『Hulu』と『ディズニープラス』は“ルーツをともにした関係” 世界の人気エンターテインメントの楽しみ方

7月12日から、定額制動画配信(SVOD)「Hulu」「ディズニープラス」の両方がお得に楽しめるセットプランが始まっている。SVODサービスは、毎月定額の料金を支払うことで映画やドラマなどをパソコンやスマホなどインターネットに接続した機器で好きなだけ視聴できるサービスだ。世界中でさまざまなサービスがあり、日本でもHuluやディズニープラスのほか、NetflixやAmazonプライム・ビデオなど多くのサービスがある。しかし競合関係にある大手SVODサービス2社が手を組むのは 、業界的にも初めてではないだろうか。今、SVODの世界で何が起こっているのだろうか。

■際立ったコンテンツの違いが要「Huluとディズニープラスは相性がいい」

SVODサービスの利用は今や生活の一部になりつつある。サービス提供各社はしのぎを削り、各々の個性を磨いてきてはいるが、突出するには難しい状況にもある。その中でのHuluとディズニープラスのセットプランは、話題にならないわけがない。

今回のセットプランについて「Hulu」を運営するHJホールディングスの髙谷和男社長は、「機が熟して自然にこのタイミングになった」と語る。「そもそもHuluとディズニープラスはルーツをともにした関係ですから」なのだとか。

少し歴史を振り返ってみよう。「Hulu」は15年ほど前に、ウォルト・ディズニー・カンパニーなどが株主となってアメリカで誕生した。日本では2011年にサービス提供を始め、2014年からは日本テレビの子会社HJホールディングスが運営している。

一方、日本での「ディズニープラス」はウォルト・ディズニー・ジャパンがサービスを運営している。日本テレビホールディングスとウォルト・ディズニー・ジャパンは、映画配給やイベントなど多くの ビジネスで協力し合ってきた長い歴史があり、昨年には、戦略的協業を発表している。

「友好的な関係でもあるので、SVOD分野でも連携できたらというのは、以前から頭の中にあった」と髙谷氏が教えてくれた。

ただし、コラボが実現したのは単に友好的な関係だからという理由だけではないのだとか。「(Huluとディズニープラスは)コンテンツの特徴が際立って異なっていますから相性もいい。同じようなコンテンツラインナップだったら難しかったと思う」と髙谷氏は続けた。

「アナと雪の女王」ディズニープラスで配信中  © 2023 Disney

■世界と日本のエンターテインメントを総なめ?互いの強みを魅力に変える

コンテンツの違いを改めて考えてみた。まずはディズニープラス。ディズニー作品が見放題動画配信で見られる唯一のサービスだ。『アナと雪の女王』など最近の作品から、ミッキーマウスのデビュー作でもある『蒸気船ウィリー』など、ディズニーのクラシック作品まで漏らすことなく視聴できる。

さらに、ピクサー、マーベル、スター・ウォーズ、ナショナル ジオグラフィックといった世界に名だたるコンテンツブランドの作品を見られるのも特徴だ。つまり、『トイ・ストーリー』も『スター・ウォーズ』も『シークレット・インベージョン』も隔たりなく見放題なのだ。

昨年加わった「スター」というブランドでは、『アバター』などの20世紀スタジオ系の映画や、「24 -TWENTY FOUR-」シリーズなどのFOX系列やABC系列の海外ドラマを提供。韓国ドラマやディズニープラスのオリジナル作品と併せて、“ディズニーだけじゃない”消費者のあらゆる気分に合う幅広いラインナップが用意されている。

「ディズニ―プラス」と聞くと、ディズニー作品がメインと思う方もいるかもしれないが、そうではない。世界中の映像ファンを魅了する世界中のエンターテインメントが凝縮されているのがディズニ―プラスの強みなのだ。

Huluオリジナル「君と世界が終わる日に」Season4 Huluで独占配信中  ©HJホールディングス

一方Huluは、映画やドラマが見放題という点ではディズニ―プラスと同じだが、違いはアニメやバラエティといった日本国内のコンテンツが豊富だという点だ。映画やドラマのようなストーリーのあるものだけでなく、テレビのバラエティ番組などストーリー仕立てではなく楽しめる番組も多い点が強みだ。

