人命最優先!真夏での日中試合開催はサッカーの首を絞める!災害級の暑さから選手を守るためには

最高気温40度にも迫る災害級の暑さが日本全土で連日続いている。

総務省消防庁の「全国の熱中症による救急搬送状況」(7月17~23日、速報値)によると、17日から7日間の日本全土で熱中症と見られる症状で9190人が救急搬送された。昨年同時期(2022年7月18~24日)と比べると5053人も増加した。

今月28日には環境省が日本全国40地点で熱中症警戒アラートを発令するなど深刻な酷暑に襲われているが、その中でも全国各地で日中にサッカーの試合が開催されている。

酷暑下での日中の試合開催は脱水症、熱中症、熱射病のリスクを伴い、最悪の場合は生命の危機に直面するリスクもある。

岐阜県社会人サッカー関係者の英断

岐阜県社会人サッカーリーグ1部は今月29日に会場の気温が高気温になると予想して、30日の全試合を延期することを発表した(県1、2部ともに全試合延期)と29日にQolyが単独でニュース記事を報じた。

岐阜県社会人サッカー関係者の判断は英断だった。29日気象庁によると今月30日の岐阜県内の最高気温は飛騨地方で37度、美濃地方で36度と猛暑日(1日の最高気温が35度を超える日)になると予想した。

実際に30日の気温を気象庁のデータベースで調べると、30日の岐阜県岐阜市は午後3時時点で36.7度(この日の最高気温)を計測した。

仮に猛暑日の中で試合を開催すれば、選手たちは熱中症、脱水症、熱射病のリスクを伴いながらプレーを強いられていた可能性が高い。自然災害、雷、新型コロナウイルスなどでの延期は耳にすることはあるが、高気温のため試合を延期または中止することはあまり耳にしない(筆者の取材不足の可能性もあるが)。

今後このような過酷な暑さが続くのであれば、試合開催を止めるケースは増加するだろう。命の危険性を考慮すれば当然なことであるが、勇気を持って試合開催を止めた岐阜県社会人サッカー関係者の英断を称賛したい。

クラブユース選手権では気温44度の中で試合を開催

一方で、過酷な状況下で行われた試合もあった。今月27日午前8時46分から開催されたクラブユース選手権ラウンド16の横浜F・マリノスユースと横浜FCユースの一戦(会場は群馬県・伊勢崎市華蔵寺公園陸上競技場)では、気温が44度を記録する中で試合が行われた。

また、この日群馬県内で気温40度以上を計測した試合は前述した1試合を含めて計6試合あった。生命の危機に直面する可能性がある状況下での試合開催は、ナンセンスの極みだ。

日本サッカー協会の熱中症ガイドラインによると、

・WBGT=31℃以上となる時刻に、試合を始めない(キックオフ時刻を設定しない)。

・WBGT=31℃以上となる時刻が試合時間に含まれる場合は、事前に『JFA 熱中症対策<A>+<B>』を講じた上で、試合日の前日と翌日に試合を行わないスケジュールを組む。

と規定している。

このWBGTとは熱さ指数ともいい、環境省の熱中症予防情報サイトによると

暑さ指数(WBGT(湿球黒球温度):Wet Bulb Globe Temperature)は、熱中症を予防することを目的として1954年にアメリカで提案された指標です。 単位は気温と同じ摂氏度(℃)で示されますが、その値は気温とは異なります。 暑さ指数(WBGT)は人体と外気との熱のやりとり(熱収支)に着目した指標で、人体の熱収支に与える影響の大きい ①湿度、 ②日射・輻射(ふくしゃ)など周辺の熱環境、 ③気温の3つを取り入れた指標です。

と記載してある。

同情報サイトサイトによると、WBGT=31℃は気温(参考)35度以上と書かれている。だが、今月27日に開催されたクラブユース選手権の6試合は気温40度以上を計測している。

横浜FMユースと横浜FCユースとの試合では、試合前のWBGTが32.2℃(ガイドラインでは試合を始めていけない基準だが…)で、ハーフタイムは33.3℃を記録しているため、明らかにガイドラインから逸脱した気温下で試合が開催された。

仮にガイドラインから逸脱した気温下で万が一の事態が発生した場合、主催の日本サッカー協会、日本クラブユースサッカー連盟はどう責任を果たすのか。このような危険な状況下で試合を開催した説明責任を果たすべきだ。

酷暑から選手を守れ

酷暑の中での試合開催には多くの関係者が胸を痛めている。ある育成年代の指導者は

「JFAの熱中症ガイドラインは形骸化しているのではないかと危惧しています。クラブユース選手権は基準以上の状況で試合が行われましたが、練習試合などでガイドラインを意識して試合を運営する人間がどれだけいるのか」

と嘆いていた。

そして、あるプロサッカー選手もこの状況に警鐘を鳴らしている。

「子供たちを教えている人たちは熱中症を甘く見ていると思いますよ。高校サッカーも、大学サッカーも日中に試合をやっている。嘔吐している選手がいれば看病はするけど、試合は続けますからね。プロになれば真夏だとナイターで試合をするのに、子供やアマチュア選手は日中に試合するとかおかしくないですか。指導者や協会の人たちが言っていることは口だけだと思っています。大きな事故がない限り何も変わらないのかなと、すごく心配しています」

と吐露した。

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酷暑下での日中試合開催で死者が出ては手遅れだ。スポーツ災害ともいえるような状況は阻止しなければならない。一度現状を調査したうえで日本サッカー協会、各地域協会は試合開催の基準や対策などを見直すべきだ。

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