よゐこ有野、【株主優待】の動向にショック「どうして?」

お笑い芸人・よゐこの有野晋哉さんが、毎月さまざまな専門家をゲストに迎えて、お金の知識を身に付けていく「お金の知りたいを解決!お金の学園〜学級委員・よゐこ有野晋哉〜」。2023年8月は個人投資家でCFPの藤川里絵先生に、株式投資について伺いました。


有野晋哉(以下、有野):なんか最近、株価が上がってる、っていうニュースをよく目にする気がするなぁ。でも、NISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)で投信を買ってはみたけど、下がってるものもあってドキドキしてる。でも長期で見ないとアカンから我慢してるので、もう見ないようにしてる。今のところ銀行に預けるよりはいいけど、どうすれば儲かるんやろ? 株で儲けられるようになるゲームとかないかな。

藤川里絵(以下、藤川):有野さん、株式投資に興味がおありなんですね!

有野:あります、あります! この「お金の学園」でNISAやiDeCoの授業を聞いて、実際に投資信託を買いました。その前から、株に対する興味はあったんですけど、証券口座を開く手続きのところで止めてもうたり、口座を開いたはいいけど何を買ったら良いのかわからず、結局は面倒になっちゃって、ほったらかして……って、まさか今月の先生ですか?

藤川:突然失礼しました(笑) CFPで個人投資家の藤川です。8月のお金の学園では、「株式投資」について、一緒に学んでいきましょう!

有野:計ったようなタイミング(笑) よろしくお願いします!

株価が高い=いい会社とは限らない

藤川:ちなみに有野さん、いま日本で買える株って、日本に何銘柄くらいあるかご存じですか?

有野:お、早速授業スタートですね(笑) 前の投資信託の授業で習いましたね……えーと、確か4,000銘柄くらいです!

藤川:正解です! 上場している企業の数が、だいたい4,000社くらいです。すべての銘柄の中から、買う銘柄を選ぼうとすると、なかなか大変ですね。

有野:確か、なかには値段が高すぎて買いづらい株もあるんですよね?

藤川:株価が何万円台もする銘柄から、2桁や3桁といった銘柄も多いですし、幅広くありますね。基本的に取引は100株単位なので、株価が100円の銘柄なら、最低取引単位は1万円。株価が1万円の銘柄なら100万円です。たとえば、「ユニクロ」や「GU」を展開するファーストリテイリングの株価は3万4,000円くらいですが、これだと1単位買うのに340万円が必要になります。

有野:へ~、そんなに株価高いんや! 買うリスクも高いですね。ユニクロとかGUって、流行ものを低価格で買えるってイメージですけど、凄い儲けてるんですね。でも、株価がそんなに高いなら、これからも上がっていくから有望で買っておいた方がいいよ、ってことですか?

藤川:必ずしも、「株価の水準が高いからいい会社」「株価が安いから悪い会社」というわけではありません。また、株価が100円の銘柄だと「これから大きく上がるかもしれない」と考えちゃうかもしれませんが、それも正しいとは言えません。株価が100円でも、そこから80円とか50円などに下がることもあれば、1万円の会社が2万円、3万円と上がる可能性もあるんです。株価の高い低いって、株価が上がりやすい、下がりやすいとはあまり関係がないんです。

有野:株価の変動に絶対はないもんなぁ。じゃあ、何を基準に判断すればいいんですか? 大きい企業ほど株価が高いから安心とか?

藤川:企業の規模も株価の水準とはほとんど関係ありません。有名なところだと、いまNTTの株価は160円前後。ちょっと特殊な事情はありますけどね。

有野:え、NTTってそんなに安いんですか! 特殊な事情って何ですか、気になる。

藤川:NTTは最近、1株を25株に分割したばかりなので、1株の値段が安くなったんです。分ける前は、4,000円以上ありました。それはいいとして、大事なのは「株価は会社の規模や、良し悪しだけで決まるものではない」ということです。

有野:なるほどなー、じゃあ株価って、何で決まってくるんですか? 島耕作的な社長が「分割しよう!」とか言い出すんですか?