海外ドラマも充実しており、「CSI:科学捜査班」といった世界的大ヒット人気番組から最新作まで、アメリカのテレビ会社などが製作した作品が豊富にそろっている。

さらに、日本中で話題となった『Nizi Project』などのオーディション番組を多数配信しているのも、ディズニープラスにはない特徴だ。都度課金で舞台や音楽イベントなどのライブ配信を購入したり、作品ごとにレンタルや購入ができるなどユーザーの視聴スタイルに沿った仕組みもある。

「ディズニ―プラスはディズニーがお届けする比類ないコンテンツをはじめ、グローバルに展開しているコンテンツをたくさん持っています。対して僕らはそれとは異なる海外ドラマなどに加えて、日本ローカルの幅広いコンテンツに強い。特徴がきれいにすみ分けられているからこそ、この2社のコラボでユーザーの皆さんに『なんでも楽しんでいただけます』と言えるんです」と髙谷氏は語る。

Huluオリジナル「神の雫/Drops of God」(読み:神のしずく)9月15日(金)からHuluで独占配  ©Hulu Japan

■「言えませんが、いろいろ動いています」地上波では味わえない新しいドラマがHuluで産声を上げている

インタビュー中に髙谷氏は「まだ詳しく言えませんが、いろいろ動いています」と漏らした。ディズニープラスとのコラボ以外のHulu独自の動きのようだ。言える範囲で構わないから教えてほしいと懇願すると、「いくつかオリジナル作品の製作が走っています。とてもインパクトがあると思いますよ。『あれがドラマになるのか』と喜んでもらえると思います」と言う。

ただ、Huluが手掛ける作品すべてにおいて重視しているのは、“動画配信だからこその作品づくり”だということが分かった。「地上波のドラマとは違う視聴体験ができないと意味がないと思っています。企画を決めるのに一番重視しているのは脚本と没入感です。さらにシークエンスや、演出、ギミックでも、地上波だと放送時間の関係で省かれてしまうようなところにしっかりじっくり取り組む必要があります」

その例の一つが、3月に世界同時配信された超大型深海SFサスペンス「THE SWARM/ザ・スウォーム」だ。「ゲーム・オブ・スローンズ」のプロデューサー、フランク・ドルジャー氏が企画し、海外ドラマ初出演の木村拓哉がストーリーの要になる「アイト・ミフネ」を演じて話題になっている。

また、太平洋上の巨大貨物船を装った秘密研究基地が舞台の極限の心理サバイバル・スリラー「THE HEAD」Season2では福士蒼汰がメインキャストの一人として海外ドラマ初出演、全編英語で挑んだ上に日本語吹替版では、自身のセリフを吹き替えるなど注目を集めた。昨年のSeason1では山下智久が出演しており、南極を舞台にどんでん返しありのストーリーが、全6話を通じて最後まで飽きさせない脚本と演出だったと評価されている。

今後直近では9月15日(金)に、日本の大人気漫画をフランスと日本を舞台にドラマ化した、山下智久主演「神の雫/Drops of God」が独占配信される。さらに、中島健人が天才的なAI開発者を演じる海外ドラマ「Concordia(コンコルディア)」(仮)も日本ではHuluで独占配信予定だ。こちらも世界が舞台で、フランク・ドルジャー氏が製作総指揮の作品だ。

7月に動き始めた『Nizi Project Season 2』は、Huluで長期間にわたって完全版を独占配信する予定で、8月には「庭のある家」「ハピネスバトル」といった韓国で放送されたばかりの注目ドラマの独占配信も決定と、幅広い映像を見られること間違いなしだ。

Huluとディズニ―プラスがコラボしたことで実現した「Hulu | Disney+ セットプラン」は月額1,490円(税込)。個別でサービスに登録するより500円ほど安い価格で、世界と日本のエンタメを総なめできることになる。世界のエンターテインメントが、ぐっと身近になってきたのではないだろうか。

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