<社説>全国学力テスト 貧困対策が欠かせない

 全国の小学校6年生と中学校3年生を対象に文部科学省が実施した「全国学力・学習状況調査」(全国学力テスト)の結果が公表された。県内の正答率は中学校で伸び悩みがみられるが、小学校はほぼ全国平均の範囲内にある。分析を通じ学校での指導はもちろん、学びの総合的な支援に役立ててもらいたい。 調査の目的は現況を把握し、課題を含めて評価を行い、学習環境などの改善につなげることだ。順位至上主義に陥ってはならない。

 沖縄の数値は全国平均を下回ったが、小学校の国語と算数、中学校の国語は全国並みの基準となる「上下5ポイント以内」の枠内だった。中学校の数学と英語では約9ポイント下回った。ただ、英語の正答率の低さは全国的な傾向だ。文科省も今回のテストが難しかったとし「英語力が低下したとは判断できない」とみている。

 全国学力テストからは児童・生徒のいる家庭の経済状況と正答率の相関関係も浮かび上がった。文科省は全国の傾向として、家庭の社会経済的背景に関する数値が低い子ほど、各教科の正答率が低い傾向があると分析する。

 沖縄の中学校で就学援助を受ける生徒の在籍割合は「30%以上、50%未満」というのが19.6%、「25%以上、30%未満」は14.7%などで、全国平均よりも大きく上回っている。就学援助を受ける生徒の割合の高さが、学力テストの正答率に影響していないか、調査が必要だ。

 テスト結果から、教師と子どもとの関係も垣間見える。

 「先生はあなたの良いところを認めてくれていると思いますか」と問う設問に対し、「当てはまる」と肯定的に答えた子は全国より高率だった。半面、「困り事や不安がある時に、先生や学校にいる大人にいつでも相談できますか」という設問では「当てはまる」と答えた子の割合は全国より低かった。相談しやすい環境づくりは途上であり、教員不足の状況の中で、現場の余裕のなさを示している可能性がある。

 家庭内での学びや文化芸術に触れる機会も学力向上に欠かせない。しかし、本県の場合、家庭にもその余裕がない。「家にある本の冊数」について、沖縄の中学生の家庭では25冊以下が全国平均より高く、それ以上は下回った。情操教育を含め、家庭が学びの場たり得るかについても経済状況が大きく影響する。

 学力テストの目的の根本には「義務教育の機会均等」がある。子どもの貧困が学力に影響していることは明らかで、解消が先決だ。国は学力の地域間格差、貧困との関連を精査し、貧困対策を含めた重点措置を講じるべきだ。

 県には教育費の拡充を求めたい。昨年の共同通信の県民世論調査で、沖縄の発展のため尽力すべき分野として最も多くが望んだのは「教育」だった。教職員の労働環境の改善も喫緊の課題だ。

© 株式会社琉球新報社