J2最下位大宮アルディージャは奇跡の残留をつかみ取れるか。反撃の夏、残留の鍵を握るのはあの男か

今季J2最下位に落ち込む大宮アルディージャは、地獄と例えられるほどの苦境を歩んだ。

第27節まで5勝4分18敗で勝ち点19と、21位のツエーゲン金沢とは勝ち点9点差と絶望的な状況だった。

だが大宮は豊富な資金力を使って、この夏に大補強を敢行。その結果J2残留の兆しが僅かながら見えてきた。

大宮は奇跡の残留を掴めるのか。鍵を握る男はJ1を震撼させたあの新戦力だ。

夏の大補強

昨季J2で19位と辛酸を舐めた大宮だが、今季始めはJ1柏レイソルから期限付き移籍でFWアンジェロッティ、J2ジュビロ磐田から完全移籍でDF袴田裕太郎らが加入。J1でのプレー経験がある選手を獲得したが、FW河田篤秀がJ1サガン鳥栖へ移籍するなど主力の流出もあった。

リーグ前半戦では攻守の歯車が嚙み合わず、得点25(22チーム中19位)、失点47(22チーム中21位タイ)と組織の崩壊が見受けられた。断トツの単独最下位—。この危機的状況にチームは今夏に大補強を敢行した。

補強の目玉となったのはJ1名古屋グランパスで2021シーズンにリーグ戦14試合7得点を挙げたFWヤクブ・シュヴィルツォクをポーランド1部ザグウェンビェ・ルビンから完全移籍で獲得。

アカデミー出身でJ2のFC町田ゼルビアMF黒川淳史が期限付き移籍で復帰し、J1京都サンガF.C.のDF飯田貴敬、J2のV・ファーレン長崎DFカイケの両名も期限付き移籍で獲得した。

Jリーグの第2登録期間は今月18日まであるため今後も大宮が補強する可能性もあるが、現時点で戦力として計算できる選手を各ポジションでバランスよく獲得できた。

MF柴山昌也のJ1セレッソ大阪への完全移籍はあったが、残留に向けての戦力整備は順調にこなすことができた。

救世主シュヴィルツォク

この補強の中で違いを見せつけている選手は、シュヴィルツォクで間違いないだろう。

第27節水戸ホーリーホック戦で後半25分から途中出場した元ポーランド代表は前線でキープをしながら、ゴール前で違いを作り出そうとした。

後半37分にはMF泉澤仁の浮き球パスを受けた背番号10は、左足を振りぬいて強烈なシュートを放った。ボールはゴール左のポストに直撃するものの、水戸の守備陣は肝を冷やす格好となった。

そして第28節金沢戦でシュヴィルツォクは先発出場を果たした。チームの攻撃は中々背番号10にいい形でボールがつながらない。

苦しい時間が続く中で大宮が直接FKを獲得し、前半35分に隣にいたMF小島幹敏が足裏で止めたボールに向かってシュヴィルツォクが勢いよく右足を振りぬいた。ボールはゴール右上に突き刺さる形で、待望の先制点を奪った。

このゴールで勢いづいたチームは2分後に追加点を奪取。結果は2-1で競り勝ち、21位金沢との裏天王山を制し、金沢との勝ち点差を6に縮めた。

奇跡の残留へ

ポーランドから来た救世主だが、懸念される点もあった。2021年10月17日のアジアチャンピオンズリーグ準々決勝韓国1部浦項スティーラーズ戦後のドーピング検査で禁止薬物反応が検出されたため、アジアサッカー連盟から2021年12月9日から起算して4年間の活動禁止処分を下された。

後にこの事案はスポーツ仲裁裁判所までもつれ込み、勝訴する形でプレーを再開した。だが復帰直後のポーランド1部22-23シーズンではリーグ戦5試合無得点とブランクの壁に苦しんだ。そのため、大宮での活躍は難しいのではないかと一部の関係者から懸念されていたという。

ただその心配は杞憂(きゆう)だった。2021年開催された欧州選手権に向けたポーランド代表メンバーに選出された実力に陰りはなかった。苦しいチーム状況であるにも関わらず、違いを作り出したシュヴィルツォクなら奇跡を手繰り寄せることができるかもしれない。

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シュヴィルツォクを始め、新加入戦はチームにフィットする時間が必要だ。それでも実績のある選手は多く、個人能力も優れている。背番号10もコンディションが今後上がる余地はあると思われるので、新戦力と既存戦力が上手く融合すれば、奇跡の残留を掴み取れるかもしれない。

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