7月29~30日、2022/2023年ABB FIAフォーミュラE世界選手権シーズン9の第15戦、第16戦ロンドンE-Prixがイギリス・ロンドンで開催され、第15戦を2番グリッドからスタートし、赤旗2回の荒れた展開をくぐり抜けたジェイク・デニス(アバランチ・アンドレッティ・フォーミュラE)が2位でフィニッシュしシリーズチャンピオンを獲得した。第15戦はミッチ・エバンス(ジャガーTCSレーシング)、第16戦はニック・キャシディ(エンビジョン・レーシング)が優勝を飾っている。
室内40%、室外60%というハイブリッド構成のエクセル・サーキットで行われるロンドンE-Prix。ダブルヘッダーレースの初戦である第15戦のポールポジションを獲得したのは、ランキング2位からタイトル獲得を狙うキャシディだ。
迎えた決勝スタートでは、ポールポジションのキャシディが好スタートを見せ、トップで1コーナーへ入っていく。
3番手グリッドからスタートしたセバスチャン・ブエミ(エンビジョン・レーシング)は、2番手デニスをオーバーテイクし、エンビジョン・レーシング勢のワン・ツー体制となる。
トップをいくキャシディは、2番手につける僚友のブエミに後続のペースコントロールを託し、アタックモードを立て続けに2度使用していく。
その後エンビジョン・レーシングの2台はポジションを入れ替える作戦に出るが、そこに割って入ったのは6番手スタートのエバンスだった。すぐさまエバンスはブエミを抜いてトップに立ち、レースをリードしていく。
11周目、順位を下げてきたキャシディにデニスが仕掛け、オーバーテイクに成功。しかし、2周後の13周目には、追い抜かれたキャシディがデニスに反撃を行う。その動きを見た3番手ブエミはチームメイトのキャシディに加勢し、デニスの前方を塞ぐようにポジショニング。この助けもあり、キャシディは動きの鈍ったデニスを再度オーバーテイクした。
迎えた15周目、キャシディはさらにブエミから3番手の順位を譲り受けようと接近するも、ここでミスコミュニケーションが発生してしまう。チームメイト同士の2台は接近の末に交錯し、キャシディはフロントウイングをブエミにヒットさせて破損させてしまう。
フロントウイングを引きずるキャシディは最後尾へと順位を下げ、この接触によって発生したデブリの影響から16周目にセーフティカー(SC)が導入された。
レースは19周目に再開に。最後尾に着いたキャシディだったが、リスタート後にエドアルド・モルタラ(マセラティMSGレーシング)と接触、追い上げも叶わずタイトル獲得のかかる第15戦をリタイアで終えてしまった。
この時点で4番手を走るデニスにとっては、日曜の1戦を残し、今戦でタイトルを獲得するためには表彰台圏内でのフィニッシュが最低条件となる。
なんとか順位を上げたいデニスがペースアップを開始した矢先、29周目に12番手のサッシャ・フェネストラズ(ニッサン・フォーミュラEチーム)がターン16で前を走行するセルジオ・セッテカマラ(NIO333レーシング・フォーミュラEチーム)に接触。乗り上げたフェネストラズは、着地後にそのままバリアに真っすぐ衝突してしまった。
この接触により、レースは2度目のSCが導入、数周のSCランを経てバリア修復作業が必要となることから、レースは32周目に赤旗が掲示された。心配されたフェネストラズは、その後マシンを降りており、無事が確認されている。
レースは残り5周、ローリングスタートでの再開となった。首位のエバンスと2番手のブエミは最後のアタックモードを使用し、エバンスがトップをキープしていく。
アタックモードを使用して4番手となったブエミは、残されたレース時間で6分のアタックモードを使いきる必要からペースダウン。
大幅にペースを落としつつもポジションを守りたいブエミに対し、5番手のノルマン・ナト(ニッサン・フォーミュラEチーム)がターン19でバトルを仕掛け接触。2台はそのままバリアへ追突してしまった。
さらに、その後続のマシンらが次々と数珠つなぎでクラッシュを呈してしまい、コースは大渋滞となってレースは35周目に2度目の赤旗が導入された。
レースは残り3周で再開となり、エバンスを先頭に隊列はクリーンに1コーナーへ入っていく。その後隊列はポジションを変えずに周回を重ね、そのままチェッカーフラッグを受け、6番手スタートから序盤の勝勢でトップを奪ったエバンスが今季4勝目を挙げた。
続く2位でフィニッシュしたのは、17番グリッドからの追い上げを見せたアントニオ・フェリックス・ダ・コスタ(タグ・ホイヤー・ポルシェ・フォーミュラEチーム)だったが、タイヤの空気内圧に関する技術違反があるとして3分のタイムペナルティが科されたため、デニスが繰り上げで2位となりシリーズチャンピオンを獲得する結果に。3位には手負いのマシンでポジションを守り切ったブエミが入り、表彰台の一角を獲得している。
■雨の第16戦はチームタイトルをかけた争いに
シーズン9最終戦となる第16戦では、デュエル形式の予選を勝ち上がったキャシディが2連続ポールポジションを獲得。2番手には第15戦で勝利したエバンスが続くかたちとなった。
決勝レースは予選後に降り出した雨が降り続くなか迎え、室内のドライ路面と室外のフルウエット路面が交互に続く危険なコース状況のなか、SC先導でレースはスタートする。
しかし、コースコンディションを確認しながら5周を完了したのちに赤旗が掲示され、レースは一時中断となってしまう。
赤旗掲示から30分後に再びSCランが開始されるも、2周を終えたタイミングで赤旗が再度掲示された。
2度目の赤旗中断から40分後にSCランは再開。2周を終えたのち、レースは8周目からローリングスタートが切られた。
