『大脱走』60周年!スティーヴ・マックィーンはギャングから俳優へ!?『華麗なる賭け』『ゲッタウェイ』ほか一挙放送で偲び振り返る

『華麗なる賭け』©1968 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved.『大脱走』Blu-ray発売中価格:4,800円 (税抜)発売元:株式会社ニューライン販売元:株式会社ハピネット・メディアマーケティング©1963 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. and John Sturges. All Rights Reserved.『ゲッタウェイ』© Warner Brothers Entertainment, Inc.

最高の“アクションスター”は誰?

「最高のアクションスター」と聞かれたら誰を挙げるだろうか?

ブルース・リーとジャッキー・チェンはもちろん、シルヴェスター・スタローンやアーノルド・シュワルツェネッガーは絶対に入る。ジェイソン・ステイサムやジェット・リー、ドニー・イェンも当然入るだろう。チャールズ・ブロンソン、クリント・イーストウッド、ジェームズ・コバーン、ジャン=ポール・ベルモンドのような往年のスターも忘れてはならない……。

という感じで挙げているとキリがないのだが、絶対外せないアクションスターはスティーヴ・マックィーンだろう。

やんちゃ少年から海兵隊での活躍、シナトラ作品で俳優デビュー

マックィーンは1930年3月24日にアメリカ合衆国インディアナ州に生まれた。曲芸飛行士の父と母はマックィーンが6カ月の時に離婚したが、母はアルコール依存症だったため祖父の下で育てられる。母の再婚と共にふたたび義父と母と暮らし始めるが、ドメスティックバイオレンスが繰り返される家庭であったため、マックィーンは9歳の頃から家を出て軽犯罪を繰り返しながらストリートギャングの一員となっていく。

ティーンエイジャーのマックィーンは手が付けられない不良少年となっており、最終的に問題児が集まる矯正学校に入れられることに。この学校で更生したマックィーンは17歳で海兵隊に入隊するも、反抗的・反権力的な態度によって7度も二等兵に降格させられてしまう。しかし再び更生したマックィーンは、演習中に窮地に陥った5人の仲間を救出するなどの活躍を見せ、トルーマン大統領のヨット警備などを務めた後で名誉除隊している。

除隊後に俳優養成学校で演技を学んだマックィーンは、西部劇などで活躍。そこでフランク・シナトラ主演の『戦雲』(1959年)の出演者に抜擢される。シナトラ一家のサミー・デイヴィス・Jr.が降板した後任として、本作でジープの運転士、リンガ伍長を演じたのだった。『戦雲』でマックィーンを気に入ったジョン・スタージェス監督は、翌年の『荒野の七人』(1960年)の準主役にキャスティング。マックィーンは一躍スターダムに躍り出ることになる。

当たり役を得た『大脱走』、幅を広げた『華麗なる賭け』、趣味をブチ込んだ『栄光のル・マン』

スタージェス監督の『大脱走』(1963年)ではアンサンブルキャストの作品ではあるが、トップクレジットの俳優として参加。何十回も脱走を繰り返しては捕えられて独房に入れられる反骨精神の塊のような“独房王”ヒルツ大尉は、マックィーン自身のパーソナリティとも一致する部分が多く、また自ら演じた華麗なバイクスタントは伝説となり、本作はマックィーンの代表作のひとつとなった。

『荒野の七人』と『大脱走』で「粗にして野だが、卑にあらず」を地でいくキャラクターが定着したわけだが、『マンハッタン物語』(1963年)ではコメディ演技で好評を博し、『砲艦サンパブロ』(1966年)ではアカデミー主演男優賞にノミネートされるなど、活躍の場を次々と広げていく。

さらに『華麗なる賭け』(1968年)では、謎めいた大金持ちをセクシーに演じ、アクションだけではないオシャレなピカレスクロマン映画にも主演する“幅”を見せた(とは言いつつグライダーや浜辺のバギーなど、どうしてもアクションをしてしまうマックィーンさん……)。マックィーンはジャンルを問わないトップ俳優として、ハリウッドの頂点に立ったのであった。

さらに「趣味」というにはあまりにも多大なエネルギーを注いでいたカーレースのノウハウを活かした映画『栄光のル・マン』(1971年)は、自らのプロダクションである<ソーラー・プロダクション>が総力を挙げて制作。ドキュメンタリータッチの異色作である本作は、興行的には厳しい結果となったが、批評家からは高く評価された(本作の影響でソーラー・プロは解散)。

ペキンパー監督最大のヒット作『ゲッタウェイ』、そして早すぎる死

この失地回復のため、マックィーンは伝説の監督サム・ペキンパーと組んで『ゲッタウェイ』(1972年)に主演。ウォルター・ヒルが脚本を担当した本作は、銀行強盗で得た金を持ってメキシコを目指す夫婦の逃避行を描く作品。ペキンパーは出来に不満があったようだが、ペキンパー映画最大のヒット作となっている。

さらに『パピヨン』(1973年)、『タワーリング・インフェルノ』(1974年)でも変わらぬハリウッド最高の俳優として存在感を見せつけたが、1979年に癌を患っていることが発覚。メキシコで非標準治療を受けるも、エセ医師ウィリアム・ケリーによって症状はさらに悪化。アメリカでは治療不可となったため再びメキシコに渡り、手術後に死去した。享年50歳。

死去から40年以上経った今もマックィーンの映画は世界のどこかで上映/放映されており、新たなファンを生み出している。武術の師であり友人でもあったブルース・リーのように、最高のアクションスターであるマックィーンは、死後もレガシーとして生き続けているのだ。

そんなマックィーンの代表作『大脱走』『華麗なる賭け』『栄光のル・マン』『ゲッタウェイ』の4本が、CS映画専門チャンネル ムービープラスで2023年8月に特集放映される。マックィーンを偲びながら、その存在感に酔いしれてほしい。

文:高橋ターヤン

『大脱走』『華麗なる賭け』『ゲッタウェイ(1972年)』『栄光のル・マン』はCS映画専門チャンネル ムービープラス「特集:スティーヴ・マックィーン」で2023年8月放送

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