コステッキ&SVGの“北米挑戦組”が週末を制覇。王者は2024年の「NASCAR転向」も示唆/RSC第7戦

 世界的な話題を振り撒くオーストラリア最高峰のツーリングカー選手権、RSCレプコ・スーパーカー・チャンピオンシップの第7戦『ボールペールズ・シドニー・スーパーナイト』が7月28~30日にシドニー・モータースポーツパーク開催され、ともにNASCARカップシリーズへのゲスト参戦が決まっているブロディ・コステッキ(エレバス・モータースポーツ/シボレー・カマロZL1)と、王者“SVG”ことシェーン-ヴァン・ギズバーゲン(トリプリエイト・レースエンジニアリング/シボレー・カマロZL1)が勝利を挙げる結果に。

 そのディフェンディングチャンピオンは、来季2024年まで所属先のレッドブル・アンポル・レーシングとの契約が残っているものの、前戦での自身の発言を翻意させ、来季のNASCAR参戦を「積極的に検討している」ことも明かした。

 NASCAR初開催のシカゴ・ストリート戦に出場し、世界に衝撃を与えるデビューウインを飾ったSVGは、8月のインディアナポリスで早くも2戦目のエントリーが決定。そのRSC王者とともに、同地でカップデビューを予定するコステッキがタイトル争いを繰り広げるスーパーカーは、おなじみ“ナイトレース”の週末を迎えた。

 今季が導入初年度となる“Gen3”規定車両だが、前戦でフォード・マスタングには『同等性評価(パリティ・レビュー)』の規約が即時発効し、ブレーキング時のリヤスタビリティ向上を狙って空力性能改善と前後バランスの調整が行われたが、さらにこの週末よりエンジン側にも対策が施され、80mmのビッグスロットル導入も承認された。

 しかし週末のシドニーではやはりシボレー・カマロZL1スーパーカーの壁は高く、第7世代マスタングを駆逐する展開に。直近の数戦で「クラッシュの影響が残り、個体のバランスやセットアップの感度が変わってしまった」97号車を、ワイルドカード枠で使用されてきたスペアシャシーに交換したSVGがプラクティスから最速を連発。

 さらに予選では好調アンドレ・ハイムガートナー(ブラッド・ジョーンズ・レーシング/シボレー・カマロZL1)が移籍2年目にしてチームに初ポールポジションをもたらすなど、まだまだフォード陣営の苦難が続くことを予感させた。

 迎えたGen3時代初のナイトレースでは、スタートで出遅れたポールシッターの背後から、今季好調コカ・コーラ・バイ・エレバスのコステッキがフロントロウ発進から抜け出すと、選手権首位を行くウィル・ブラウン(エレバス・モータースポーツ/シボレー・カマロZL1)とのチームメイト勝負も制することに。

 終盤のセーフティカーにも動じず首位を守ったコステッキが、今季3勝目を手にしてブラウンからポイントリーダーの座を奪還した。

トリビュート”ボンネット”で参戦のチャズ・モスタート(Walkinshaw Andretti United/フォード・マスタング/右上)はレース1で表彰台に。SVG(左下)はシャシー交換、アンドレ・ハイムガートナー(Brad Jones Racing/シボレー・カマロZL1/右下)は移籍2年目にしてチームに初ポールをもたらす
前後を入れ替える肉弾戦の末、ウィル・ブラウン(Erebus Motorsport/シボレー・カマロZL1)をプッシングしたとして、SVGにもペナルティ裁定が降る
キャメロン・ウォーターズ(Tickford Racing/フォード・マスタング)は、アンセーフリリースで勝負権を失い、無線で怒り爆発の抗議も
NASCARカップシリーズへのゲスト参戦が決まっているブロディ・コステッキ(Erebus Motorsport/シボレー・カマロZL1)が、レース1の勝利で選手権首位の座を奪還した

■フル参戦が可能なら「答えはYES」

 一方、ファイナルラップでSVGとの“接触バトル”を演じた元TCRオーストラリア初代王者は、チャンピオンSVGに「5秒加算ペナルティ」の判断が降されたことで、ひさびさのポディウム獲得となったチャズ・モスタート(ウォーキンショー・アンドレッティ・ユナイテッド/フォード・マスタング)に続く3位表彰台を死守した。

 明けた日曜もやはりシボレー陣営が速さを見せ、ここではシャシー交換を経たチャンピオンが完全復活。スーパーポールで最前列を射止めたSVGは、レース2のスタートこそハイムガートナーに先行を許したものの、直後の4周目にはリードを奪還することに。そのまま36周を走破して、第3戦パース以来の今季4勝目を飾ってみせた。

 この勝利でランキング3位に浮上したSVGは、来季の去就について憶測が飛び交うなか、当初は「契約を守るつもりだ」と述べていたRSCでの未来について語るとともに、自分の席を埋める適切な後任ドライバーが確実に見つかるよう「チームを支援したい」との願望も明かした。

「来季のNASCAR移籍が叶うなら、そうするのかって? それがフル参戦なら答えはYESだ。ただし、それが実現するかどうかはまだ分からない」と続けたチャンピオン。

「もし契約が成立したならば、現在のようにスーパーカーのグリッドに継続的に関与し続けることは不可能だろう。裏では明らかにさまざまなことが起こっているが、でも僕はこのチームとの関係を断つつもりはないよ」とSVG。

「僕はこのチームが大好きだし、別のカテゴリーに参戦するときは僕の代わりにこのクルマで良い仕事をしてくれる誰かが、ここにいることを確認してからにしたいと思っているんだ」

「チームに何も持たらさずに、彼らが慌てて誰かを見つけようとするのは望ましくない。幸い、ここには多くの優秀な契約ドライバーがいるし、そうだね……チームと一緒に良い位置で、良い準備をして去りたいと思っている。だからこそ、チームにとって最適な誰かがすぐに現れることを願っている」

 これで自身4度目の戴冠に向けても望みを繋いだチャンピオンだが、続くRSCの第8戦『ザ・ベンド・スーパースプリント』は8月18~20日に開催される。

来季2024年の去就に関して、北米挑戦を匂わせた王者”SVG”ことシェーン-ヴァン・ギズバーゲン(Triple Eight Race Engineering/シボレー・カマロZL1)
レース2のスタート直後には、ウィル・ブラウンが2日連続のアクシデントで高速スピンオフする事態に
好調アンドレ・ハイムガートナー(Brad Jones Racing/シボレー・カマロZL1)がレース2で殊勲の2位表彰台を確保した
Triple Eight Race Engineeringのマネージングディレクターを務めるジェイミー・ウインカップも「この勝利でタイトル戦線に復帰した」と、SVGの奮闘を称賛

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