強盗女27歳、逃げ帰るも…警察犬すぐ家特定 見事逮捕、ご褒美の高級ジャーキー大喜び 子の命を救った事も

刑事部長賞を授与された小焼山功裕巡査部長(左上)とクシストス号(左下)、捜査1課長賞を授与された辺保享巡査部長(右上)とゼスト号=7月25日午前、さいたま市浦和区の県警本部

 6月に埼玉県富士見市のドラッグストアで連続発生した強盗事件で、犯人逮捕の一翼を担った県警直轄警察犬訓練士2人と警察犬2頭に刑事部長賞と捜査1課長賞が授与された。いずれも現場に犯人の遺留物がない状況で、足跡を追い1頭は容疑者宅付近まで、もう1頭は容疑者宅までたどり着く大活躍ぶりだ。7月25日、さいたま市浦和区の県警本部で表彰された指導士は「日々の訓練の成果が出せた」と胸を張り、高級ささみジャーキーをもらって喜ぶ“相棒”を優しく見つめた。

■並外れた嗅覚

 飯崎準刑事部長から賞を受けたのは指導士の小焼山功裕巡査部長(34)とクシストス号(雄4歳)、笹森幹人捜査1課長から授与されたのは指導士の辺保享巡査部長(35)とゼスト号(雄4歳)。

 事件発生は6月。富士見市水子のドラッグストアに同18日と29日の夜、同じ女が刃物のような物を示して脅迫し、現金52万2千円と26万4千円をそれぞれ奪って逃走した。東入間署が18日の事実で7月1日に近所の無職の女(27)を逮捕。同20日に6月29日の事実で再逮捕した。捜査過程で威力を発揮したのが、警察犬の並外れた“嗅覚”だ。

 1件目の事件後、ゼストは遺留物がない中、においを頼りに、わずか15分で容疑者宅50メートル手前まで到達。2件目のクシストスは同じ条件で足跡追及開始から35分、ドラッグストアから約350メートルの容疑者が住むアパート前で足を止めた。基本的に広範囲で防犯カメラを収集し、リレー捜査で容疑者を絞っていくため、夜間だと映像の回収が進まなかったり、映像をつなげていく作業にかなりの時間を要することもある中、2頭の活躍は効果的かつスピーディーな事件解決を導いたと言える。

■人犬一体

 県警では2019年4月から直轄警察犬の運用を開始。翌20年4月から3交代制を導入して24時間体制になり、休日や夜間の急な出動が常時可能になった。現在は8頭が所属し、うち2頭が日勤、6頭が2頭ずつ3交代で勤務。県警が民間に依頼している「嘱託警察犬」とともに、事件や行方不明事案の早期解決が期待されている。

 クシストスとゼストはこれまでに強盗事件や傷害事件の解決のほか行方不明になった子どもや高齢者を発見し、命を救ってきた。そして今回、新たな勲章が加わり、クシストスの相棒の小焼山巡査部長は「クッピー(クシストスの愛称)は信頼のおける仲間。現場を想定した訓練の成果が出せてうれしい。30分ちょっとの現場活動で最後まで粘り強く、解決に貢献できた」と“人犬一体”を強調した。

 直轄警察犬を管轄する県警鑑識課の加藤春樹課長は「目に見えない犯人の痕跡である“臭気”からの捜査は優れた嗅覚を持つ警察犬だからこそ可能な捜査と考えている。今後も多様な現場で警察犬と指導士が一体となり、事件解決に努めたい」と力を込めた。

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