レイカーズのフィル・ハンディAコーチがクリニックを実施【Deuceジャパンツアー】

7月、NBA選手も愛用するアパレルブランド"Deuce Brand”による、日本プロモーションを兼ねたジャパンツアーが行われた。レイカーズのフィル・ハンディアシスタントコーチや#2ジャレッド・バンダービルト選手が来日し、計4日間(7月17〜19日/東京、20日/福岡)の指導者向けクリニックを実施。7月21〜23日(福岡)、26〜29日(東京)にはアメリカやカナダでトップランクの学生たちを指導しているBob Willett氏、Nolan Willett氏によるプレーヤー向けスキルトレーニングキャンプが実施された。

特に注目となったのが、ハンディAコーチによる指導者向けクリニックだ。ハンディAコーチは、これまでキャバリアーズ、ラプターズ、レイカーズで3度のNBA優勝を経験し、コービー・ブライアント、カイリー・アービング、カワイ・レナード、レブロン・ジェームズらを指導するなど、トッププレーヤーから厚い信頼を寄せられる育成コーチ。世界最高峰で活躍する彼から少しでも指導のヒントを得ようと、計4日間、熱意ある多くの指導者たちが集まった。

ツアー初日となった7月17日は講義中心。主なテーマとして、ハンディAコーチの指導哲学やコーチとして必要なマインドセットなどが取り上げられた。

「私が今まで学んできたものを、皆さんにシェアできることを楽しみにしています。私もコーチで、参加者の皆さんもコーチだと思いますので、我々は仲間です。私は与えるだけでなく、あなた方からも学びたいと思っていますので、分からないことがあれば遠慮なく質問してください」

そんな言葉で始まった講義では、「私がどうやってNBAのレベルのコーチとして成功できたのかを分解して説明します」と、パワーポイントを駆使して指導のポイントを紹介。コーチングの際には”Why?”を大事にしているというハンディAコーチは「なぜ私がコーチをしているのかといえば、バスケットボールが大好きだからです。そのパワーを神様がくださり、私の天命でありミッションだと思っています。自分の知識を、いろいろな人にシェアすることが自分にとっては重要なことなのです」と語る。

ハンディAコーチいわく「コーチと選手は友達ではない。選手との信頼関係は、コートの上でしか築けない」。固い信頼関係を築くために、どんな選手であってもチーム全員をベストプレーヤーとして扱うこと、小さな仕事というものは存在せずコーチに関わる仕事は全て大きな仕事として全力で取り組むことなどが大事だという。また、“神は細部に宿る“という言葉のとおり、細かなところを飛ばさずこだわりを持って指導することなど、指導の心掛けなどが紹介された。

講義は休憩を挟み、後半はユース世代の育成について。参加した人々は中学、高校カテゴリーのコーチが大半で、質疑応答も交えながら具体的な指導論が語られた。結局、講義は2時間以上にわたり、盛りだくさんの内容となった。

講義の後はそのまま体育館に移動し、バンダービルト選手が普段実際に行っているようなワークアウトを紹介。「コートに1歩入ればスイッチが入ります」というハンディAコーチは、エネルギッシュに声を出して選手を鼓舞し、細かなところまで指導していた。講義の中で「選手から発せられるエネルギーは、コーチが与えたエネルギー以上になることはない」と熱い言葉で語り、選手のやる気を引き出すためにはコーチ自身が与えるエネルギーが大事だと強調していたハンディAコーチ。まさにその姿勢を見学する参加者たちに見せ、1つ1つのメニューを短時間で行いながらも、実際のゲームの激しさを再現するような濃密なワークアウトとなった。

質疑応答の中で「北海道から来ました」と明かす参加者らもおり、全国各地から熱意あるコーチ陣が集った今回のツアー。ハンディAコーチは「毎日違う内容になります」と宣言し、東京での2日目にはチームディフェンス、3日目にはチームオフェンスを扱うなど、指導の土台となる根源的な考え方からより実戦的な練習メニューに至るまで、多岐にわたるテーマを扱う充実のクリニックとなった。世界トップレベルの指導に触れたことで、参加者それぞれが大いに刺激を受け、多くの学びを持ち帰ったに違いない。

取材・文/中村麻衣子(月刊バスケットボール)
写真/山岡邦彦

© 日本文化出版株式会社