フランスのAMGユーザーがトヨタと接触。「どのメーカーであろうと」2024年のLMGT3参戦目指す

 メルセデスAMGの名門チームであるアコーディスASPは、2024年のWEC世界耐久選手権LMGT3クラスのグリッド確保に向けて複数のメーカーと話し合いを進めている。

 昨年のスパ24時間レースで優勝したこのフランス籍チームは、LMGTEアマに代わって導入される新カテゴリーでレクサスRC F GT3を走らせる可能性についてトヨタと話し合っているが、他の選択肢も視野に入れているという。

 チーム代表のジェローム・ポリカンは、GT3化される選手権に参入することを目指し、「どのメーカーであろうと」WEC参戦のチャンスはものにする、と語っている。

■「問題はタイミング。レクサスRC F GT3は古い」

 アコーディスASPはファナテックGTワールドチャレンジ・ヨーロッパ・パワード・バイ・AWSにおける活躍で知られ、昨年はエンデュランス・カップのタイトルを獲得、現在はエンデュランスとスプリントの両ドライバーズランキングで首位に立っている。

 現在、GTWCヨーロッパで走らせているメルセデスAMG GT3 EvoはWECのLMGT3クラスに参戦する資格はあるものの、需要が高くグリッド枠が限られる中、メルセデスが主催者から承認を得られるかどうかは未知数だ。承認されたマニュファクチャラーには2台のLMGT3エントリー枠が与えられるが、そこではハイパーカー・プログラムを持つメーカーが優先されることになっており、周知のとおりメルセデスはハイパーカーにコミットしていない。

 ASPはWEC参戦という目標達成に向けて選択肢を増やすため、他のメーカーとの提携を検討することになった。

「チームとして来シーズンのWECに乗り損ねたら、その後5年間は乗れないことになる、というのが私の考えだ」とポリカンは語る。

「だからそこに行くために全力を尽くしているが、この選手権(GTWCヨーロッパ)が嫌いなわけではない。GT3で初めてル・マンに行く機会が、そこにはあるのだ」

「GT3では15年前からレースをしている。だから私にとっては(LMGT3というプラットフォームの)始まりにいるのに、そのチャンスを逃してしまうことになりかねない。確かに、それは予算の問題ではある」

メルセデスAMG GT3でGTワールドチャレンジ・ヨーロッパに参戦しているアコーディスASP

 最終的なLMGT3のグリッドが確定するのは数カ月後だが、すでにいくつかのパートナーシップは発表されているか、あるいは強く噂されている。

 ポルシェのエントリーはマンタイが受け持ち、TFスポーツはアストンマーティンからシボレーに乗り換え、長年ポルシェに携わってきたプロトン・コンペティションは新型フォード・マスタングGT3を走らせることをすでに発表済みだ。

 また、アイアン・リンクスはランボルギーニ・ウラカンGT3 EVO2を2台投入し、チームWRTはBMWのオペレーションに向け準備を進めている。

 ランボルギーニ、BMW、ポルシェ、フェラーリ、トヨタ、そしてゼネラルモーターズを通じてキャデラックとつながりのあるシボレーは、ハイパーカーとGT3プロジェクトを同時に持つメーカーである。

 ポリカンは現在の状況について、ASPがFFSAフランスGTでトヨタGRスープラGT4 EVOを走らせるなど、すでにつながりのあるトヨタとの話し合いについてだけ言及した。

「我々は2、3のメーカーと話をしていて、彼らは状況を知っている」とポリカンは語り、フェラーリはそこに含まれていないことを認めた。

「ドライバーやスポンサーといくつかの契約を結ぶことはできるが、何かを始めるには(メーカーからの)真のサポートが必要だ」

「GT4でトヨタを走らせているから、私はトヨタとは話をしている。問題はタイミングだ。レクサス(RC F GT3)は古いクルマだからね」

「(トヨタ/レクサスの)新しいGT3カーならば、それは意味がある。2026年には完成すると思うけどね。だが、彼ら(トヨタ)は興味を持っているんだ。私は別のマニュファクチャラーとも話しているが、そのことについてはコメントしたくない」

2022年1月14日にTOYOTA GAZOO Racingが発表したGR GT3コンセプト

 WECプロジェクトを開始することによって、2011年のブランパン時代から続くアコーディスASPのGTWCヨーロッパのプログラムに影響が出るかどうかについては、ポリカンは分からないと述べる。

 WECに参戦するためにGTWCヨーロッパでのプログラムを終了するかどうかと尋ねると、「私には分からない。そのつもりはないが、ある時点で我々には25人もの従業員がいる」とポリカン。

「我々のジェントルマンドライバーたちのためのプログラムも検討しなければならない。我々は(メルセデスAMGと)GT2をやっている。2〜3週間後には分かることを願っている」

 WECプログラムが実現すれば、アコーディスASPが10年ぶりにル・マン24時間レースに復帰することになる。

 彼らは2014年のル・マン24時間レースに、ソヘイル・アヤリ、そしてアンソニー・ポンズ、ワールドカップ優勝ゴールキーパーのファビアン・バルテスがドライブするフェラーリ458イタリアGT2で出場している。

 またチームボスであるポリカンもル・マンで何度かドライブしており、1997年には総合4位という最高の結果を残している。

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