犬が夏に陥りがちな『体調不良』4選!適切な対処法と日頃からできる予防とは?

1.熱中症

暑い夏に特に気をつけたい犬の体調不良が、「熱中症」です。熱中症は、どんな犬にでも起こる身近な身体的トラブルでありながら、最悪の場合、命をも奪う恐ろしいものだということを覚えておいてください。

熱中症は、体温が異常に上がることや脱水状態に陥ることで起こり、体内の細胞が急激なダメージを受けます。その結果、臓器障害を起こして不整脈や低血圧、肺水腫、脳出血といった症状が出ます。

さらに、食欲不振や下痢、嘔吐といった軽い症状から、痙攣や呼吸困難、意識障害など命を脅かす危険のある症状まで進行し、短時間のうちに死に至ることがあるのです。

熱中症は、直射日光を浴びているときだけでなく、室内にいても起こることがあるので注意しましょう。特に、閉め切った狭い室内や車内は、あっという間に気温が上昇する上、湿度も上がりやすいので、適切に冷房を使用して熱中症対策をしてください。

2.消化器系疾患、体重の増減

犬は暑い季節になると、食欲が落ちてしまいがちです。これは人間でも同じことが言えますが、体の中に熱がこもると内臓機能が低下して、食べ物を受けつけなくなったり、下痢や嘔吐などを起こします。

また、暑さで水を大量に飲むと胃液が薄まってしまい、消化がうまくできなくなってしまい、食べてもしっかりと栄養を吸収できなくなることもあります。

このようなことから、体重が一気に減少してしまったり、下痢や嘔吐をくり返すことで脱水症状を起こしたりすることもあります。

食欲不振に陥らないように室温管理をしっかりと行った上で、食事も消化吸収がしやすいようにドッグフードをふやかしたり、肉や野菜を煮込んだスープを与えたりと、食事の水分量を増やすといいでしょう。

夏は食欲不振によって痩せることもありますが、反対に散歩に出る時間が減って運動不足に陥り肥満になる犬もいます。暑い時間に散歩に出るのは危険ですが、少しでも涼しい時間を狙って散歩に出るようにしたり、室内での遊びを増やしたりといった工夫をしてみてください。

3.皮膚疾患

暑い夏の間は、強い日差しや寄生虫、カビなどの影響で犬は皮膚関連の体調不良になる危険性があります。代表的な皮膚疾患を確認しておきましょう。

皮膚炎

夏はノミやダニ、蚊など犬の体に寄生してかゆみや炎症を引き起こす害虫が多く発生する季節です。特にノミやダニの場合、アレルギー反応を引き起こすこともありますし、かきむしることで皮膚が傷ついてしまうこともあります。

予防薬や虫よけスプレーを利用して対策するのはもちろん、散歩後に全身をチェックしてあげるように心掛けましょう。

また、日本の夏は湿度も高いため、カビが繁殖しやすい傾向があります。「マラセチア」と呼ばれるカビは皮膚で繁殖することがあり、炎症を起こします。犬が体を掻いていることがあれば、すぐにチェックして、必要に応じて動物病院を受診するようにしましょう。

日焼け

犬は全身を被毛で覆われているため、日焼けについてはあまり気にしていない飼い主さんも多いと思います。しかし、強い日差しを浴びることで「日光性皮膚炎」になったり、皮膚がんを引き起こしたりすることもあるので注意しましょう。

特に、鼻の上や目のまわりなどの被毛が薄い部分は、強い紫外線の影響で皮膚が赤くなったり、硬くなったり、ただれたりすることがあります。犬がそれらの場所を手で掻いたり舐めたりして気にしている様子が見られたら、悪化しないようにチェックしておきましょう。

4.水中毒

短時間のうちに大量の水を体内に摂取したときに起こる「水中毒」も、夏に起こりやすいトラブルのひとつです。大量の水を飲むことで血中のナトリウム濃度が一気に低下してしまい、バランス調整のために細胞内に水分が取り込まれ、内臓や脳が腫れた状態になります。

脳のように硬い骨に覆われている部位は、腫れがひどくなると障害を受けて、神経系トラブルを起こします。

痙攣や昏睡、意識障害を引き起こして重篤な状態になることもあるので、ぼんやりとしていたり、ふらつきや吐気が出ていたり、大量のよだれが垂れていたりする場合は注意して様子を見ながら、獣医師の指示を仰ぐようにしましょう。

水中毒は、プールや川などで水遊びをしているときにも起こりやすいと言われています。口を開けた拍子に大量の水が入ったり、おもちゃをくわえるときに水も一緒に取り込んでしまったり、といったことがあるので、水遊び中は十分注意してください。

まとめ

夏の厳しい暑さや湿気は、犬の体に様々なダメージを与えます。

食欲や元気の消失といった軽度のものから、最悪の場合死に至る恐ろしい疾患まで、あらゆる身体的トラブルが起こる可能性があります。

そのため、暑い時期には犬の体調変化をしっかりと観察するようにしましょう。

(獣医師監修:寺脇寛子)

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