藤川:はやるお気持ちはわかりますが、その前に、まず「そもそも株ってなに?」というところからお話ししましょう。さて、有野さん。そもそも株ってなんですか?

有野:げっ、言葉にするの難しい(笑) でも、習ったことあります。え~っと、会社が株を発行して、それを投資家に買ってもらって、会社がお金を受け取って、そのお金で機械買ったり、従業員増やしたりして、会社を大きくして、その売り上げの何割かを株を買ってくれた方に配当するシステム! で、どうでしょうか?

藤川:だいたい正解です! 会社が証券取引所に上場すると、発行している株式が自由に売買できるようになります。株を買うと、その会社の株券が手元に送られてくるんです。いまはすべての株券がデータ化しているので、実際に手元に届くことはありませんが。

有野:えー、あのiPad miniみたいなサイズの株券が届かないんですか? あれ持っておきたいのに。それで、会社が倒産とかした時に「株券がただの紙切れになってもうた〜」って言いたかったのに。今はデータかぁ。

藤川:そうです。裏側に、その株を持っていた歴代の名前が書いてあって、まさに「有価証券」っていう感じでしたよ。それで、投資家は何を目的に株を買うのかというと、やはり一番多いのは値上がり益ですね。その会社が成長することで株価が上がって、自分で買った値段より高く売れれば利益になります。それが値上がり益。「キャピタルゲイン」とも言います。

会社は誰のもの?

藤川:ほかに、「配当金」を目的に株を持っている人もいます。不動産でいえば、家賃収入みたいなものです。

有野:配当金と値上がり益って、意味が違うんですか?

藤川:たとえば、株価が500円から1,000円に上がったとします。500円で100株買ったのなら、その株を5万円で購入したことになりますよね。その後、株価1,000円の時に売却すれば、100株なので10万円になりました。5万円が10万円になったことになるので、差し引き5万円の儲け。これが「値上がり益」です。

有野:それはネットオークションも一緒ですね。5万円で買ったフィギュアが10万円で売れたのと同じで。

藤川:原理は同じですね(笑) 一方、「配当金」は、企業が毎年、株主に対して配るお金のこと。どれくらいの配当を出すかは、会社によって変わります。先ほどのキャピタルゲインに対して、配当収入は「インカムゲイン」。家賃収入などもインカムゲインですね。

有野:なるほど。売って手に入るお金の値上がり益を狙っている人ばかりやと思ってましたが、持ってたら毎年もらえる配当狙いの人もいるんですね。

藤川:株価の上下を気にせず、年金みたいな感じで、配当金をもらいたい、という投資家も一定数います。

有野:そっちの方が、会社にも自分にもよさそうです。どうせ買うなら、配当金を出している会社のほうがいいじゃないですか。

藤川:おぉ~、鋭い! では、配当金はどこから捻出されると思いますか?

有野:当然、会社の売り上げの中からでは?

藤川:またまた鋭い!

有野:株は素人ですけど、それくらいは何となくわかりますよ(笑)

藤川:ただし、売り上げがあっても利益がないと配当は出せないので、正確には「利益の中から」です。毎年きちんと利益を稼ぎ出していないと、基本的に配当金はずっと出すことはできません。また、「業績が回復したから、今期から配当を出します」という会社もあれば、「業績が悪化したので、今期は配当をしません」という会社もありますね。

有野:それはそうか。格好つけて配当出すために、会社が傾いてもしょうがないですもんね。株主はその会社に頑張って欲しいから投資してるんやもんな。でも、利益が増えたらその分、人を増やそうとか、新しく設備を買おうとか考えそうやから、利益ってそこまで増え続けるものじゃないんじゃないですか?

