファタウリ)

 つまり、日曜日のレースに向けてクルマをセットアップしていたことで、土曜日のスプリントで苦しんだが、今日それが功を奏したというわけだ。

 チームの頑張りに、角田は走りで応えた。

 レース終盤、9番手を走る角田の後方からエステバン・オコン(アルピーヌ)が迫ってきたときだ。ケメル・ストレートでDRSを使用して横に並ばれた角田とオコンはサイド・バイ・サイドのまま、ブレーキングしてコーナーに進入していった。角田がブロックするかと思われたが、それはしなかった。その理由を角田はこう語った。

「レ・コームで変にディフェンスすると5秒ペナルティを科せられる可能性が高いので、無理はしませんでした。アルピーヌのほうがかなり速かったし、その後ろから同じアルピーヌのガスリーも近づいていたので、あそこで変にブロックして、タイヤを痛めるよりも、ガスリーに抜かれないことを考えていました」

 その冷静な判断でガスリーを抑えて10位入賞を果たした角田。今シーズンここまでのベストレースを披露して、前半戦を笑顔で締め括った。

フランツ・トスト代表&角田裕毅(アルファタウリ)

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