隊列はポールポジションのキャシディを先頭に1コーナーへ。各車は室外のウエット路面に対処しつつ、気候と戦況の様子を見ながら周回を重ねていく。
首位のキャシディは、先頭の視界の良さを活かし、ファステストラップを更新しながら2番手のエバンスを徐々に引き離すペースで走行を続ける。
その後上位陣は順当に2度のアタックモード使用を終え、バッテリーマネジメントを優先的に行いながらレース後半に備える。
レース残り10周になったころには雨も止み、コースコンディションは次第に向上していく。すると2番手のエバンスが徐々にペースアップを開始し、トップのキャシディとの差を縮めていく。
しかし、首位キャシディもエバンスの走りに反応してペースをコントロール。チームタイトルを争う2台は、ファステストラップの奪い合いも白熱し、それぞれが交互に最速タイムを更新し合う展開となった。
その後上位勢の順位は総じて膠着状態となってレース残り5周に。その後は大きな順位変動もなく、キャシディがトップでチェッカーを受けポール・トゥ・ウィン。今季4勝目を飾った。
2位には前日の第15戦で勝利を挙げたエバンスが続き、3位には今季のシリーズチャンピオンに決定しているデニスが入った。
このキャシディのポール・トゥ・ウィン、7位バードを上回った6位ブエミの好走によりエンビジョン・レーシングは初のチームタイトルも獲得している。
■2022/23年フォーミュラE第15戦&第16戦ロンドンE-Prix 順位結果
2022/23年フォーミュラE第15戦ロンドンE-Prix 順位結果
Pos. No. Driver Team Lap/Gap Grid
1 9 M.エバンス ジャガーTCSレーシング 37Laps 6
2 27 J.デニス アバランチ・アンドレッティ・フォーミュラE 1.116 2
3 16 S.ブエミ エンビジョン・レーシング 1.668 3
4 10 S.バード ジャガーTCSレーシング 3.054 9
5 3 S.セッテ・カマラ NIO333レーシング・フォーミュラEチーム 3.782 19
6 48 E.モルタラ マセラティMSGレーシング 4.263 11
7 11 L.ディ・グラッシ マヒンドラ・レーシング 4.769 20
8 33 D.ティクトゥム NIO333レーシング・フォーミュラEチーム 5.118 4
9 17 N.ナト ニッサン・フォーミュラEチーム 7.527 10
10 94 P.ウェーレイン タグ・ホイヤー・ポルシェ・フォーミュラEチーム 8.725 7
11 5 J.ヒューズ ネオム・マクラーレン・フォーミュラEチーム 9.128 18
12 1 S.バンドーン DSペンスキー 10.231 8
13 7 M.ギュンター マセラティMSGレーシング 10.568 14
14 36 A.ロッテラー アバランチ・アンドレッティ・フォーミュラE 11.094 15
15 58 R.ラスト ネオム・マクラーレン・フォーミュラEチーム 11.789 5
16 8 R.メリ マヒンドラ・レーシング 23.472 22
17 13 A.F.ダ・コスタ タグ・ホイヤー・ポルシェ・フォーミュラEチーム 3’00.666 17
NC 25 J-E.ベルニュ DSペンスキー DNF 13
NC 37 N.キャシディ エンビジョン・レーシング DNF 1
NC 23 S.フェネストラズ ニッサン・フォーミュラEチーム DNF 16
NC 4 R.フラインス ABTクプラフォーミュラEチーム DNF 21
NC 51 N.ミューラー ABTクプラフォーミュラEチーム DNF 12
2022/23年フォーミュラE第16戦ロンドンE-Prix 順位結果
Pos. No. Driver Team Lap/Gap Grid
1 37 N.キャシディ エンビジョン・レーシング 38Laps 1
2 9 M.エバンス ジャガーTCSレーシング 4.934 2
3 27 J.デニス アバランチ・アンドレッティ・フォーミュラE 16.295 4
4 17 N.ナト ニッサン・フォーミュラEチーム 24.819 3
5 1 S.バンドーン DSペンスキー 26.29 5
6 16 S.ブエミ エンビジョン・レーシング 27.406 7
7 10 S.バード ジャガーTCSレーシング 29.376 6
8 51 N.ミューラー ABTクプラフォーミュラEチーム 30.304 8
9 33 D.ティクトゥム NIO333レーシング・フォーミュラEチーム 30.832 9
10 94 P.ウェーレイン タグ・ホイヤー・ポルシェ・フォーミュラEチーム 35.558 10
11 48 E.モルタラ マセラティMSGレーシング 36.615 12
12 58 R.ラスト ネオム・マクラーレン・フォーミュラEチーム 38.16 13
13 3 S.セッテ・カマラ NIO333レーシング・フォーミュラEチーム 40.295 15
14 7 M.ギュンター マセラティMSGレーシング 51.14 16
15 23 S.フェネストラズ ニッサン・フォーミュラEチーム 51.918 18
16 13 A.F.ダ・コスタ タグ・ホイヤー・ポルシェ・フォーミュラEチーム 53.336 20
17 4 R.フラインス ABTクプラフォーミュラEチーム 56.608 22
18 11 L.ディ・グラッシ マヒンドラ・レーシング 58.064 17
19 5 J.ヒューズ ネオム・マクラーレン・フォーミュラEチーム 59.956 19
20 8 R.メリ マヒンドラ・レーシング 1.02’506 21
21 36 A.ロッテラー アバランチ・アンドレッティ・フォーミュラE 1.02’809 14
22 25 J-E.ベルニュ DSペンスキー 1Laps 11