藤川:3度目の「鋭い」ですね! それは、従業員と株主、あるいは会社の成長など、さまざまな要素を天秤にかけて、経営者が何を重視するかによって変わってきます。ひいては、「会社は誰のもの?」という議論にもつながりますね。「会社は誰のもの論」は、かなり昔から議論されてきたテーマです。

有野:なんとなく、会社って経営者である社長のものやって思ってました。

藤川:仮に、経営者が「会社は従業員のもの」と考えて、利益を賃金アップにばかり回していると、株主からしたら「せっかく会社が成長すると思って応援(=出資)したのに、儲けても配当出さないのかよ」となりますよね。そうすると、配当金狙いの人たちがその株を売ってしまって、株価が下がりかねません。

有野:なるほど! 確かに配当金が欲しくて買った株やったら、そうなりそうですね。

藤川::だからといって、株主への配当ばかり出して従業員の給料を上げないと、それはそれで従業員の不満が溜まって仕事へのモチベーションが下がり、利益が減ってしまうかもしれません。経営者は、利益成長と従業員への給与、株主への配当という3要素のバランスを取りつつ、会社を経営していく必要があるんです。

有野:おっきい会社の社長さんって大変やなぁ。小さい会社なら、そこまで心配せんでもよさそうやのに。

藤川::株式を上場させるということは、会社を成長させて、株主を儲けさせることが求められますからね。

「株主優待」だけで株価が上がる?

藤川::値上がり益や配当のほかに、「株主優待」狙いで株を買う人もいます。クオカードとかお米券とか、株主に対する商品の割引券とか、会社によって本当にさまざまな株主優待があります。

有野:飛行機が安く乗れる、とかもありますよね?

藤川::あります、航空会社の株主優待券は人気ですね。クオカードや自社グループの商品、サービスの利用券や割引券が多いですが、なかには株主優待でしか手に入らないアイテムやグッズを出している会社もあります。2023年2月、円谷プロダクションを傘下に抱える円谷フィールズホールディングスが、会社の合併を記念してウルトラマンをモチーフとした「記念優待」を実施すると発表して話題を集め、株価が急騰したことがありました。

有野:え、そうなんや! それは興味ある、帰ったら調べよう!

藤川:あれ? なんかテンション上がりましたね。

有野:実はフィギュア集めも趣味の1つなんです(笑) それで気になったんですけど、マニア心をくすぐる円谷の記念優待みたいなの出す会社もあるって事は、株主優待だけで株価が上がることもあるんですか?

藤川:株主優待は個人投資家にかなり人気が高くて、優待を新しく始めたり、制度を拡充したりすると、短期的に株価が上がることが少なくありません。反対に、優待の縮小や廃止を発表したりすると、それだけで株価が下がったりすることもあります。

有野:う〜ん、さっき話してた「会社の成長、従業員の給与、株主の配当」って3要素のバランスですね。株主優待には前から興味があって、優待がある株を買おうかなぁなんて考えたこともあります。それも選んでるうちに魅力的な優待が多すぎて、まだ悩み中です。

藤川:実は最近では、優待を止める会社が結構出てきているんです。

有野:え、早くしないとアカンのか。でも、優待目当ての人もいるのに、どうしてですか?

藤川:株主優待って、配当と同じで「株主に稼いだ利益を還元しますね」という目的で行われていますが、日本市場独特の制度なんです。近年は、「株主優待に出すお金があるなら、もっと成長のためにお金を使ったり、配当を増やしたりするべき」という声が上がるようになっているんですよ。

有野:そもそもの目的の「会社の成長」へ戻そうとしてるんですね。でもなんか、遊び心がなくて、株主優待目当ての僕からしたら楽しくないなぁ。

藤川:あと、「議決権の所有」を狙って株を買う人もいますね。これは、個人というより主に法人ですが。

有野:議決権って何ですか?

藤川:議決権は、株主総会で会社が提案することに対して、決議に参加できる権利のことです。発行している株の100%を持っていれば、完全なオーナーになるわけですが、50%保有なら議決権は半分。1%未満、たとえば100株しか持っていなくても、一応議決権を持つことができます。

有野:株って、会社の社長とか会長がたくさん持っているわけじゃないんですね。

藤川:創業して間もない新興企業だと、代表者が過半数の株を持っているケースはよくあります。ただ、会社が歴史を積み重ねていくにしたがって、社長の交代や他社との合併もあるでしょうし、さらにたくさんの株券を発行することもあります。新たに株券を発行すれば、それ以前の株主の議決権は小さくなりますよね。発行している株が1,000株で100株持っていれば10%ですが、新たに9,000株発行して1万株になったら、1%まで比率が下がってしまいますから。

有野:ドラマでよくある、乗っ取られるパターン! 儲けのために株券を発行しすぎて、気がついたら他社に50%以上買い占められて、「社長! どうしますか?」ってよくあるけど、こんなのはドラマの中での話ですかね?

藤川:実はそういうケースがあるんですよ。会社の経営方針などを変えようとして、議決権の半分以上を取るために、その会社の株を買い集めたりとか。有名なところでは、昔、ホリエモンこと堀江貴文さんが、フジテレビの親会社であるニッポン放送の株を買い集めて、世間でも騒がれましたよね。

有野:あ~っ、あれか! そのニュースなら当時、毎週フジテレビで仕事をしてたし、芸人仲間でも話題になったの覚えてます。「どうなんの?」「番組無くなるのか?」って聞いても、「大丈夫です」としか言われてなかった気がする。そらただの雇われ芸人に、会社の深い話なんてしないか。

藤川:最近では「モノ言う株主」といって、会社の経営にモノ申すために株を買い集める人たち、大半は投資会社ですが、彼らが株を買い集めて、経営に口出しをしようとする人たちもいます。

有野:その株を持っている別の投資家にとっては、嫌やろなぁ。「社長のやりたいようにさせたれ」って考えてそう。でも、株主からしたらお金出してるし、「口出し」って難しいですね。

藤川:「口出し」というと悪い印象があるかもしれませんが、モノ言う株主は何もわがままを言っているわけではありません。「現金を持ち過ぎているから、一部を配当に回すべき」とか、「もっと効率のいい経営をしなさい」など、経営陣に対して意見をすることで、会社をもっと成長させ、株価を上げようという狙いがあるんです。株価が上がったら、投資をしている自分たちも儲かりますからね。モノ言う株主の提言によって会社の経営が良くなって、会社が成長して、株価が上がったり、配当金が増えたりする可能性もあります。

有野:なるほど、他の投資家にとってプラスに働く可能性もあるんですね。

藤川:それに、日本はお金を貯め込んでいる会社が多いので、「そんなに貯め込んでも仕方ないんだから、もっと研究開発や設備投資、配当に回すべきでしょ」という指摘が正しい場合もありますよ。一概に正しい、間違いとは言い切れないし、個々のケースによりますね。

有野:なるほどなぁ。僕ももっと鋭い指摘をドンドンして、先生の僕に対する株価を上げたほうがいいですよね。そうしたら、マル秘情報とか教えてくれるかもしれへんし(笑)

藤川:もともと有野さんの株価、低くありませんよ。でも、もっと上がれば出しちゃうかも(笑) ということで、次回はその株価がどうやって決まるのか、勉強しましょうね。

有野:先生、褒めるのも話まとめるのも上手いですね〜(笑)

次回(8月8日配信予定)は「株価はどうやって決まるか」について聞いていきます。

有野晋哉
1972年2月25日生まれ。大阪府出身。テレビやラジオ、CM、雑誌の連載などマルチに活躍。コンビで公式YouTube「よゐこチャンネル」も開設しており、幅広い世代から支持を得ている。自身が50歳を迎えた2022年に、お金にまつわる知識の大切さに目覚め、日々勉強中。

藤川里絵
2010年より株式投資をはじめ、主に四季報を使った投資方法で、5年で自己資金を10倍に増やす。負けない投資がモットー。普通の人が趣味として楽しめる株式投資を、日本中の(とくに数字オンチの)人に広めるため、講演活動、パーソナルトレーニング、オンラインサロンと多岐に活動中。おもな著者に『月収15万円からの株入門 数字音痴のわたしが5年で資産を10倍にした方法』(扶桑社)、『株は5勝7敗で十分儲かる!』(ビジネス社)、『株の達人が教える世界一楽しい会社四季報の読み方』(SBクリエイティブ)

ライター:新井奈央

※本記事に掲載している情報は2023年7月25日時点のものです。
※本記事は投資助言や個別の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資にあたっての最終決定はご自身の判断でお願いします。

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